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1社目でうまくいかなかった人が成功者に変わる、「第2エリート」というキャリア戦略

横山信弘経営コラムニスト
流されない人生を歩むことでキャリアを積んでいく戦略(写真:アフロ)

●「エリート」とは何か?

「エリート」という言葉があります。これを辞書で引くと、社会や組織の中でひときわ優秀な人。特別な、選ばれ抜かれた人という意味です。ビジネスの分野では、有名大学を卒業し、世界的な大企業の幹部候補としての道を期待され、経営陣の思惑通りに昇進していく人をエリートと呼ぶのが普通と言えます。

プロ野球選手で言うと、長嶋茂雄氏が典型的なエリートです。高校時代、大学時代でも注目されて読売ジャイアンツへ入団。現役時代の活躍は説明するまでもありません。現役を退き、監督を歴任。現在は終身名誉監督に就いており、「エリートの中のエリート」という存在でしょう。

最近では、ジャイアンツを引退し、そのまま監督となった高橋由伸氏も典型的なエリート。期待されて入団し、活躍し、首脳陣に招へいされた流れからも、よくわかります。まさに「選ばれた人」という感じです。

多くの人は、「エリート」という言葉に、ある種の耽美さを覚え、憧憬の念を持って触れることは間違いないでしょう。「芸能人」「著名人」と同じように、特別な権利を持つ階級のような称号を持っていることを匂わせているからです。

● もっと身近な「エリート」

「エリート」という言葉を辞書で引くと、確かに前述した意味となるのでしょうが、一般的にはもう少し身近な存在であると言えます。有名大学を出なくとも、グローバルで活躍する大企業でなくても、会社という組織の中で”出世街道”をひた走る人は「エリート」と呼ばれるものです。

「君が新人の田中君か。君に紹介したい人がいる。上司で、君を指導するのが、こちらの鈴木リーダーだ。鈴木君は、当社の数少ないエリートのひとりだよ」

一般的な企業でも、よくこのように使います。わかりやすく言えば、ある組織の中で「選ばれた人」「出世が速い人」「将来を約束された人」がエリートと呼ばれるのです。

ところで、私自身はこの「エリート」という言葉に、まるで馴染みがありませんでした。学歴がないし、転職を繰り返しています。第一、途中で「青年海外協力隊」とかにも参加しています。完全に「会社生活」からドロップアウトした時期もあるので、社会人になって25年以上、「エリート」などという表現には、ずっと縁遠い存在でした。ところが35歳で、アタックスという70年以上の歴史がある経営コンサルティングファームに入社したあとは、グループ会社の社長となり、2016年には会社の経営陣のひとりにまで上り詰めました。

キャリアアップのために転職を繰り返す人。独立して会社を立ち上げるという人なら、世の中にいくらでもいますが、会社の文化に馴染めず転職をして、歴史ある企業のトップにまで昇進する、というのは、それほど一般的ではないかもしれません。

プロ野球で言うと、ドラフト5位ぐらいで入団し、3年ぐらい二軍暮らし。一度も一軍に昇格することなく、他球団へトレード。そこでも1~2年鳴かず飛ばずの成績にあえいでいても、ある年から突然能力が開花。球界を代表する選手となって、最終的に監督まで上り詰める――こういった人って、なかなかいないですよね。

私は自らの経験から、1社目や2社目でうまくいかなかった人でも、一般的なエリートと同じような「選ばれる人」になる道はあると考えています。このようなエリートを私は「第2エリート」と名付けました。新卒にも「第二新卒」という言葉があるように、エリートの中にも「第2エリート」というポジションを確立してもよいと考えたからです。

●「第2エリート」への可能性

さて、そもそも1社目でうまうくいかない人が、2社目で突如として覚醒し、エリートコースをひた走ることが実際にあるか、を考えてみましょう。大企業から中小企業まで、数えきれないほど現場でコンサルティングを経験してきた身でいえば、そういうケースは稀にあります。

さらに、1社目、2社目でうまくいかない人が、3社目で突然能力が開花する、ということも、決して多くはありませんが、あります。4社目……5社目……となると、確率は低くなるのですが、実際にあるのです。ところでエリートというのは、一般的なレベルでの「できる人」のことを指すのではありません。「仕事ができる人」になるなんて、努力次第で誰でもできます。その会社の幹部候補を期待されるまでの「エリート」ですから、かなりハードルが高くなるのですが、やろうと思えば狙ってできることなのです。

● キャリア戦略を考えるうえでの3つのポジション

ところで「第2エリート」を目指せる人には、共通の特徴があります。それは、社会人になり立てのころ、妙に「青臭い」ことです。

キャリア戦略を立てるときのポジショニングとして、

1)ドリーマー(夢想家)

2)リアリスト(現実家)

3)クリティック(批評家)

これら3つのポジションがあると言われています。前述した「青臭い」というのは、まさに「夢想家」を指します。社会に出てまだ現実を知らないのに、夢が大きすぎて、「会社に入ったらコレがやりたい!」「自分の可能性をぶつけてやる」と意気込んでいるドリーマーたちのこと。

理想が高すぎた状態で入社すると、現実を突き付けられ、意気消沈してしまうのです。ここで目の当たりにする「現実」とは、以下の2種類です。

● 社会に出たらやりたいと思っていたことを、なかなかさせてもらえないという現実

● 社会に出たらやりたいと思っていたことを、やれる”実力”がないと気付かされる現実

一般的なエリートなら、2つの目の現実に直面しません。それぐらいの実力は備わっているため、理想が高すぎても、しばらく会社の言われるとおりにやっていけば、いずれ道は開けるだろうという自信があります。

また、現実を直視するリアリストでもありますので、若くても感情のコントロールを正しくできます。腐ることなく、先輩や、先人の成功者の教えを守り、地道に自己投資を繰り返し、「自分資産」の形成に励みます。正しい「自分資産」を積み上げていけば、いずれ素晴らしい仲間――「関係資産」が手に入り、その過程が将来エリートとして開花したときに大いなる財産として恩恵をもたらすことを知っているのです。

プロ野球でいえば、入団後、すぐに一軍登録されなくとも、ファーム(二軍)でみっちり体作りや、基礎トレーニングに打ち込む、ということです。謙虚な姿勢で取り組むので、首脳陣にも目をかけられ、常にアドバイスをもらうことになります。実力もあるので、数年で一軍に昇格し、活躍することになります。

エリートは、思い描く理想の「状態」を見据えながらも、そこへと誘う「プロセス」を正しく受け止め進んでいきます。いわゆる「守破離」の思想です。

ところが実力のないドリーマーは、まず自分の理想の「状態」へショートカットできるものと常に勘違いしています。この「ショートカット思考」が成功者になるうえで大きな阻害要因となって、行く手に立ちふさがることになります。ショートカットしようとすればするほど、常に遠回りを強いられるという皮肉な人生を歩むことになるのですが、なかなかそのことに気付くことができません。

ドリーマーは、理想の状態へ近づくためのプロセスが煩わしいのです。プロ野球でいえば、入団後、一年目からすぐ一軍スタメンで起用してもらえると夢見ているような新人です。実力もないのに、そのような「状態」にすぐたどり着くはずがありません。ファームで諸先輩たちと日々汗を流してトレーニングしていても、常に上の空。夢にたどり着くためのプロセスに目を向けず、夢想ばかりしています。

● 典型的なドリームキラーに気をつけろ

このような状態が続けば、いつまで経っても自分が思い描く理想の「状態」にたどり着くことができません。その募り募った不満が「愚痴」となって口から出てきます。

「社会に出たら、こういうことがやりたかったのに、全然させてもらえない。今の会社にはとても失望している」

しかし、この「愚痴」に付き合ってくれるのは、同じように現実に目を向けず、自己投資を怠る友人だけです。「自分資産」が積みあがらない、ショートカット思考の人には、結果的に素晴らしい「関係資産」に恵まれないため、同じようなショートカット思考の仲間とつるむことになります。

「そんなことを言わず、まずは今の会社で与えられた仕事を粛々とやりたまえ。いつかチャンスは来るんだから」

と、親身になって助言・忠告してくるリアリスト的な友人や先輩たちも、周囲にはいないことでしょう。たとえこのような慈悲深い言葉をかけられても、素直に受け止めることができません。

また、現実を正しく受け止め、建設的にアドバイスをしてくるリアリストはいいですが、クリティック(批評家)のポジションをとる友人に相談してしまうと、

「ばーか。今の世の中、そんなにうまくいくわけないだろ。頑張ったってムダ。こんな会社にいたって人生を浪費するだけだ」

などと無責任に言われてしまうのがオチです。ヒドイ場合は、

「やりたいことって何? そんな夢みたいなこと言ってないで、目の前の仕事をキッチリやればいいんじゃないの。人生ってそんなもんでしょ」

と言われ、夢を諦めさせられたりします。これはいわゆる「ドリームキラー」と呼ばれる人の典型的な言説です。

自分にやりたいことがあって、それをするためにどうすればいいのか、建設的なアドバイスをしてくれるのがリアリストです。しかし「やりたいことがあっても、現実的には無理なんだから、そんなことは諦めろ」と言うのは「アドバイス」にはなっていません。その人の価値観を身勝手に押し付けているだけです。人の可能性を見限る権利を、誰も持ち合わせていないことを知らないのです。

このようなドリームキラーの言葉をまともに受け止め、

「そうだよな。人生って、そんなもんだよな」

と諦めたら、「第2エリート」の道は、ほぼ閉ざされたことになります。いわゆる「その他大勢」的な、普通の会社員として生きていくことになるでしょう。もちろん、それが悪いわけではありませんが、本コラムは「第2エリート」になるためにどうすればいいかを記述しているわけですから、その選択は間違っています。

衝動を抑えられないドリーマーたちは、この時点で退職を決意するでしょう。ここから泥沼にはまっていくことになりますが、この体験が、普通のエリートとは違う「自分資産」となって、大いなる果実をもたらせてくれます。

●「キャリアコンサルタント」という困った存在

私は現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタントです。企業が掲げる事業計画があり、この計画を達成させるお手伝いをしています。ですから、とにかく「キレイゴト」が嫌いです。

本当に美しく、人の心を綺麗にしてくれる言説であればいいのですが、「キレイゴト」というのは、いわゆる表面を取り繕っただけの中身のない言葉たちのことです。現場で本当に結果を出そうと一所懸命やっている担当レベルの人たち、そして我々のようなコンサルタントには、このような「キレイゴト」は毒にしかならず、触れると、とても虚しい気持ちになります。

極端な話、今日、食べるものがなく、食費に費やすお金もない人に、

「まずは自分にとって本当にやりたいことは何か? 自分の理想の生活とはどんな暮らしなのか、それを見極めてから、どんな仕事に就くのかを考えたほうがいいね。そうでないとなかなか長続きしないから」

などとアドバイスする人がいたら、どうでしょうか? まさにドリーマー(夢想家)的キレイゴトです。

「まずは最低限の生活費を稼ぐために、いまできる仕事を一所懸命やろう」

というのが現実的な助言です。

「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という二宮尊徳の名言があります。直面している問題は目も向けず、将来の理想や、人間としての倫理観を問うのは寝言でありキレイゴトである、ということです。

●2種類の「目標」を区別できるか?

目標には「発生型」と「設定型」の2種類があります。発生型の目標というのは、与えられるもの。いま発生している問題を解決している状態が目標となっています。つまり、病気をしているのであれば、病気が治っている状態と、それを治す時期が目標となります。会社から与えられた目標も同じ。「発生型の目標」です。

いっぽう設定型の目標というのは、みずから設定する目標です。今度のフルマラソンで4時間を切るタイムを出したいとか、会社でこんなことを実現したい、とか、将来はグローバルに活躍できる人財になりたい、とか。これらはすべて設定型です。

発生型の目標というのは、どうしても受け身の目標ですので、モチベーションが上がることはありません。病気や怪我を治す、という目標に対して意欲もやる気も関係はなく、治さなければならないので治す、というだけのことです。会社に入り、お給料をもらっている以上、与えられた仕事はやらなければなりませんし、目標を達成するのは普通のことです。

ところが最近、自分のキャリア形成を若いころから考えておくべきだという風潮が日本企業に蔓延しており、「キャリアコンサルタント」と呼ばれる人たちが会社の中に入ってきて、まだ高校や大学を出たばかり人たちにまで、

「人生において、自分が最も大切にしたいものは何か?」

「仕事と余暇や家族の時間をどう配分するのが理想か?」

……このような問い掛けをします。ワークライフバランスを考えた「キャリアプラン」を社会人になり立てのころに記入するのです。教科書的には、これでいいでしょうが、私は現場でコンサルティングをしている身です。そして現場の管理者と一緒に、こういったキャリアコンサルタントがやっている研修やセッションを横目で観察します。

私はクライアント企業の社員を以下のように3つのタイプに分類しています。

1)「10→1社員」……【10】言われて【1】しか理解できない社員

2)「10→10社員」……【10】言われて【10】しか理解できない社員

3)「10→100社員」……【10】言われて【100】理解できる社員

2週間前に「必ずやるように」と念を押したにもかかわらず、「まだできていません。この2週間、けっこうバタバタしていたものですから」と平気な顔でいう新人。

お客様のアポをとった後、3つの事柄を聞いておいてくれと頼んでおいたのに、「お客様のアポイントはとりましたが、情報収集はできていません。それって必要なことなんですか?」と無邪気に笑う若者。

……このような「10→1社員」にも、キャリアコンサルタントは、

「自分の生きがいについて考えてみましょう。何が自己成長や自己実現に繋がるのか。どんなことが人生を豊かにするのかを日々考えて、目の前の仕事に向き合うことが重要です」

などと言います。

「10→1社員」の上司は、当然のように「キャリアコンサルタントの先生、そんなことについて考える以前に、まず彼には最低限の仕事をやれるようになってもらいたいです」と言いたいでしょう。私も同じ意見です。「キレイゴトはいいから、やることやれよっ!」と言いたくなります。現場を知っているからです。

しかし研修会場にしかやってこないキャリアコンサルタントは、そんなことがわかるはずがありません。

上司が「10」言っても「1」しか理解できない社員が、

「先生、私は情報通信技術が世界の常識を変えると信じています。具体的なことはまだわかりませんが、もっともっと勉強し、スキルを磨き、誇りを持てるような仕事をしたいと考えています」

などと研修中に発言していると、正直なところ頭を抱えたくなります。「何を青臭いことを言ってるんだ!」「目を覚ませ。そんなこと考えてる暇があったら、やるべきことをやれ」と言いたくなります。

もちろん、そのようなドリームキラー的な姿勢を私は持ち出すつもりはありません。しかし最近は、まだ会社での仕事に慣れていないときから、発生型の目標と同じような形で、設定型の目標を意識させられる風潮があるのです。

元来ドリーマーでなかった人でも、昨今の社会システム上、ドリーマー的な意識付けをさせられることが増えていることは間違いありません。発生型も、設定型も、どちらのタイプの目標も重要です。しかし両方同時に意識できるような器用な人は本物のエリートになるような優秀な人だけです。

「十年史」「二十年史」を手帳につけ、自分が30歳になったときはどんなスキルを持ち、社内でどんなポジションについて、どのような役割を担っているのか? 40歳には、どのような経験を積み、どんな目標を成し遂げ、会社や家族、社会に対してどんな影響を及ぼしているのか、そして50歳になったときは――。こういったことを頭に入れながら、上司に言われたとおりにお客様に連絡をとったり、資料を作って印刷し、メールを書き、面倒でストレスがかかることも、できればやりたくないような交渉事もやり切って、経験を積み上げるのです。そうすることで周囲との関係性を構築し、正しい「関係資産」を積み上げていくのが普通のエリートです。

しかし、ごく一部のエリート以外は、ここまで器用に感情を抑制することなどできないものです。まだまだあらゆる面で「未熟」だからです。

● リアリストは「考える習慣」があり、ドリーマーは「悩む習慣」がある

私は現場に入ってコンサルティングをしている際、【10】言われて【1】しか理解できない社員、【10】言われて【10】しか理解できない社員、【10】言われて【100】理解できる社員と、を区別すると書きました。この差は、「考える」という行為のレベル差にあります。

「考える」をコンピュータのデータ処理にたとえると、「悩む」はデータ処理されていません。データが足りないのではなく、データが格納されている記憶装置に正しくアクセスできていないのです。

人間の脳が処理するデータの記憶装置は、「短期記憶」「長期記憶」「外部記憶」の3つです。普通、人が考えようとしたときは、最もアクセススピードの速い「短期記憶(ワーキングメモリ)」にアクセスをします。しかし、この領域に求めるデータが格納されていなければ、もっと脳の深い部分にある「長期記憶」にアクセスします。

「考える」というのは、脳の「短期記憶」になければ、「長期記憶」「外部記憶」にもアクセスする動作をすることなのです。いっぽう「悩む」というのは、容量の小さい「短期記憶」だけにしかアクセスせず、「長期記憶」「外部記憶」にはアクセスしないのです。そのため深く考えることができません。「堂々巡り」を繰り返すことになります。

会社に入り、実際にやりたいことができなくても、エリートの道を進む優秀な若者は「考える習慣」があります。面白くない雑事を任せられても、「こういった仕事にも意味がある」と割り切ることができます。感情のコントロールができ、虎視眈々と将来のための自己投資を継続できます。いっぽう、1社目からうまくいかない若者は「悩む習慣」があるため、あーでもないこーでもないと悩んでばかりで堂々巡りを繰り返し、感情の抑制もできません。

「考える習慣」を身につけるには、最低限の脳の基礎体力が必要です。脳の体力が鍛えられていないと「長期記憶」にアクセスするときに発生するストレスに耐えられないからです。つまり柔軟性が欠如している、ということです。体が固い人と同じです。ストレッチを繰り返すことで、足の裏を頭の上に乗せたり、両脚を大きく開いて前屈したりできるのです。

「考える習慣」も同じ、日々のストレッチが不可欠なのです。面倒なこと、ストレスがかかる雑事を日々こなすことで脳の基礎体力はアップし、ストレス耐性もついてくるのです。

したがって、絵に描いたようなエリートコースを歩む若者は、「こんなこと意味があるのか?」「自分の未来に役立つのか?」などと不毛な自問自答をすることがなく、学生時代から学業やスポーツを積極的に取り組んでいるのです。それによって脳の基礎体力がつき、正しく感情のコントロールができるようになっています。

社会に出てからも進んで「汚れ役」を買い、誰もが面倒だと思うことを率先してやることで、さらに脳の免疫力は上がっていきます。脳の柔軟性は高くなり、問題解決能力もついていきます。

ところが1社目でうまくいかない人はストレス耐性が足りないため、感情のコントロールができず、終わりのない悩みに苛まされ、衝動的に会社を辞めます。もちろん問題は自分にあるのではなく、自分がやりたいことをさせてもらえない職場にこそ問題があると思い込んでいます。

●「第2エリート」への道

青臭い夢を持ち、やりたいことをさせてもらえなかったからといって、1社目を衝動的に退社した若者が、2社目でうまくいくためには、自分の実力を正しく受け止め、勘違いに気付くことが絶対条件です。1社目でうまくいかなくても、まだ取り返しがつくと思うのでしょう。「考える習慣」がないですから、何も考えずに意思決定してしまいます。

しかし、さすがに2社目では、同じことを繰り返すことはできません。2社目でも同様の憂き目にあいますが、普通は覚悟を決めて、さほどやりたくない仕事でも努力してやり切ろうと思うものです。もし2社目でも不満を覚えても、さすがに3社目では追い詰められることでしょう。もう20代も後半。常識的な感覚を持っていれば、何度も転職を重ねるわけにはいかないと思うはずです。渋々でも目の前の仕事に打ち込み、会社の期待にこたえようとします。

しかし、ここで大きな壁にぶち当たります。

将来の夢ばかり追いかけていてもしょうがないと気づき、ようやく目先の仕事に集中しようと思っても、自分の実力のなさにがく然とするはずです。しかも「新卒」ではありません。「第二新卒」です。もし2社目でもうまくいってなければ「第二新卒」でもありません。それなりの「即戦力」として期待されるのに、本来できるはずのことができません。「考える習慣」がないし、感情のコントロールもうまくいきません。ですから若くして転職を繰り返す人を企業側は高く評価しないのです。年齢の割には、備わっているはずの「自分資産」がかなり見劣りするからです。

「第2エリート」になるには、すべてここからの奮起にかかっています。現実を知れば知るほど、過去の自分は青かった。最初に入った会社でもっと頑張ればよかった。世間知らずで、理想を追い求めすぎていた自分が恥ずかしいという気持ちに悶々とすることでしょう。しかし悔やんでも、時間は戻ってきません。ここから脳のブースターを働かせ、失った時間を取り返すかのごとく意識を変えるのです。

出遅れは否めません。同世代の生え抜きと、同じような思考スピードでやっていては、いつまで経っても追いつくことができないのです。こうなると、よけいに焦ります。しかし焦ることによって「超高速で考える習慣」が身に着いていきます。同様に、急速に感情のコントロールができるようになるため謙虚にもなります。謙虚な姿勢で思考スピードを大幅に速めていると、周囲の見る目が変わってきます。「自分資産」が増え、「関係資産」もスピーディに大きく積みあがっていきます。

これまでは「自分探しに明け暮れる世間知らず」「できもしない夢なんか見てる青い鳥症候群」などと揶揄されてきた過去があるため、そのギャップに胸を打たれます。感謝の気持ちが芽生え、「もっとやってやろう!」「これまで迷惑をかけてきた家族に恩返ししたい」などと言って発奮したら、もう手が付けられなくなります。誰よりも速いスピードで成長し、発生型の目標を次々に達成していきます。会社の期待にもこたえられるようになりますが、そこで止まりません。「第2エリート」の成功の曲線傾斜は、普通のエリートよりも大きく、短期間で急激に能力開花をしていくのです。

過去、自分のやりたかったことは忘れ、目の前の仕事に打ち込んでいるうちに、新たにやりたいことが見つかったり、素晴らしい人との出会いで、これまで考えたこともないような可能性を見出し、チャレンジしてみたいという気持ちに駆られます。

もともと大きな夢があった「第2エリート」は、からからに乾いていた喉をもう一度満たしたい、何年も前に抱いていたハングリー精神を再び呼び起こします。当時は「考える習慣」がなく、空回りばかりしていましたが、今は頭の中にある歯車がうまく噛み合っている状態です。素晴らしい関係資産も増え、いまなら何でもできる。今の自分ならリアルに大きなことをできるに違いないと信じられるようになり、設定型の目標に向かって歩むよう決意できます。

●「キャリアアンカー論」と「プランドハプンスタンス論」

個人のキャリアを考えるうえでは、大きく分けて2つのアプローチがあります。「キャリアアンカー論」と「プランドハプンスタンス論」の2つです。

「計画された偶然性」という意味の『プランド・ハプンスタンス・セオリー』は、予期せぬ偶然の出来事にしっかりと対応し、その経験を積み重ねて自分のキャリアが形成される理論。「プランドハプンスタンス論」と呼ばれます。

反対に、自らキャリアゴールを設定し、能動的にゴールを目指して経験を積み重ねていくのが「キャリアアンカー論」です。

そして注目すべきはその割合です。調査によると、8割の人は「プランドハプンスタンス」的なアプローチで自己のキャリア形成を考えており、あとの2割が、「キャリアアンカー」的なアプローチをしているのです。

つまり、ほとんどの人は、確固とした自分のキャリアゴールを見据えたうえで自己研鑽を繰り返し、働く環境を自らの意志で選択するわけではなく、偶然によって身を置いた場所で努力し、仕事をしていくなかで自分のキャリアが肯定的に発展していくというスタイルをとっているのです。

つまり、「第2エリート」になる人は、会社に入ったときは「キャリアアンカー論」的なスタンスですが、現実に直面して転職を繰り返しているうちにキャリアアプローチの手法「プランドハプンスタンス論」的に変更しているのです。このようなことを「キャリアコンサルタント」は教えてくれません。あくまでも教科書的なアプローチ(キャリアアンカー論)を伝授するのがキャリアコンサルタントのミッションだからです。

前述したとおり、第2エリートは、出遅れを取り戻すために急激な成長曲線を描きます。出遅れを取り戻したあとも、加速した成長スピードは止まらないため、順風満帆でキャリア形成してきた本物のエリートをも抜かしていくのです。

さらに、第2エリートは、現時点で仕事でつらい思いをしている人、仕事に対して将来の不安を抱えている人の気持ちがよくわかります。若い時分に相応の苦労をしており、苦境をバネにして這い上がった過去があります。そして何より、8割の人が「プランドハプンスタンス論」的なアプローチでキャリア形成しているのです。これは一貫して「キャリアアンカー論」的に生きてきた、本物のエリートとの決定的な差です。

一般的なエリートは人生の袋小路に入ったことがないため、どこか近寄りがたく、お高くとまっているように見えます。その点、第2エリートは違います。仕事人生を送るほとんどの人と共感を持てるポジションをすでに得ているのです

●「山登りの人生」と「川下りの人生」

私はよく「山登りの人生」と「川下りの人生」の話を講演などで語ります。「川下りの人生」が「プランドハプンスタンス論」的。「山登りの人生」が「キャリアアンカー論」的と言えます。

「山登りの人生」は、山の頂上を見据えて一歩一歩登っていく人生です。山登りの人生はわかりやすく素敵ですが、自ら休もうと思えば休めるアプローチとも言えます。自分のやる気やモチベーションに左右されやすい生き方とも言えるでしょう。

反対に「川下りの人生」は、川の流れに身を委ねているので、休むことができません。しかし流されることがないよう、必死で流れを掴もうと舟をこいでいるうちに体力がついていきます。勝手に脳の基礎体力がついていき、ストレス耐性もアップしていきます。

人生はいろいろ。個人のキャリア形成もいろいろです。

「第2エリート」の生き方を、山登りと川下りを使って表現してみます。「第2エリート」になる人は、まず体力も装備もないのに大きな山を登ろうと試みます。しかし、すぐに途中でやめて別の山に目移りをしますが、自分に何が足りないのかわからないまま、自分には山登りは無理だと諦め、生活をするために仕方なく川下りをはじめます。山登りに憧れていた若者は川下りをバカにしていたのですが、意外に川下りもまた別の楽しさがあることを知り、のめり込んでいきます。激流に飲まれることなく必死で舟を操っているうちにドンドン体力がついていき、頭角を現していきます。川下りによって身に着いた体力やスキルは当然、山登りにも生かすことができます。それからでも遅くありません。川下りをやめ、再び山登りをチャレンジしても、次々と見事に大きな山を制覇し、自分だけの人生を謳歌できるようになっていく……。これが「第2エリート」の人生です。

1回きりの人生だから、自分の思うように生きたい、という方もいるでしょう。

しかし、予期せぬ偶然の出来事にきちっと対処していくことによってチャンスを自ら作り出し、自分のキャリアが形成されていった人のほうが多いのです。私もまさにそのような人生を歩んできました。

ここ数年、企業は採用難に見舞われており、優秀な人材を確保するのに苦しんでいます。就活をする学生たちが優位な状況がしばらく続いています。しかし、この状況は若者たちの人生において有利に働くかというと、決してそうではありません。

極端に売り手市場の学生側は、自分の実力以上の企業に就職することができる環境なのです。いっぽう企業側も、若者に離職されると、別の人を採用するのに再び大きなコストを支払わなければならなくなるため、手厚くサポートしようと躍起になります。

ですから若いうちからキャリアコンサルタントなどの研修を受けて、「キャリアアンカー論」などを真面目に勉強することになります。

しかし繰り返しますが、私は絶対達成のコンサルタントです。現実は甘くないことを知っています。

人も組織も、恵まれれば恵まれるほど「考える」という行為をしなくなります。苦難が迫ったときに、どう乗り越えようかと頭をフル回転させる経験を積むことができません。手厚くサポートされればされるほど、若者は勘違いを繰り返し、正しい「自分資産」を積み上げていくことができなくなるのです。

いつまでも「就職売り手市場」という状況は続かないでしょう。外部環境が変化したとき、若者たちは本当の実力を企業側に問われます。そのときになって手厚いサポートを受けられることなどありません。

たとえ1社目でうまくいかなくても、2社目で挫折を味わっても、まだまだ挽回することはできます。しかしタイミングを逃すと「青い鳥症候群」のまま年齢を重ねていくことになります。いつ「山登り」をやめ、「川下り」に転じるか。見極める時期が非常に大切になってくると思います。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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