<都知事選>権能上はNG。でも… 小池百合子氏「都議会解散」3つの道

(写真:アフロ)

政治とカネの問題で辞職した舛添要一前東京都知事。その後任を決める東京都知事選挙に、小池百合子氏が「都議会の解散」「利権追及チームの設置」などの公約を掲げて正式に立候補を表明した。もし当選したとしても、不信任決議無くば実現しないと言われる「解散」。小池氏はどのような筋書きを描いているのか。

不信任決議だけじゃない。議会解散の「3つの道」

小池百合子氏がまず掲げた公約は「都議会の解散」「利権追及チームの設置」「舛添問題調査の第三者委員会立ち上げ」の3点だ。この他にも五輪に向けたまちづくりや防災などの一般的な政策についても詳しく説明していたが、やはり政治的なインパクトでは最初に挙げられた「都議会の解散」に優るものはない。

だが、実のところ、都議会の解散は知事がそう決めればすぐにできるというものではない。首相がいつでも衆議院を解散できるのとは異なり、知事は議会をいつでも自由に解散できるわけではないのだ。

地方自治体とその運営方法等について定めた国の法律「地方自治法」とその関連法において、地方議会解散に至る道は以下の3つ、定められている。

1. 議会による不信任決議の可決

2. リコール(住民による請求)

3. 自主解散(関連特例法により議会自らが解散を決議)

このうち、最もハードルが高いと思われるのは「リコール」だ。地方自治法では、リコールについて必要な署名数を以下のように定めている。

第七十六条

選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一(その総数が四十万を超え八十万以下の場合にあつてはその四十万を超える数に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数、その総数が八十万を超える場合にあつてはその八十万を超える数に八分の一を乗じて得た数と四十万に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる。

出典:地方自治法

やや複雑に規定されているが、つまりは東京都には3月現在約1100万人の有権者がいるため、この条文に基づき計算すれば約160万人の署名が必要となる。しかも、署名は「有効」なものでなければならず、これだけの数になると重複や判読不能、あるいは不正といったことも疑われるため、厳正に審査された結果無効とされる署名数が相当出ることになる。実際にリコールを通じて議会解散を実現するには、提出段階で最低200万人分ほどの署名を集めることが必要になりそうだ。

ただ、近年では、2011年に名古屋市で市議会解散を求めるリコールが成立したこともあり、大都市には全く不可能であるとの見方は覆されている。また、200万という規模も、今回の都知事選に当選するのに必要な票数と同等だ。

そして、より現実的な議会解散の道は、自主解散だ。

解散無くとも10ヶ月後には都議選

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上記で挙げた議会解散の「3つの道」のうち、不信任決議の可決については、議会自らが能動的に不信任決議を突きつけることが必要だ。もし小池氏が当選した場合、新たに民意を受けて当選した知事に対して、議員が自らの首をかけて不信任決議を突きつけることとなる。且つ、可決即解散と分かりきっている状態であるために、議会自らは応じないスタンスとなるのが自然だ。

だが、ここで「政治スケジュール」が問題になってくる。

実は、今の都議会は来年(2017年)に任期満了となり、改選となる。つまり、どんなに遅くとも来年の6月には必ず都議選が実施されることとなる。

あくまで仮定の話だが、もし小池氏が当選した場合、都議会解散も含めた公約が「民意」によって支持されたことになる。残り任期はもともと1年もない状況で、民意に反する状態のままのらりくらりとかわしつづけると、そのまま任期を全うできても落選のリスクが議員自身にのしかかることになる。

都議会は今後、9月、11月、2月にそれぞれ定例会が開かれる。もし小池氏が当選した場合、彼女の持ち前の「発信力」を活かせる場はかなり多い。特に年明け2月の都議会定例会は新知事による初めての予算案が審議される重要な場であり、知事と議会が折り合わなければ情勢が緊迫する可能性もある。結果として、議会は小池氏が当選した場合、当分の間は「自主解散」のプレッシャーを相当程度受けることになるだろう。そして、解散が無くとも新知事の実質的な任期が始まる8月からわずか10ヶ月で、都議選という場がやってくる。

実は過去に一度、東京都議会は自主解散したことがある。それも、奇しくも五輪に絡んだタイミングでだ。

詳細は舛添要一前知事を厳しく追及した'''音喜多駿都議'''(北区選出)のブログでも解説されているが、前回の東京五輪の翌年1965年、汚職で政治不信が高まる環境の中で都議会の自主解散が実現している。

小池氏は、6日の正式な出馬会見の中で、猪瀬・舛添と2代続けて1期を全うできずに辞職した前任者について「誰かにとって都合が悪くなると知事が代えられた」と指摘している。会見では、その「誰か」の名指しこそ避けたものの、質問する側のスポーツ紙記者は東京五輪組織委会長を務める森喜朗元首相の名前を挙げたほか、猪瀬直樹元知事も自民党都連を「牛耳っている」として内田茂・自民党東京都連幹事長(千代田区選出の現職都議)を名指ししている。

更には、舛添氏の辞任後、その氏を追及する側だったはずの都議会議員27人があまりにも過大な予算でリオデジャネイロオリンピックの「視察旅行」を計画したことも問題視された。

小池氏は2005年、いわゆる「郵政解散」の折に、急な解散にも関わらず東京10区(豊島区と練馬区の一部)を自ら選び「刺客」となった経緯がある。後に氏は「過去の選挙結果から小林興起氏(当時の自民党現職)の地盤が弱いと判断した」と語っている。小池氏は6日の記者会見でも不信任決議には言及していたが、こうした都議会解散に関わる権能やプロセスも予め熟知しているものと考えるのが自然だ。小池氏は自民党都連や都議会との対立構図を明確にし、都民の政治不信を追い風に勝負に勝てるかどうかという点だけでなく、当選後の政治スケジュールをも見据えて賭けに出たとも考えられる

正式な立候補表明に至っていない増田寛也元総務相や民進党の長島昭久衆議院議員など他候補の動きも合わせて、都知事選は俄然注目度を増している。