最強の学習方法「水平読書」は、研修やセミナーを受けるよりスキルアップする!

大型の書店で同じテーマの本を迷わず買う!(写真:アフロ)

現代において読書が一番の学習方法である

私は7年以上も、年間100回以上のセミナーや研修の講師をしています。このような経験を通して思うことは、セミナーや研修などの「集合型学習」もよいが、自分のペースでノウハウや知識を手に入れられる読書以上にすぐれた学習方法はないな、ということです。読書のみならず「集合型の学習」をも組み合わせれば一番よいのですが、時間と空間とが制限されるセミナーなどは、なかなかタイミングよく参加できないものです。

学習するのに「タイミング」はとても大事です。仕事しているときに「この知識を身に付けておきたい」「ノウハウを手に入れて、もっとできるようになりたい」と思い立ったそのときに、タイミングよくすぐ学習できる媒体が本なのです。

そもそも本は、とても安価で、効率よく知識やノウハウが手に入る媒体です。もしも1500円前後のビジネス書を買うのに少し勇気が要る、というのであれば「あたりまえの基準」が低すぎると言えるでしょう。そういう方は比較対象を「小説」や「映画」にしているのでしょうか。仕事に有効なノウハウや知識を手に入れるという観点で考えたら、一般的な1日のセミナー(シンクタンク系の研修機関の相場)が2~4万円ぐらいですから、それらと比較するべきです。そう受け止めると格安だとわかるはずです。

楽しむために本を読むのではなく、知識習得、自己啓発……という観点での学習と受け止めたら、これほどリーズナブルで信頼性の高い学習媒体はないのです。

「水平読書」をするための本の買い方

「水平読書」とは、同じテーマの本を5~10冊ほど複数並べ、そのテーマの箇所だけ抜き取って読んでいく読書法です。情報の平均値を得るためにも、最低5冊以上、できれば10冊の同テーマの本を買って読みます。たとえば「リーダーシップ」についての知識を身につけたいのであれば、「リーダー」「マネジメント」「部下育成」「人を動かす」ことが書かれている本を10冊ほど買うのです。

「水平読書」をするうえで、最も大事なことは「買い方」です。

人を採用するときと同じです。採用を間違えると、入社後どんなに人材教育を施してもなかなか期待通りに成長してもらえません。「水平読書」は読書を楽しむ方法でもなければ、著者の見識を味わう読み方でもないのです。知識・ノウハウを手に入れ、自分のものにするためのストイックな学習方法です。しっかりとお金を使い、仮説を立てて本を購入しましょう。

それではどのように本を買うのか、を解説します。「水平読書」をする場合、一度に使うお金を必ず「1万円以上」と決めてください。この金額に違和感を覚える人は、「水平読書」を「セミナー」や「研修」と比較できていない証拠です。交通費を使って会場まで足を運び、1日時間を拘束される「2~4万円程度の研修」と比べれば、かなりリーズナブルだと受け止められるはずです。

次に1~2万円を使うつもりで、大型書店へ出かけます。

ネット書店などではなく、リアルな大型書店での購入をお勧めします。なぜなら大型書店のほうがきわめて効率的に本を選ぶことができるからです。「リーダーシップ」の棚へ行き、陳列されている関連本を片っ端から買えばいいだけだからです。「リーダーシップ」が書かれている本が50冊並べられていたとしても、そこから1冊を選ぶのではなく10冊ぐらい選ぶのです。難しい作業ではないはずです。

ネット書店ですと、過去の購入履歴や、「この本を買った人はこんな本も買っています」などといったレコメンド機能によって、学習目的とは関係のない本にまでついつい手を伸ばしてしまうリスクがあります。それに何より「目次」と「内容」を確認することができません。

「水平読書」はセミナーや研修を受講するのと同じように、具体的な知識やノウハウを覚えるための学習方法です。たとえば「リーダーシップ」という漠然とした概念を知るための手法ではありません。したがって本を買うときは、自分と向き合い、どんな課題があるのか、どんなニーズがあるのかをまず考えます。

「部下がなかなか言うことを聞いてくれない。どうすれば人を動かすことができるのか知りたい」

「マネジメントサイクルを回すということが、イマイチよく理解できていない」

「社内のプロジェクトを任されたが、どうすればプロジェクトを成功させられるのか。コツがわからない」

「水平読書」をするときは知りたいノウハウだけを抽出して拾い読みをします。したがって、本を買うときも実際に手に取り、目次を見て、「人を動かすには?」「マネジメントサイクルを回すには?」「プロジェクトを成功させるには?」という切り口で確認してから買い物かごへ入れていきます。

著者が有名かどうかは関係がありません。ベストセラーになっているかどうかも関係がありません。出版社というフィルターを通して本になっている以上、著しく「質」が低いことが書かれていることはないでしょう。また、他に何冊も買っているわけですから、「質」が悪いかどうかの検証は他の書籍を読んで比較すれば判明していきます。したがって「この著者って有名だろうか?」「この本に書いてあることは、果たして参考になるのだろうか?」などと考えず、機械的に本をチョイスします。

「水平読書」の具体的な方法とは?

それでは具体的な本の読み方を解説します。

本を最初から最後まで読み切る必要はありません(読み切りたいのであれば、「水平読書」を終えてからにします)。

まず本を手にして見るべきは「目次」。

購入時に確認してあるはずですから「自分が読みたいことが書かれていない」ということはないでしょう。もう一度「目次」を最初から最後まで目を通し、手掛かりを見つけます。

自分が学習し、身につけたい知識やノウハウが書かれているところをピックアップして、その周辺を(たとえムダと思っても)10~20ページぐらいは読みます。そして、参考になる文章には積極的にペンで線をひくか、付箋を貼るなどします。1冊にかける時間は、どんなに読書が遅い人でも1時間以内と決めてください。

「230ページもあるのに、その中の30ページぐらいしか読まないなんて、もったいない」

などと考えるのはやめましょう。他のページを読みたいのであれば「水平読書」の後にすればよいだけの話です。たとえばリーダーシップ関係の本を10冊買い、「水平読書」のために、

・1冊め → 「30ページ」

・2冊め → 「5ページ」

・3冊め → 「40ページ」

・4冊め → 「15ページ」

・5冊め → 「63ページ」

・6冊め → 「8ページ」

・7冊め → 「24ページ」

・8冊め → 「30ページ」

・9冊め → 「45ページ」

・10冊め → 「13ページ」

……ぐらいしか読まなかったとしても、読まなかった部分をあとで全部じっくりと読めばよいのです。

読み方に工夫などありません。自分の読み方をするだけです。気をつけたいのは、「水平読書」をしている最中に他の本は読まないことです。必ず連続して同テーマの本を読み続けましょう。セミナーを受けている途中に、別テーマのセミナー会場へ行きませんよね? それと同じ理由です。

「水平読書」をすると、どんな気付きがあるか?

たとえば10冊本を読むと、

・5冊は、共通する考え方やテクニックが書かれている

・3冊は、別視点の考え方やテクニックが書かれている

・2冊は、残念ながら自分にとっては参考にならないことが書かれている

……だいたいこのような結果になると思います。2~3冊しか読んでいないと、いろいろな著者から、いろいろなノウハウを紹介されて混乱する場合があるため10冊ぐらいがちょうどいいのです。

本を読んで参考材料をたくさん手に入ることで、抽象的な判断材料に「要約」することができます。

「これだけ本を読んだら、もうわかった。部下を動かすには、まず信頼関係が必要だ。そのためには、日ごろからの声掛けが大事だ」

「マネジメントサイクルを正しく回すには、仕組みが重要だ。そして数値的な指標をいくつか共有させよう。どの本にも書いてある」

「プロジェクトはメンバーに責任と役割の所在をはっきりさせることが大事なんだなァ。わかってはいたけど、やっぱりそうだよな」

おそらく、10冊も手に取って読めばだいたい同じことが書かれてあることに気付くはずです。そして「以前から知っていたこと」ばかりで、新しい発見などあまりなかったという感想にいきつくでしょう。しかしそれでいいのです。

斬新で、奇をてらった内容の本は話題性が高く、売れるかもしれません。しかし実用に向くかどうかは別です。

絶対に覚えておいて欲しいことがあります。一番参考になる本は「あたりまえのことが、あたりまえのように、一番大事である」と書いてある本です。1冊の本しか読まないと疑ってしまうかもしれませんが、10人のうち、8人の著者が同じようなことを書いていたら、

「やっぱりこれが『あたりまえ』なんだ。そりゃ、そうだよな。あたりまえだよな」

と説得されます。そうしてご自身の「あたりまえの基準」が高まってきます。そうすることで軸がブレなくなります。たとえ同僚から「部下を動かすために、日ごろから声を掛ければいいってもんじゃないよな」と言われても、「いや、そんなことはない」と力強く反論できるはずです。10人のうち、8人の専門家が同じ意見であれば、自分の知識・ノウハウに疑いを持たなくなります。

脳の思考パターンを変えるためには「インパクト×回数」です。インパクトの強い体験はそれほどないですから、回数を意識します。

4冊も5冊も、同じことが書かれていたらさすがに、その知識は脳の短期記憶(ワーキングメモリ)の中に格納されることでしょう。何かあったとき、すぐに思い出せるほど記憶に残ります。こうしてはじめて良質な知識やノウハウを「体得」できるようになります。

本ではなく、ネット情報を勧めない理由

本ではなく、インターネットに溢れる情報も参考になるものが多いでしょう。しかし、私はおススメしません。

本の場合、書店や図書館という限られた場所に、プロの書いた参考材料がずらりと並んでいます。前述したとおり、その中から1冊を選ぶというのであれば悩むでしょうが、同じテーマの本を5~10冊選ぶという作業は、とても簡単です。美味しそうな魚だけが入った水槽から、5~10匹すくうだけですから。

いっぽうで、インターネットという無限の世界には、素人なのか、プロなのかわからない人が書いた情報が、数えきれないほど格納されています。自分の視界にすべて入らないため、簡単には見つかりません。底が見えない深い海に、釣り糸を垂らすようなものです。釣りの達人(ネット検索の達人)になれば可能でしょうが、簡単ではありません。そもそも狙っている魚がその海にいないかもしれないですから。

したがって、まずは本から入りましょう。いくらできるだけ多く集めるといっても、媒体選びは大切です。

「水平読書」は単純な本の読み方ではありません。セミナーや研修で学ぶことと同列で考え、お金と時間をかけてみてください。想像以上に、知識やノウハウを「体得」することができます。