なぜ「モチベーション」を口にする人ほど生産性が低いのか?

「なんかモチベーションが上がらない……」(写真はイメージ)(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

■「モチベーション」と「エンゲージメント」

「部下の『モチベーション』を上げるにはどうすればいいのか分からない」

「『やらされ感』を覚えさせないために、どのような『動機付け』が必要なのか。そこを知りたい」

モチベーションについて悩む経営者やマネジャーがますます増えています。

米国の調査会社ギャラップによれば、エンゲージメント(熱意)の高い社員は、米国の32%に対して、日本企業は6%しかいない、という結果が出ています。

有名な調査結果ですから、書籍や記事において何度も目にしますが、あらためて思います。なんという低さでしょうか。日本企業における「モチベーションの低い社員」は70%に達すると言われ、いまや重要な経営課題に発展しています。

■「モチベーション」が重要な経営課題に……

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。

そして、コンサルタントをするかたわら、年間150回以上の講演やセミナーをこなし、年間5000名以上の経営者やマネジャーの方々と接しています。その際、受講者にアンケートを取り、悩みを伺うと、やはりモチベーションに関する記述がダントツに多い。冒頭で紹介したようなコメントを書いてこられる方が、ここ数年急増しています。

今、このコラムを読んでいる方の中にも、「部下が自発的に動かない」「当事者意識が欠けている」「危機感が感じられない」といった悩みを抱えている人もいらっしゃるでしょう。

上司のみならず、現場で働く社員たちも同様です。次のような、ぼやきをしばしば耳にします。

「同期がまた辞めた。こんな会社にいてもモチベーションが上がらない」

「この目標は高すぎる。無理な目標を与えられても、やる気なんか出ません」

■「モチベーション」に関する正しい知識

私が現場に入って支援させていただくとき、常に心掛けていることがあります。それは、

「言葉の定義をそろえる」

ということです。したがって「モチベーション」という言葉を使う以上、その言葉の定義が組織内でそろっていないと、話が噛み合いません。

そして、長年現場で結果にこだわり支援してきて断言できることがあります。それは、言葉の定義があいまいなら、その言葉は使うべきではない、ということです。

そもそも「モチベーション」という言葉はどんな意味なのでしょうか。そして「モチベーション」という言葉は、ビジネスをしていくうえで、使う必要がある言葉なのでしょうか。

「モチベーション」という言葉が頻繁に日本のメディアに登場しはじめたのは、2001年以降です。まず、比較的新しい言葉だということを頭に入れておきましょう。

つまり、それ以前は「モチベーションが上がらないから仕事に身が入らない」などという表現は誰もしなかったのです。

このような新語は、誤解されやすいので、その定義をわかりやすく表現したほうがよい。そもそもモチベーションとは何か? 辞書でひくと、「人間が目標達成に向けて行動をするための心の動き、やる気、意欲、動機付け」などと書かれています。これではわかりにくいので、次のように表現をすれば理解しやすくなるでしょう。

「モチベーションとは、あたりまえのことを、あたりまえにやり、それ以上の行動をするために必要な心の動き、意欲、動機付け」

■何が「あたりまえ」なのか?

「朝9時に出勤する」「お客様と約束した11時に訪問する」「1時間で20個の組み付け作業をする」「夕方6時までに品物を納品する」といった事柄が、もし「あたりまえ」になっているのであれば、当然のことながら、その仕事に従事している人に「モチベーション」は必要ありません。

朝の出勤時刻が決まっているとします。その時刻までに逆算して身支度をし、電車の時刻を調べて乗り、会社へ出かけるのに「モチベーション」は必要ありません。前夜に飲みすぎて、多少頭が痛くても、普通に家を出て出勤しようとします。

それが「習慣」になっているからです。誰にとっても「あたりまえ」になっていることです。そもそも「心の動き」や「感情」によって、できるとかできないとかが左右される領域のことではないと潜在意識の中で認識していることですから、脳は疑問を持ちません。

このように、毎日の生活や仕事の中で「あたりまえ」だと認識していること、「習慣化」していることは「モチベーション」や「やる気」に左右されないことがわかります。

ということは、「モチベーション」をやたらと口にする社員が大勢いる組織は、何が「あたりまえ」なのかを、全員で話し合ってみたらいいのです。

■「モチベーション」が必要な場合は、「義務感」が少ないケース

「モチベーション」が必要な場合は、「義務感」が少ないときです。

現在の自分はどうあるべきなのか? 

「あるべき姿」を自分自身で決められる状況だと、行動が「モチベーション」に左右されてしまうことも多いでしょう。つまり「義務感」が少ないケースのときと言えます。

自分に投資するために英語を勉強しよう。ダイエットしよう。ランニングしよう。テレビを観る時間を制限して読書しよう……こういった事柄は「モチベーション」に左右されて、やったり、やらなかったりするかもしれません。

しかし、仕事上のことだと、どうでしょうか? 会社が設定した目標、上司から依頼された作業、期首に自分自身でコミットした行動目標などは、どうでしょう。

目標が達成するかどうかは別にして、そこに向かって行動することが現在の自分にとって「あるべき姿」なのか。それをやることが「あたりまえ」なのか、ということです。そして大事なことは、それを「あるべき姿」にすべきかどうかを自分自身で判断してよいのかということです。

会社が設定した目標は達成した。それでも会社のためにもう少し頑張ってくれ、と言われたら「モチベーション」は必要かもしれません。しかし、目標を達成してもいないのに、「意欲」や「やる気」に左右されてしまう人は、何が自分にとって「あるべき姿」であり、何をすることが「あたりまえ」なのか整理ができていません。

目の前に仕事があり、それをするのか、しないのか。いちいちモチベーションという、本人もよくわかっていない概念に振り回されているような人は、当然のことながら生産性が悪い。

毎日、混み合った道路を選んで車を運転し、ストップ&ゴーを繰り返している。そんな仕事のやり方を日ごろからしているのです。

■「モチベーション」を口にしていると感謝の気持ちがなくなっていく

「あたりまえ」の反意語は「ありがたい」です。

したがって、何が「あたりまえ」のことなのかを判別できない人は、感謝の気持ちが薄れていきます。

家に帰って、食事が出てくることを「あたりまえ」だと思うか「ありがたい」と受け止めるかによって、母親や奥様(父親や旦那様のケースも)に対する接し方が変わってきます。

繰り返しますが、組織において何が「あたりまえ」であるのかを確認しましょう。その区別がつくことで、「モチベーション」に左右されずに仕事をする人が増え、社員のエンゲージメントレベルも上がっていきます。

意外、と受け止められるかもしれませんが、エンゲージメントレベルの高い企業ほど、社員教育を繰り返し、ルールを徹底して守らせているものです。だからこそ、社員の「あたりまえの基準」が高くなり、それぞれが主体的に動き、活気ある風土を形成させていくのです。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。メルマガ「草創花伝」は4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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