なぜ日本のマネジャーは論理思考力が低いのか?

「答えのない問題」をどう解決するか?(写真:アフロ)

■求められる精度の高いマネジメント能力

歯止めのきかない人口減少と、価値観の多様化により、以前にも増して生産性の高い仕事が、どの企業にも求められる時代となりました。生産性を高めるには、個人よりも組織マネジメントの精度を上げることです。したがって、マネジャーの力量が成否を分けると言ってもいいでしょう。

しかし、限られた資源で大きな結果を出すには、論理思考力が不可欠です。ロジカルに物事を考えられないマネジャーに組織運営を任せたら、いつまでたっても不必要な業務はなくなりません。解決すべき問題も、積みあがっていくばかりです。

それでは、論理思考力の高いマネジャーを選任すればいいという意見もあるでしょうが、悲しいかな、総じて日本のマネジャーは論理思考力が低いのです。

■なぜ日本人は論理思考力が低いのか。

そもそも日本人は論理思考力が低いと言われています。

学校教育において、ほぼ「答えのある問題」しか触れてきていないからです。

したがって「答えのない問題」を解決するために、筋道を立てて推論し、自分なりの言葉で主張することに多くの日本人は慣れていません。

ですから、社会に出ると「答えのない問題」に直面し、混乱してしまう人が増えるのです。

とくに問題解決能力が求められるマネジャーは大変です。「答えのない問題」だらけが身の回りに起こるからです。

たとえば、あなたがマネジャーだとして、部下から「どうして働き方改革の時代だから、残業を減らさなくちゃいけないんですか」と質問されたとき、どのように答えますか。

言葉に詰まったり、以下のように返答したら、まるで論理思考力がないと言えるでしょう。

「そりゃあ、そういうもんだろ」

「会社が取り組んでいる方針なんだ。社長が言ってただろう」

「俺に聞かれても知るか」

■ マネジャーに必要な「絶対論感」

それでは、論理思考力を身につけるにはどうすればいいのでしょうか。

論理思考力を身につけるには、本を読んだり、研修を受講するだけでは身に付きません。思考プログラムというのは、過去の体験の「インパクト×回数」でできあがっています。したがって、スポーツと同じように体に馴染むまでトレーニングを繰り返すことが大事です。

とくに私が重要だと感じているのが「絶対論感」です。論理に対する感覚と言いましょうか。論理的かどうかを瞬時に認識するスキルです。

誰かに何かを主張したいとき、「絶対論感」がある人なら、

「主張を裏付ける根拠が必要だし、そのデータも見つけておきたい」

とすぐに思いつきます。大事なことは、そうしなければ説得力ある話し方にならないと、感覚的にわかる、ということです。

しかし「絶対論感」がない人は、何かを主張したいとき、立ち止まることなく、まず主張します。

そして、主張してから「その主張を裏付ける根拠」を探しにいきます。

両者は同じように見えて、同じではありません。前者は「根拠ありき」ですが、後者は「主張ありき」だからです。

前者の場合、主張する前に、いったん立ち止まって考え、根拠を探します。このプロセスにおいて、因果関係のある根拠が見つからなければ、主張するのを思いとどまることでしょう。

「衝動的にこう思ったが、よく考えてみると、思い込みのようだ。言わなくてよかった」

となります。

また、「おそらくこうだろうが、データを集めてみないと、そうとは限らないかも」と思い、データを使って分析してみると、

「そうか。そうなのか。統計データを見ると、私が主張しようとしていたことが必ずしも正しいとは言えない」

と、このように思いなおすことができます。

いっぽう「主張ありき」の態度は、マネジャーとして失格です。すでに主張した後ですから、バイアスのかかった根拠を引っ張り出すことになります。そうなると、著しく説得力が落ちるのです。

人が言い訳するときの思考プロセスと同じです。「結論ありき」の態度だと、相手から信頼を得られません。

■「絶対論感」でわかる2つのポイント

それでは「絶対論感」があると、何がわかるのでしょうか? あくまでも感覚的なものですから、知識武装しない限り、

1)全体と部分の「包含関係」

2)部分と部分の「因果関係」

以上、2つのことしか瞬時に認知できません。

物事の全体像をとらえ、全体と、全体を構成する部分とが網羅的になっているか(もれなく、だぶりなくの関係となっているか)。そして、部分と部分との関係が飛躍していないか(正しく繋がっているか)。――この2つです。

しかし、この2つのことが感覚的に知覚できれば、もう事足ります。ロジカルシンキング研修で勉強する事柄すべてが、この2つの要素の応用だからです。たとえば、誰かの話やコメントを聞いただけでも、

「なんかつじつまが合わない」「そうとは言い切れないのでは」「それだけでない気がする」「必ずそうなるのかな。偶然では?」「抽象的すぎる」「それは手段であって、目的じゃない」「その順番でいいのかな」

という疑問を持つことができます。違和感を覚えることで、考える機会を得られ、考える機会があれば、検証するための行動をすることができます。

ここがとても大事なポイントです。

なぜなら検証行動を繰り返すことで、論理思考力が鍛えられるからです。

そしてロジカルシンキング研修などを受講し、知識武装すると、以下のように言語化できるようになってきます。

「この箇条書き、階層がそろってない」「それは結果であって、原因ではない」「論点の異なるテーマが混ざり合っている」「前提条件が違うから、噛み合わない」「仮説が論点とズレている」「論理が飛躍している」「偶然の必然化だ」……等々。

■「絶対論感」の持ち主は素直になる

「絶対論感」を持っている人は「素直」になります。そして「柔軟」にもなります。「結論ありき」ではなく「根拠ありき」だからだと思います。

「根拠ありき」の態度であれば、自分が間違っているとわかると訂正します。自分の主張を撤回するのは、誰でも気が引けるでしょう。しかし、論理的でない態度をとりつづけるほうがしっくりこないから、撤回するのです。

しかし論感が足りない人は「結論ありき」ですので、自分の主張を曲げません。たとえ「つじつまが合わない」「会社方針との一貫性がない」と指摘されても、都合のいい言説で、自分の主張を通そうとします。このような素直でないマネジャーを、部下は信頼しようとしません。

人工知能が優れているのは、間違っていた自分を素直に認め、アップデートをつづけるからです。企業のマネジャーも、人工知能から学び、論理思考力を磨いて、素直で柔軟になるべきですね。