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満喫! ラグビーW杯。でもシロウトながら不満があるぞ

楊順行スポーツライター
クラーク博士と、左にはカブトガニみたいな札幌ドーム(撮影/筆者)
ゴールからは遠かったけど、なかなか見やすい席でした(撮影/筆者)
ゴールからは遠かったけど、なかなか見やすい席でした(撮影/筆者)

 文句なく、おもしろい。オーストラリアとフィジーの一戦は格上のオーストラリアが貫禄を示したが、迫力のある肉弾戦、バックスが抜け出したときの爽快感……目分量では海外からのサポーターが半分近くいて、彼らの熱気も伝染するから、日本戦じゃなくても十分に楽しめた。9月21日、札幌ドームでのラグビー・ワールドカップである。同じ時期、札幌ではバレーボールのワールドカップも開催されていたのだけれど、町中はラグビー一色。バレーの場合はまあ、日本のお手盛りイベントだし、国際的な注目度はかなり違うのだろう。

 取材者として、監督や選手の単発インタビューは何度かあるが、試合に関しては高校ラグビー、いわゆる花園の何試合かと、プライベートでの観戦も10回あるかどうか。ルールでもノックオンくらいはなんとかわかるが、ほとんどシロウトのようなものだ。それでも、要は楕円球をどうやって相手陣内に運び込むかというゲームだから、シンプルといえばシンプルだ。席はゴール裏の高い位置だったが(写真参照)、むしろフィールドを俯瞰できる分見やすかった。

 ただ、である。戦前、「ラグビーファンのビール消費量はサッカーファンのそれとは比較にならない」などと報じられ、確かに十分な備蓄量はあったのだろうが、販売方法についてはどうなのか。スポンサーであるハイネケン限定はわかるとしても、出店が少なすぎるぜ。どの店にも長蛇の列ができ、購入できるまでは優に30分以上かかる。しかも生ビールではなく、缶入りハイネケンをグラスに注ぐだけだ。レギュラー缶1本半で1000円というのも、ぼったくりだよなぁ。そこに屈強なオージーやイギリス人が健気に並ぶのは、ちょっと涙ぐましい。それならスタンドにたくさん売り子を配せばいいのに、売り子密度は「見つけられればラッキー」という程度。しかも売る側としては入れ食い状態のはずなのに、なぜか声も出さずにおとなしく歩くだけなのだ。

なぜビールを買うのに30分以上?

 飲食物持ち込み禁止で、ペットボトルのお茶などは紙コップに移すことも許されずに没収されたから、ビールも同様だろう。つまりビールを飲みたければ、おとなしく並んで30分待つしかない。食べ物についても、30分並んでやっと自分の番になったら売り切れ……。こういう悲劇はほかの会場でも頻発し、クレームが相次いだようだから、ビールについても似たようなものだろう。あまりにクレームが多いため、食べ物は急きょ持ち込みが許されたようだけど、保安上の理由もあるから飲み物は無理でしょう。となるとハイネケンさん、販売方法も考え直さないと、むしろイメージが悪くなりますよ。 

 それと、試合終了時の退出はなんとかならんのか。手荷物検査のある入場時にはゲートがたくさんあったけど、札幌ドームの退出動線は1カ所きりのようで、満員電車なみの混雑がいっこうに動かない。球場の敷地から出るまでに、30分以上はかかったね。以下は、私と家人との会話。

「プロ野球の開催時も、こんなに時間がかかるのかね? だとするとファンはうんざりして、あまり来る気がしないと思うけど」

「○○君(友人。東京五輪が開催される施設の日常の運営担当者)がいってたじゃん。"オリンピック開催時の仕切りには一切タッチしない。向こうがそういうなら、じゃあどうぞというしかないよ"。札幌ドームでも、ふだんの施設運営側はワールドカップにノータッチなんじゃない?」

「だからふだんのノウハウは一切生かされないということか。それにしても……」

 たとえば、東京ドームでコンサートを見たあと。かりに野球開催時とは仕切りが違っていたとしても、退出にそんなに時間がかかることはないはずだ。なんとも腑に落ちないよなあ。結局、翌日のイングランドとトンガ戦は、混雑を避けるために後半の途中にドームを出ました。ほかの会場に行かれた皆さん、どうでした?

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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