世論調査から読み解く、菅政権の支持構造と総選挙での「勝算」

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

先週発足した菅義偉政権の支持率が、報道各社から相次いで発表された。いずれも、第一次安倍内閣の初期を超え、小泉政権以来の高い水準でのスタートとなっている。

菅氏の自民党総裁としての任期も、衆議院議員の残り任期も残り約1年だ。そんなタイミングで始まった新政権であり、且つ支持率も極めて高いという状況下では、どうしても早期の衆議院解散・総選挙の憶測が強まってくる。

そこで、今回は報道各社と我々JX通信社の独自調査のデータをもとに、菅政権の支持構造を整理してみたい。

安倍政権の支持基盤+期待の反映で高水準に

JX通信社では、菅政権が発足した直後の9月17日と18日の2日間、緊急の全国調査を実施した。調査の詳細や手法は末尾に記載した通りだ。

その結果、菅政権を「強く支持する」「どちらかといえば支持する」と答えた人は計56.7%に達した一方、「どちらかといえば支持しない」「全く支持しない」とした人は16.1%にとどまった。「どちらとも言えない」は27.1%だった。方式がやや異なるため単純比較はできないが、JX通信社が選挙ドットコムと合同で行った9月12日・13日の調査では、最終局面における安倍政権の支持率が40.0%だったため、菅政権は安倍政権よりも大きく支持を伸ばしてスタートしたことが分かる。

9月第3週に行われた報道各社の調査における菅政権の支持・不支持率
9月第3週に行われた報道各社の調査における菅政権の支持・不支持率

他の報道各社の調査でも、6割から7割台と高い支持率を示す調査が多い。日本経済新聞や読売新聞の調査では、支持や不支持を明確に回答しなかった有権者に対して「お気持ちに近いのはどちらですか」などと重ねて聞く、いわゆる「重ね聞き」の調査手法が採用されており、結果、支持率がより高く出ている。

こうした支持の具体的な内訳などの数字は、朝日新聞を除き、一般には記事等で断片的にしか公表されていない。そこで、JX通信社の調査結果と各社調査の内訳に関わる情報を比較して分析していくと、興味深い共通点が見られた。

まず年齢層別で見てみると、全年代で菅政権を支持する人の割合が不支持のそれを上回っている。とりわけ、50代以下の世代ではその差が大きい。同様の傾向は、朝日新聞の世論調査の内訳からも見てとることができる。相対的に若年層からの期待が大きいことが窺える。

年齢層別の菅義偉政権の支持動向(9月17・18日実施のJX通信社調査より)
年齢層別の菅義偉政権の支持動向(9月17・18日実施のJX通信社調査より)

性別での支持動向を見ると、男女で支持・不支持の割合に大きな差はない。但し、男性の方が「強く支持する」人が多い。JX通信社の調査では、菅政権を「強く支持する」人の割合は男性で3割近くに上っているのに対して、女性では2割弱に留まっている。

男女別の菅義偉政権の支持動向(9月17・18日実施のJX通信社調査より)
男女別の菅義偉政権の支持動向(9月17・18日実施のJX通信社調査より)

こうした点は、いずれも安倍政権の支持層の内訳とよく似ている。菅首相は、安倍前首相の路線継承を掲げて政権に就いたが、世論にもこのことは浸透していると言えそうだ。つまり、菅政権の高支持率でのスタートは、安倍政権の支持基盤を基礎としながら、今後への期待を上積みした結果と考えられる。

無党派層からの支持も高く、自民党に有利に

各政党の支持層別に見てみると、自民・公明の与党支持層以外では、日本維新の会支持層からの支持の高さが目立つ。

JX通信社の調査では、日本維新の会支持層の約半数が菅政権を支持すると回答した。朝日新聞の世論調査では更に多く、約7割が支持しているという。立憲民主党をはじめとした他の野党支持層では、いずれも菅政権を支持しないと答えた人が支持するとした人を上回っており、特異である。日本維新の会は、野党でありながら安倍政権との距離が近いと見られていたが、近年は同党支持層でも安倍政権を支持しない割合の方が高くなっていた。

同様に、菅政権は、支持する政党はないとするいわゆる無党派層からの支持も大きく上積みしている。

安倍政権下では、自民党の支持層の増加とともに、無党派層からの支持の割合が減った。各社の世論調査でも、無党派層では恒常的に安倍政権を支持しない人の割合が支持する人の割合を上回っていた。このことは実際の選挙でも確認できる。後に安倍政権が「最も危なかった」瞬間と振り返られる、2017年の衆議院議員総選挙においては、無党派層の最大の投票先は立憲民主党だったことが各社出口調査で明らかになっている。現状、菅政権はそうした無党派層からも好意的に見られている。

支持政党別の菅義偉政権の支持動向(9月17・18日実施のJX通信社調査より)
支持政党別の菅義偉政権の支持動向(9月17・18日実施のJX通信社調査より)

こうして様々な層からの期待を積み上げていった結果か、各社世論調査の比例代表での投票先を問う質問でも、自民党と回答した人が4割台後半に達するなど、与党のモメンタムは極めて強くなっている。JX通信社の調査でも、比例代表の投票先として自民党を挙げた人が43.0%に達し、立憲民主党(13.9%)、日本維新の会(7.5%)などを大きく上回っている。無党派層でも「分からない」とした人を除くと自民党に投票するとした人が半数近くに達した。

仮に、この「期待」が冷める前に総選挙が行われれば、各党の得票のベースは自民党が圧勝した2019年参院選以上に与党に有利、野党に不利となってきそうだ。

自民党の下村博文政調会長は21日に出演したテレビ番組で、即時の解散総選挙は「自民党の国会議員のほぼ総意」だと言い切った。その「総意」の背景に、この有利な世論があるわけだ。一方で、菅首相は「仕事をしたい」「コロナの収束までは(選挙は)難しいのではないか」などと早期解散を打ち消すようなニュアンスの発言に終始している。政治スケジュールからも、当初憶測の広がった10月25日投開票の可能性はかなり低くなった。

当然のことながら、政権最初期の高い支持率は、政権の長期安定を保証するものではない。幅広い「期待」を反映した支持率は、政策をめぐる論争や不祥事などを経て必ず下がっていく。2009年、空前の高支持率でスタートした民主党・鳩山由紀夫政権も支持率はジェットコースターのように下がり、わずか9ヶ月で退陣した。菅政権がしっかり腰を据えて「仕事をする」ためにはむしろ、すぐにでも解散をして政権の基盤固めをした方が有利だ、と筆者に話す与党議員もいる。

早期解散は、本当に無いのだろうか?

JX通信社調査の概要:9月17日(木曜日)と18日(金曜日)の2日間、無作為に発生させた電話番号に架電するRDD方式で、全国の18歳以上の有権者を対象に調査した。有効回答は1047件だった。