時短を強要する「時短ハラスメント(ジタハラ)」は、なぜ問題なのか?

時間で区切ることができない仕事もある(写真:アフロ)

残業上限60時間は妥当か?

「働き方改革実現会議」は2月、残業の上限を月60時間と定めた政府案を示しました。働き方改革を実現させるため、長時間労働の是正は不可欠です。しかしその影響で労働時間を早急に減らそうとする企業もあらわれているのも事実。残業削減を人事評価するうえでのノルマとし、現場のマネジャーに強要する動きです。あまりにことを急いでいいのでしょうか?

相手の立場を考えず、時短を強要しすぎることを私は「時短ハラスメント(ジタハラ)」と名付けています。

簡単に残業削減できる職場もある

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。企業の目標予算も、残業削減時間も、達成させるには、自主性に任せるのではなく、ある程度は強制的に働きかけないと実現することはありません。そして実際に、売上や利益をアップさせることはすぐにできなくても、労働時間を減らすことぐらい簡単にできることもあります。

単に「残業しないといけない空気」が蔓延している組織であれば、「帰りたまえ」と一喝するだけで、ほとんどのスタッフが帰路に着くでしょう。しかし、心掛けでは何ともならない場合があるのです。特に知的労働を強いられている部門は、一筋縄ではいきません。

時間で区切ることができない仕事とは?

私は常に「アプローチ」と「リターン」という2つの軸で物事をとらえ、現場での指導にも役立たせています。

・30分集中すれば、3つの見積書を作成できる

・1000人にビラを配ると、そのうち約5人から問合せが入る

・100個のサンプル品を品質検査すると、おおよそ1つは不良品が見つかる

何をすれば、何が実現されるのかがある程度ハッキリしている場合は、労働を時間で区切りやすいと言えます。他の方に仕事を任せるときも、

「この請求書を処理するときは、この手順でやってください。1時間もあれば終わるから」

と、このように言えます。仕事を引き継いでも、2時間も3時間もかかっているのであれば、何かがおかしい。手順を間違えてないか。言われたとおりやってないのではないか、と思います。しかし、商品開発であったり、新しい商品の品質管理手順を組み立てようとしていたり、マーケティング分析して市場の動向を掴もうとしていたり……と、知的労働がメインの人は、どれだけの時間、どれだけのことを、何回することで、期待通りの成果が手に入るかわかっていません。

どれだけのアプローチをすることで、どのようなリターンが戻ってくるか予測できないのです。

その場合、どうするか?

期待する成果(リターン)が手に入るまでやり続けなければいけないのです。単純に時間で区切ることはできない、ということです。研究職の人が夜遅くまで作業を続けてしまうのは、ダラダラやっているせいではありません。一定の成果を手に入れるまでは試行錯誤の連続が不可欠で、他人の判断で思考を途切れさせるわけにはいかないからです。

人を増やして作業を分担すれば解決する問題でもないのです。

業務の棚卸しをし、労働時間を減らすことができる職場はおおいにやりましょう。しかし、知的労働を強いられている人はそう簡単ではないと知るべきです。現場を知らずに、経営陣や管理部門が時短を強要すると、嫌がらせのように受け止められることがあるのです。これが時短ハラスメント(ジタハラ)の実態です。