さくさくタスクを処理できないチームリーダーが抱えるストレス

(写真:アフロ)

ホワイトカラーの生産性をアップする

長時間労働を是正するために、多くの会社でホワイトカラーの生産性アップの取り組みをしています。しかし、どんなに業務の棚卸をしても、情報システムを導入しても、役割分担をキッチリしても、なかなか生産性があがることはありません。

なぜならモノづくりの生産現場と異なり、ホワイトカラーの生産性は「文化」を変えない限り仕事のやり方は変わらないからです。したがって、論理的なアプローチよりも感覚的なアプローチによって組織の風土を変え、いずれ文化をも変えていく取り組みが必要となってきます。

私は、リーダーをはじめ組織のメンバーが使う言葉を変えることで組織風土に影響を与える方法をお勧めします。コンサルティングの現場でよく使う方法です。

今回お勧めするのが「サクタス」。さくさくタスクを処理することを私たちは「サクタス」と名付けています。チームで協力し、行動レベルに落とし込んだ仕事をさらに10分程度のタスクに切り分け、そのタスクを次々に片付けていく。「サクタス」するためには、この準備プロセスが欠かせません。

リーダーを中心に「サクタスミーティング」を開催し、全員で協力してタスク分解する。そして最後にリーダーがこう言えばいいのです。

「それじゃあ、サクタスでいこう!」

これだけでいいのです。リーダーがこのような表現をつづけることで、組織に「サクタス文化」が根付いていきます。

※参考記事:超高速で仕事を片付ける「サクタスチーム」のつくり方

「ぼかし表現」だけでは部下はサクタスできない

このように「サクタス」するためには、仕事を具体的なタスクに分解するスキルが必要です。しかしながら、世の中の多くの中間管理職、チームリーダーたちは、それができない。昔から「ぼかし表現」を使うことに慣れているからでしょう。

私は企業に入り込んで目標を絶対達成させるコンサルタントです。実際にコンサルティングして結果を出すわけですので、戦略や計画を立案するだけでなく、実際にクライアントの従業員の方々には何らかの「行動」を変えてもらいます。

「行動」とは、要するに、

● 頭を働かせる

● 意識する

といった「静的」なものではなく「動的」なものです。つまり「手」や「足」を使うということ。精神論や心掛けはもちろんのこと、「ぼかし表現」では具体的な行動に落とし込むことができません。

< 代表的な精神論 >

・気合を入れろ

・根性で乗り切れ

・固くなるな、力を抜け

< 代表的な心掛け >

・感謝する気持ちを持て

・日々精進だ

・謙虚さを忘れてはならない

< 代表的なぼかし表現>

・徹底的に……

・積極的に……

・スピーディに……

これらを組み合わせると、このような感じになります。

「10月から新しい期がスタートする。今期は目標未達成に終わったが、来期はしっかりと気合を入れて目に見える結果を出していきたい。部内のコミュニケーションをもっと活性化して、何事も積極的にいこう。いいな」

このようなことをリーダーが言うと、「はい!」と部下たちは返事するでしょう。

「じゃあ、鈴木君の課は、新規の顧客開拓を徹底するように。佐藤君の課は、商品開発だ。もっとお客様に評価されるような商品を作り、テコ入れしていこう。企画部の部長も全面的に支援すると言ってくれている。10月からはスピード感をもってやっていこう。頼んだぞ」

そしてまた「はい!」です。

どこにでもありそうなリーダーからの訓示です。しかし訓示だけでは、マネジメントの機能を果たすことはできません。もちろん「サクタス文化」も定着しないでしょう。

前述の例でいうと、1か月が経過しても、コミュニケーションは活性化せず、新規開拓も全然進まず、日々の業務の忙しさもあり商品開発も停滞し、企画部の部長はいつも通り「最近どう?」と声をかけてくれるぐらいで「全面的な支援」とはほど遠い体たらくです。

精神論も、心掛けも、ぼかし表現も、どれも似たようなもの。人によって解釈の幅がありすぎて再現性を担保できない表現です。こういったフレーズをよく使うリーダーだと、部下育成は難しいでしょう。

リーダーのぼかし表現を聞いただけで、みずからタスクへと分解できる「できる部下」なら問題ないでしょうが、「そこそこの部下」だとそうはいきません。

「具体化」できないリーダーの問題

私は企業の管理者たちに「もっと行動レベルにまで落とし込んだ表現にしてください」とアドバイスします。すると必ず戻ってくるのが、

「そこまで言わないと、今の子は理解できないんでしょうか?」

という反論です。なるほど、そう反論するなら私も尋ねてみましょう。

「それなら部下の方々にそのような表現を使わなくてもいいですが、あなたが期待している姿を具体的に私に説明してもらえますか。まず『コミュニケーションが活性化している状態』というのは、具体的にどんな状態ですか?」

このように詰め寄られると、ほとんどの人が返答に窮します。

「新規の顧客開拓の徹底とは、具体的にどういうことですか? どのような定義の企業に、どれぐらいの回数、どのようなアプローチをすることで『徹底した』と言えるのでしょうか?」

「もっとお客様に評価されるような商品」という表現もそうですし、「企画部からの全面的な支援」もそうです。

具体的に言えないリーダーがほとんどです。「ニュアンスでわかるじゃないですか」という逃げはやめてもらいたい。具体的に落とし込まれたタスクが正しいかかどうかは別です。ぼんやりしたものを「具体化」するのにはストレスがかかります。コーヒーカップを壊すようなもの。出来上がったプラモデルをまた分解するようなものだからです。

「具体化ストレス」の正体

コミュニケーションが活性化しているかどうか、新規開拓を徹底しているかどうか、お客様が評価しそうな商品かどうか、企画部が全面支援をしているかどうかは、すべて「何となく」です。ぼんやりとした状態のこと。うまくいっているのであれば、「ぼんやりとした状態」のままでも構いません。

しかし、「あるべき姿」から乖離しているのであれば、それをいったん壊す。つまり分解して具体化するのです。

そうすることで、再構築のための行動・タスクレベルにまで落とし込むことができます。「ぼかし表現」を繰り返し、具体的な行動指標を示すことができないリーダーは「具体化ストレス」を抱えていると認識しましょう。

リーダーがタスク分解できないのなら、それをまず自分で認めることです。自分はぼかした心掛けしか言えない。だから、チームでまとまってタスク分解しよう、こう呼びかけるのです。そして全員で協力して行動やタスクレベルにまで分解できたら、「サクタスでいこう!」とこう声を掛けるだけでいい。大事なことは、ぼかしたままにしない、ということですね。