ファッションショーは必要か? ~新型コロナによる無観客ショーが意味するもの~

2015年の東京ガールズコレクションは3万人の女子が集う祭典だった。(写真:Michael Steinebach/アフロ)

無観客の東京ガールズコレクション

 新型コロナウイルスの影響で、残念ながら29日の東京ガールズコレクション(以下TGC)も無観客で開催された。先だってミラノで行われたプラダやアルマーニのショーも無観客であったから、致し方ないだろう。だが、一時の勢いは衰えたとはいえ、東京ガールズコレクションは通常なら3万人もの来場者を誇る人気イベントである。

 パリやミラノのコレクションはバイヤーやジャーナリスト、セレブリティといったファッションのプロのために開かれるが、TGCはそうではない。一般の女子が3万人集うファッションの祭典だ。

 2005年に始まり今回で30回目を迎えたTGCでは、人気モデルだけでなく旬の女優やタレントがランウェイを歩く。「○○ちゃんみたいになりたい」「あの服が欲しい」それはまさに女子のありとあらゆる欲望をダイレクトに喚起する動くファッション誌であり、購買意欲を着実にそそるためのビッグイベントである。そのために欲しいと思った服をその場で買えるような仕掛けがなされてきた。

 今回もLINEによるライブ中継で動画が配信されたので、結果的には女子たちに届いたのであろうが、一堂に会することで生み出される高揚感と衝動買いはかなり抑えられたのではないだろうか。

変わるファッションショーのあり方

 ここ数年、「コレクション」そのもののあり方が変わってきている。ファッション業界では持続可能を意味するサステナビリティがますます加速化し、とりわけ海外のハイブランドのコレクションは、率先してさまざまな試みを行っている。2020年春夏ミラノコレクションでは、グッチが、ショー開催によるCO2排出量を相殺するために、2000本の植樹を行った。巨額のエコ投資を行うグッチの試みは「サスティナショー」と呼ばれたが、今後は他のブランドにも波及し、当たり前のことになるかもしれない。

 もちろんパリも負けてはいない。2020年春夏パリコレクションでは、環境に対する取り組みや本質を問うアプローチが多く見られた。

 中でもディオールは、環境デザインを行うアーティスト集団、アトリエ コロコに舞台装飾を託した。パリのロンシャン競馬場に設置された特別な庭園に集められたのは、原産地の異なる根巻された状態の木々で、枝には札がかけられていた。表面には「#PlantingForTheFuture」のハッシュタグがあり、裏面には木の情報と、この後に植えられる地の情報が記されていた。コレクション終了後、全ての木々が、3つの長期プロジェクトによって各地に植樹される予定だという。

 一時のコレクションのために植物を犠牲にするのではなく、サステナブルに生かし続けること。美しい自然とその未来を守るというメッセージは、今までの会場装飾やファッションショーというイベントのあり方を考えさせるものだった。

ファッションショーは必要なのか?

 このようにファッションを取り巻くあらゆるものがサステナブルになっていく時代において、私たちは今こそ、ディオールのコレクションテーマのように ー“Think we must. We must think."ー 私たちがすべきことを考えなければならないだろう。ただ夢を売っていればよかった時代のファッションとは異なることを真剣に考えなければならないだろう。

 新たなファッションを生み出していくことそれ自体が環境破壊に直結するなかで、ファッションの作り手は、まるで免罪符であるかのようにさまざまな「正しい」取り組みを行っている。受け手である消費者もまた、その「正しさ」に共感し、商品を購入しようとする。

 ちなみに、今回のTGCのテーマはSDGsであった。TGCもまたサステナブルであるために、地方創生や「すべての女性に、輝く舞台を」といったジェンダー平等を掲げているのだ。ただのキラキラ女子の祭典で終わらせないために。

 とはいうものの、もしかしたら、ファッションショーを開催しないことが、いちばんのSDGsなのかもしれない。それはハイブランドにも言えることだ。大勢の観客を集め、シーズンごとに必ず新作を発表するというファッションシステムが今、問われているのかもしれない。無観客ショーはファッションショーというイベントの存在意義を改めて私たちに突きつけたのではないだろうか。