小池知事の「希望の党」東京都内では第2党の勢い=JX通信社 衆院選第1回情勢調査

27日に行われた「希望の党」の設立会見。早くも民進党との合流が取りざたされている(写真:つのだよしお/アフロ)

今月25日、唐突に発表された小池百合子東京都知事の「希望の党」立ち上げと代表就任。それ以前に、事実上の「小池新党」として、若狭勝・細野豪志両衆議院議員による新党立ち上げが準備されてきたが、小池知事はこの動きを「リセット」するとして自ら前面に立つ姿勢を示した。

政権が信任投票化を目論んだはずの選挙が、俄に「安倍vs.小池」の構図に急転しつつあるなか、小池新党たる「希望の党」はどの程度の集票力を持ち、また、選挙結果にどう影響してくるのか。

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筆者が代表を務めるJX通信社では、昨年の東京都知事選や今年の東京都議選を通じて、都内の有権者を対象に十数回に渡る情勢調査を実施し、情勢分析や選挙結果の予測を発信してきた。そして、今回も、総選挙にあたり東京都内での「希望の党」のポテンシャルを探るべく、先週末の23日・24日の土日に第1回の東京都内情勢調査を実施した。

小池知事「リセット会見」前の時点で第2党の勢い

希望の党は調査時点では党名未定のため「小池知事が立ち上げる新党」として質問した
希望の党は調査時点では党名未定のため「小池知事が立ち上げる新党」として質問した

先週末の時点で、東京都内では「小池知事が立ち上げる新党」(つまり希望の党)が投票意向先2位に浮上している。続く3位は共産党で、民進党はそれを下回る4位に甘んじている。

7月に行われた東京都議選では、小池知事が率いる都民ファーストの会が自民党と争い、最終的には自民党支持層を切り崩したうえで大勝に至った。そして、政権不支持層と小池知事不支持層の受け皿として共産党が支持を伸ばしている。これらの傾向は、都議選の構図をそのまま引き継いでいるとも言える状態だ。

なお、本調査は小池知事が主体的に新党を率いることを表明する直前の先週末(23・24日)に実施したものであり、きょう現在の「希望の党」のモメンタムを十分反映していない可能性がある。つまり、小池知事が自ら立ち上げ、代表に就任することを明らかにしたことで、「希望の党」が更に投票意向を上積みすることもあり得ると見るべきだ。では、小池氏が先頭に立った「希望の党」は、どの程度伸びるのか。

小池知事と安倍政権の都内での支持動向(9月23日・24日調査)
小池知事と安倍政権の都内での支持動向(9月23日・24日調査)

小池知事の先週末の支持率は58%で、不支持35%を大きく上回っている。また、上のグラフには含んでいないものの女性からの支持が強く、両性合わせて支持・不支持が拮抗する安倍政権と対照的だ。「強い不支持層」が安倍政権と比べてかなり少ないことも、非自民・反政権票の受け皿になり得る可能性を示している。

加えて、この支持動向を党派別に見てみると、先週末時点で自民党に投票する意向を示している有権者の約4割、民進党に投票意向を持つ有権者の約半数、更には公明党に投票意向を示す有権者の約7割が小池知事を支持している。昨年8月の都知事選、今年7月の都議選の結果からすれば、これら既成政党支持層に含まれる小池知事支持層のうちの一定程度は、選挙までに「希望の党」支持へとシフトする可能性が高い

しかし、だからと言って「希望の党」が与党に迫るほど多数の議席を獲得するとは即断出来ない状況もある。衆院選は「小選挙区比例代表並立制」だからだ。つまり、同党が全国の小選挙区でどの程度候補者を立てきれるか、また「非自民」の各党との競合を回避できるかによって、獲得できる議席数が大きく変わり得るのだ。この状況変化が、現段階での議席数の予測をかなり難しくしている。

衆議院の定数は今回の総選挙から465となる。そのうち289が小選挙区、176が比例代表だ。「希望の党」は先週段階で、東京・埼玉・神奈川では全選挙区の擁立を目指すとの報道があるほか、静岡など他地域でも全国政党として擁立を進めているとされる。だが、現状での支持基盤はあくまで東京だろう。その東京では小選挙区が25、比例ブロック定数が17だ。今回とはやや区割りが異なるものの、2014年総選挙で勝利した自民党はこの東京で小選挙区22、比例6の計28議席を確保している。これくらいが東京で第1党を占める政党が小選挙区+比例で確保できるおおよその上限と見ていい。

一部では、民進党の前原誠司代表が同党の解党や分党も視野に希望の党との合流を検討していると報道されている。仮にこうした事態に至った場合、民進党の資金や支持基盤、活動組織の一部を希望の党が引き継ぐこともあり得る。この場合、純粋な新党としての「希望の党」単独では到底手に負えない全国規模での擁立も実現可能性が出てくる。こうした世論の動向以外の点でも変数が大きいのが今回の総選挙のポイントだ。

争点は「外交や安全保障」から「安倍か小池か」に?

先の週末に実施した都内情勢調査では、有権者に「投票にあたって最も重視する政策・争点」も聞いた。この結果、最も多くの有権者が「外交や安全保障」を挙げている。これも、これまでの選挙とやや異なる点だ。

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通常の選挙では、経済や社会保障に関連するトピックが有権者が挙げる争点の首位になることが殆どだ。とりわけ国政選挙ではその傾向が強い。しかし、今回は目下の北朝鮮情勢の緊迫化を反映してか「外交や安全保障」に関心を寄せている有権者が多い。安倍首相が解散の大義名分として示した消費増税分の使途の見直しについては、それを正式に表明した記者会見(25日)より前の時点ということもあってか、有権者の意識には殆ど反映されていないようだ。

そもそも、安倍首相が掲げた「消費増税分を教育や子育てに厚めに配分して重税感を和らげる」というアイデアは、従来、旧民主党時代から前原氏が主張してきた政策であり、安倍政権が「対前原民進党」の文脈で仕掛けた戦術的な側面は否めない。しかし、小池知事の急な動きで、安倍政権の思惑通りに争点設定ができるかはわからない情勢になってきた

「希望の党」の立ち上げ表明以降、テレビ各局の情報・報道番組では小池知事の動向が長時間扱われている。安倍政権が解散総選挙の大義を世論に浸透させる前に、小池知事が事実上「安倍か小池か」という新たな争点を提示した格好だ。

引き続き、データを通じて選挙情勢の変化に注目していきたい。