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コロナで広がる営業の意識格差 ~「リアルで会う」の定義が変わってきた~

横山信弘経営コラムニスト
Zoomでの商談はすでに「リアル商談」という概念に?(写真:アフロ)

■コロナで広がった営業組織の意識格差

「うちの業界で、オンライン商談はムリですよ」

いまだに、このように言い張る営業がいる。一人の営業担当者が言うのならともかく、組織のトップである営業マネジャーが言うケースも多い。

ウィズ・コロナの時代になって2年が過ぎた。営業のデジタルシフトが重要と言われて久しい。にもかかわらず、多くの現場では旧態依然だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が流行しても、どこ吹く風。

営業のデジタルシフトで、現在いちばんはじめに思い浮かべるのがオンライン商談だろう。Zoomに代表されるオンライン会議ツールを使うことで、リーズナブルに、どこからでも商談ができるようになった。

コロナ以前から、当社では積極的に活用してきた。商談のみならず、お客様とのセッションや企業研修などでも活用した。当社のみならず、オンラインで会議をしたり、商談をする企業は以前から多く存在した。

それが2020年、コロナの時代に入って流れは加速した。オンライン商談は、営業デジタルシフトの象徴的存在になった。

SFA/CRM、CTI、MAといったセールステックは、組織内コミュニケーションやマネジメントに活かすツールだ。うまくいかなくても、社外にバレることはない。

それに比べ、オンライン商談ツールは、お客様との直接的なコミュニケーションで使用する。このため運用方針を固めることができない営業組織は、お客様にそれがバレる。

「あの会社は、最初のうちオンラインで商談をしていたが、コロナが落ち着いたら、やらなくなった」

「若い担当者との打合せはいつもZoomなのに、営業部長が絡んでくると、必ず当社に足を運んでくる。組織の方針がブレている」

間違いなく、このようにレッテルを貼られる。そして当然、お客様から指摘されることはない。だから感度が鈍い組織は、ドンドンと環境の変化についていけなくなるのだ。

■営業の勘違いはどこから生まれるのか?

私の周囲にも、緊急事態宣言のときだけオンラインを活用し、それ以外はリアル商談に切り替えてしまった企業がある。

「お客様がリアルの商談を希望する」

と主張する営業が大勢いるからだ。しかしこの決断は偽りだ。『リモート営業の極意』の著者である財津優さんの調査によれば、

「営業されるのは問題ないが、来社されるのは困る」

というお客様は一定数存在する。しかもコロナに関係なく、年々増えている。

私もそうだ。当社は、コロナをきっかけに「恒常的在宅勤務制度」を導入し、在宅で仕事をする働き方にシフトした。社員の反応はすこぶるいい。とくに幼い子どもを持つ「子育て世代」の満足度は極めて高い。

当社のみならず「働き方改革」の一環として、このような制度を導入させている企業は増えている。繰り返すがコロナとは関係がない。だからこそ、

「営業されるのは問題ないが、来社されるのは困る」

のだ。

ふだんは在宅でいいのに、営業が来社するからという理由でオフィスに出社しなければならないなんて受け入れがたい。だから、

「一度御社におうかがいしたいのですが」

と営業に言われても、

「けっこうです」

と断る。

「オンライン商談ならいいですが」

と言葉を添えたりはしない。ただ断るだけ。だから相手の営業パーソンは勘違いをし、

「ご都合のいい日程に合わせますので、いかがでしょうか」

こう切り返してくる。致命的だ。理解できるだろう。私だけでなく、多くのお客様は、

「わかってないなァ」

と心の中で嘆く。

「オンラインなら、今すぐ商談になっても構わないのに、営業がやたらと訪問したがるから、永遠に商談が実現しない」

「お客様の立場に立って考えたらわかるだろ? あんな時代遅れの営業とは付き合いたくない。というか会社の問題だね、アレは」

ここ2年の間に、どれほど聞かされたかわからないお客様サイドの感想だ。

■知ってる? 「電話嫌いな人」が増えていること

お客様の立場に立って考える。という基本姿勢ができていれば、営業が”慣れていない”という理由だけでオンライン商談の選択肢をなくすのはナンセンス。

相手の好みや相性、シチュエーションによってコミュニケーション手段を変えるのは、もはや常識だ。

昨今「電話嫌いな人」が増えている。若者の間で顕著だ。理由は、

・時間を奪われる

・自分のペースを乱される

・会話が苦手

といったものがメイン。特にメールやLINEで済む内容を電話でされたら、イライラする人は多い。ビジネスにおいてもそうだ。

「そんなことで、わざわざ電話しないでほしい。メールで十分だろう」

と受け止める人も多い。社内のコミュニケーションならともかく、まだ関係を構築できてもいない営業の都合で、自分が嫌いなコミュニケーション手段で連絡をとってくる人とは関係を持ちたくはない。だから、

「この会社と取引すると、何かあるたびにいちいち電話がかかってくることになる。面倒だから、取引するなら他の会社とだ」

などと思われかねない。これは商談のあり方も同じだ。

「営業されるのはいいけれど、リアルで会いに来るのだけはやめてほしい。Zoomとか便利なツールがあるんだから、なぜそれを使わないのか」

「この会社と取引すると、何かあるたびにいちいち訪問されることになる。面倒だから、取引するなら他の会社とだ」

……と、なりかねないのだ。

■変わりゆく「リアルに会う」という概念

オンライン時代となり、コミュニケーション手段が多様化している。それぞれにメリット・デメリットがあること。個人の嗜好によって、どのコミュニケーション手段を利用したがるかは変化していることは、頭に入れておいたほうがいい。

決めつけるのではなく、必ず相手に関心を寄せ、相手の嗜好や価値観に合わせることが基本だ。営業であれば、当然この基本は徹底しなければならない。

昨年、Twitterで知り合った若者とこんな会話をした。彼は社会人1年目から、名高いビジネスインフルエンサーと交流し、急激にフォロワーを増やしていた。

「どうして、そんなに短期間でフォロワーを増やすことができたの?」

「Twitterで仲間を増やすことが大事ですね。Twitter上でリツイートやリプライを繰り返し、仲良くなったら次にリアルで会うんです」

「SNSで仲間を増やすには、やはりリアルも大事なんですね」

「そうですね。やっぱりSNSだけでは限界がありますから」

「でも、一人一人に会うのって大変でしょ?」

「けっこうまとめて会いますよ。5人とか10人とか。いっぺんに」

「へえ、カフェとか。居酒屋とか、そういうところに集まるの?」

「いやいや……。そんなのムリです。みんな日本全国、いろいろなところに住んでいるので。もちろんZoomで会うんですよ」

この話を聞いて私は心底驚いた。そして自分自身の時代錯誤感を恥ずかしく思った。もはや若者における「リアルで会う」という定義は「Zoomで会う」ということだったのだ。

空間的に同じ場所で時間を過ごすことを、「リアルで会う」とは言わないのかもしれない。

2021年の年末から、メタバースやアバターによる仮想職場のニュースが急増している。ビジネスパーソンにとっても身近な話題となってきた。テクノロジーの進化により「リアルで会う」という概念は、ますます曖昧になってくるだろう。

2年以上も続くコロナの時代は、2022年にいったん区切りを迎えるかもしれない。そのときに、営業のみならず、すべてのビジネスパーソンに共通すること。それは「リアルで会う」とはどういうことなのか? これを再定義することだ。そしてもう元通りには戻らない価値観と、どう向き合っていくのか。これに、かかっている。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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