日本代表より先にカンボジア代表と試合をした日本人がいた

5月17日、カンボジア代表と対戦したカンボジアリーグ日本人選抜チーム

ワールドカップロシア大会のアジア地区2次予選で日本代表と対戦することが決まっているカンボジア代表チーム。このカンボジア代表チームといち早く対戦した日本人たちがいた。

5月17日にカンボジアのプノンペンにて、カンボジアの首都プノンペンにて、W杯2次予選で日本代表と対戦するカンボジア代表と、カンボジアリーグでプレーする日本人選抜の試合が行われた。カンボジアリーグでは多くの日本人プレーヤーが所属しており、今回はその全14名の選手がこの日本選抜チームに選出された。対するカンボジア代表は、6月に行われる東南アジア競技大会(SEA Games)に出場するU-23代表に所属する選手が含まれておらず、本来の代表監督もU-23チームに専念しているため、日本から派遣されている小原氏が監督代行を務めた。

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7月に開幕するカンボジアリーグの新シーズンに向け、そのメイン会場となるオリンピックスタジアムはこのシーズンオフに改修が進められてきた。おそらく11月に日本代表がカンボジア代表と対戦するであろう会場も、このオリンピックスタジアムになるだろう。余談ではあるが、ここでオリンピックが開催されたという事実はなく、今後も開催する予定はない。

詳しい試合のレポートは私が主宰するアジアサッカー研究所の記事を参照してほしいが、試合結果は残念ながら(?)、4-1でカンボジア代表が日本選抜チームに勝利した。

試合に出場した選手のコメントは以下の通り。

「カウンター主体で前に勢いのある選手が多かった。DFの裏の取り方やタイミング、コンビネーションについてはかなり練習しているように感じた。W杯の2次予選で日本と対戦する際に参考となるカンボジアの弱点をあげるとすれば、セットプレーだと思う。背の高い選手はいないし、GKもDFもボールを跳ね返す力に弱さを感じた」(太田敬人選手/アーミー)

「先週、うちのクラブと対戦したときよりも、(カンボジア代表)チームとしてやろうとしていることが全員で共有できている印象。カンボジア代表の強みとしてはフィジカルが強く、全員がハードワークしてくるのが特徴だ。」(木原正和選手兼監督/カンボジアンタイガーFC)

「カンボジア代表には何かに特化した武器を持っている選手が多い。平均的にうまい選手は少ないけど、ヘディング、ドリブル、スタミナなどなど、何か1つを得意にしてる選手が多いのは強み。一発で流れを変えれる選手がいたり。オリンピックスタジアムでの大歓声はカンボジア代表をかなり後押しすると思うし、スタジアム自体が代表の強みでもあると思う。」(吉田康幸選手兼GKコーチ/カンボジアンタイガーFC)

今回の観客動員数はおそよ2万人。日本代表戦では5万人以上の来場が予測される
今回の観客動員数はおそよ2万人。日本代表戦では5万人以上の来場が予測される

カンボジア在住で、サムライカレープロジェクトなどのグローバル人材育成事業を行っている森山たつを氏が現地で試合を生観戦し、「かつて見たことがないほどの観客の数と盛り上がりだった。新設された人工芝は、照明にあたるとかなりキレイだった。」と語っていた。一方、電光掲示板は半分しか表示されず、得点も時間も表示されないなど、カンボジアらしさも目立った試合でもあった。

人工芝は「芝が長くゴムチップが多いため疲れやすい」(木原選手)とのことで、ボールが転がったり、選手が動くたびに黒いゴムチップが緑の芝の上に舞った。同会場で試合する予定の日本代表は対策が必要かもしれない。(試合中の様子はこちらの動画で確認できます)

カンボジアの情報はピッチ上のみならず、ピッチ外のことについても日本サッカー協会は現地の日本人の情報を収集して、勝利に向けて万全を期すだろう。現地の日本人プレーヤーの存在は非常に心強い。

<出場した日本人選手は以下の通り>

和田雄也(ボンケットアンコールFC)

龍田和樹(ナショナルディフェンスFC《アーミー》)

太田敬人(ナショナルディフェンスFC《アーミー》)

谷嶺臣(スバイリエンFC)

石井雄輔(ナショナルポリスFC)

清水一平(ナショナルポリスFC)

伴和暁(ナガコープFC)

深澤仁博(ナガコープFC)

柳舘卓(ナショナルディフェンスFC《アーミー》トライアル中)

友廣壮希(カンボジアンタイガーFC)

吉原正人(カンボジアンタイガーFC)

吉田康幸(カンボジアンタイガーFC)

木原正和(カンボジアンタイガーFC)

中本悠太(カンボジアンタイガーFC,契約解除済)

世界初?のオーナー兼選手となった加藤明拓

この試合の一週間前には、このカンボジア代表チームと、日本人がオーナーを務めるカンボジアンタイガーFCのトレーニングマッチが行われた。

加藤氏がオーナーを務めるカンボジアンタイガーFC
加藤氏がオーナーを務めるカンボジアンタイガーFC

そこではなんと今年から新オーナーに就任した加藤明拓氏(33)が後半開始から選手のひとりとしてピッチに立った。オーナー兼選手というのは前代未聞の珍事であり、しかもその国のトップリーグのクラブでの出場となると世界的にもほんとど例がない。ましてや、相手チームはナショナルチームである。

ただし、金持ちの道楽というわけではなく、加藤氏は高校時代に千葉県の八千代高校でインターハイに出場し優勝しているほどの実績を持っている。「これほどまでに真剣にやったのは15年ぶり。試合感が鈍っていた。」という氏のコメントにもあるが、自身が迎えた決定的チャンスにも決めることができず、1-2でカンボジア代表に敗れている。

試合後に加藤オーナー兼選手にインタビューを行った。

ーーどんな思いがあってピッチに立つことになったのか?

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(加藤)オーナーとしての合理的な思いと、いちサッカープレーヤーとしての心理的思いの2つがありました。まず合理的な面ですが、うちのクラブが黒字化するには3年かかると思っています。特に当初は日本からの支援が多く必要だと思っており、そのためには私自身が全面に出て話題作りすることが必要だと思っています。プロリーグでオーナー兼選手って聞いたことないですから、日本でも取引先やサッカー仲間にも大受けで、みなさんすごく協力的です。

次に心理的な面ですが、やはり個人としてもいつかプロでやってみたいという思いはありました。2月にカンボジアに来た際にチームの試合をスタンドから見ていた時、FIFAアンセムで選手が入場してくるのを見て、自分の中でもムクムクと思いが生まれてきて。実際に練習に参加してみたら、「あれ?意外とやれるかも?」と。そのあと、日本に戻ってからは、ロッキーのテーマソングで毎朝起きてトレーニングし(笑)、お酒の量もだいぶ減らしてコンディションを整えてきました。

ーー9月と11月に日本代表が対戦するカンボジア代表チームの印象は?予想スコアは?

(加藤)思ったよりも繋いでくる、という印象です。また、選手個々人の技術はそれほど悪いと思っていません。しかしながら、チームとしての連動した動き、先を予測する力、ボールのないところでの動きなどは相当改善の余地がありそうです。9月の日本でのホームゲームは10-0などの大差で日本の勝利になるのではと思います。特にカンボジア人は慣れない環境やプレッシャーに弱いですから、序盤で1,2点取られると一気に崩壊して立ち直れないと思います。11月のカンボジアのホームでは、最初の2,30分を運良く守りきれれば、結果的に日本ホームの時ほどの大差はつかないかもしれません。

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ーーカンボジアサッカーの今後の課題は?

(加藤)十分にフルコートでサッカーができる環境(グラウンド)が圧倒的に少ないです。フットサルや小さいサイズのサッカーグラウンドはあるのですが、そこでは全体を俯瞰したサッカー観が生まれません。また、それを教える指導者も不足しています。当面は外国人指導者に頼らざるを得ないと思っています。当クラブも数年後にはアカデミーを作ろうと思いますが、当面は日本人コーチになるのではと思っています。

加藤氏には、カンボジアンタイガーFCの今後の目標など、他にも詳細なインタビューを行っている。こちらもアジアサッカー研究所の記事を参照されたい。

冒頭の14名のプレーヤーに限らず、この加藤オーナーのほかにもカンボジアには多くの日本人サッカー関係者が存在している。日本代表戦のみならず、現地に豊かなサッカー文化を醸成するため、ピッチ内外で日々戦っているジャパニーズフットボーラーに今後も注目していきたい。