【独自】茨城県大洗でインドネシア人クラスター 新型コロナ 感染拡大防止が急務

大洗町周辺に広がる農業地域。農業に従事するインドネシア人も多い=米元文秋写す

 茨城県大洗町のインドネシア人の間で、クラスターとみられる新型コロナウイルスの集団感染が初めて発生したことが分かった。人口の約5%がインドネシア人をはじめとする外国人で、水産物加工などの地場産業を担っている大洗町。日本人と同様に、検査や治療、ワクチン接種へのアクセスを確保し、感染拡大を防ぐことが差し迫った課題だ。

 茨城県は11日、大洗町居住者10人の感染を発表、このうち「職業・パート」の20~40歳代の男女5人は隣接するひたちなか市の同じ事業所で働いており、クラスターの可能性があると説明した。県は感染者の国籍を公表していないが、大洗町のNPO法人「茨城インドネシア協会」の坂本裕保代表は、複数の関係者への聴き取りに基づき、この5人を含む計8人がインドネシア人とみている。

 大洗町への日系インドネシア人らの受け入れに長年取り組んできた坂本代表によると、5人は日系人として正規の在留資格を持って、ひたちなか市の食品加工工場で就労している。そのほか、「20~30歳代男性」と発表されている感染者3人もインドネシア人で、事業所の5人と接点があるという。

 県は、この3人について「職業・調査中」と発表しているが、坂本代表は「(日本出国の期限を過ぎている)オーバーステイの労働者だ」との情報があると語った。

 また、大洗町の国井豊町長は自身の11日付の個人ブログに、県の発表した10人について「内訳を見てみます。クラスターの可能性が指摘されている、ひたちなか市の工場に勤務するインドネシア人実習生8名、茨城町の福祉施設利用者1名とそのご家族1名の合計です」と記した。8人の在留資格について、坂本代表と認識が異なるが、「インドネシア人感染者が8人いて、同一工場の関連」との情報は同じだ。

 ブログは14日午後までに一部の内容が更新され、「インドネシア人実習生8名」は「外国人実習生8名」と差し替えられた。

 大洗町の公式ホームページも、10人について「いずれも,クラスター(集団感染)の可能性が指摘されている「ひたちなか市の事業所」と,「茨城町の高齢者施設」に関連したもので,すべての感染源は特定されており」と明言。高齢者施設関連の2人を除く8人が「クラスターの可能性が指摘されている『ひたちなか市の事業所』に関連したもの」と認める説明をしていた。

大洗町ホームページの当初の記述。8人が「ひたちなか市の事業所」関連と受け取れる
大洗町ホームページの当初の記述。8人が「ひたちなか市の事業所」関連と受け取れる

 この説明と茨城県の発表内容の整合性について、筆者が県感染症対策課に問い合わせたところ、同課担当者は折り返しの電話で「11日に発表した感染者のうち、ひたちなか市の同一事業所のクラスターとみられるのは5人だけだ」と強調。「大洗町にホームページの記述の差し替えを要請した」と述べた。15日未明までに、実際に差し替えられ、8人が同一事業所関連と受け取れる記述は消された。

 「それでは、ほかの3人の職業や、事業所の5人との関係はどのようなものか」と問うと、同担当者は、14日午後時点でも依然「調査中」とした。

広がる影響、偏見への懸念

 茨城県が14日までに公表した県内の新型コロナ感染者は、累計で8884人に上り、うち大洗町居住者は91人だ。

 大洗町によると、感染拡大やクラスター発生の動きを受け、町内の保育所1カ所が一時全面閉鎖されている。小学校では二つのクラスが学級閉鎖となり、生徒らの大掛かりな検査が進められている。週明け17日にも感染状況を見極め、閉鎖延長の是非を判断する方針だ。

 坂本代表は「10日から情報があった。私はインドネシア人のアパート3、4カ所を回って、3人の陽性判定が出たことをまず把握した。多ければ7人と話していたが、8人という発表があって驚いた」と明かす。町内では操業を一時停止し、従業員へのPCR検査を行った食品加工工場があり、新たな陽性者が出たとの情報が飛び交うなど、影響が広がっているという。「感染が沈静化してくれればいいのだが。工場の休業が長引けば大変なことになる」

 坂本代表が同時に懸念しているのが、クラスター発生をきっかけに、インドネシア人に対する、否定的な風評や偏見が広がることだ。「『インドネシア人は駄目だ』みたいなね。それを心配している」と話す。

 近年は、アニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」の舞台としても注目され、週末などには多くのファンが訪れる大洗町。観光への影響も気にしてか、前出ブログで国井町長は「あくまで確率の問題ですが、今日発表の感染者の観光客からの感染は、ほぼ皆無であると見て取れるのではないでしょうか。また、4月末ぐらいから激増傾向にある感染者数と観光客との相関についても、専門家からは同じような指摘があります」と述べ、一般の観光には問題がないとの見方を示している。

鹿島臨海鉄道大洗駅に停車するガルパン列車=米元文秋写す
鹿島臨海鉄道大洗駅に停車するガルパン列車=米元文秋写す

地場産業担うインドネシア人

 大洗町は、約1万6000人の住民の5%に当たる約800人が外国人だ。そのうち約400人がインドネシア人で、同国スラウェシ島北部のマナドなど出身のキリスト教徒の日系人や技能実習生が多い。港町としての地場産業である水産物加工や、周辺地域の農産物加工などの作業を担っている。

 家族で定住している日系人も多く、八つのインドネシア人教会を中心にコミュニティーを形成している。第二の古里となった大洗のことを、出身地マナドを合わせて「カンプン・マナド・オオアライ(大洗マナド村)」と呼ぶ人もいる。

 正規在留者のほかに、オーバーステイのインドネシア人も暮らし、周辺のサツマイモ畑や建物解体現場などで働いている。教会関係者によると、そうしたオーバーステイ労働者は約200人に上るという。

 インドネシア人コミュニティーでは、「新型コロナの感染拡大を防ぐため、オーバーステイの同胞にもワクチンを接種してもらえないか」との声が上がり、要請書の文案づくりが進められた。しかし、高齢の日本人や日系人への接種の見通しすら不透明な現状の中、行政との協議などは見合わせていた。

 そこにクラスターが発生した。

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