時短のコツは「タイムマネジメント」ではなく「プロジェクトマネジメント」

この仕事は本当に必要なのか……?(写真:アフロ)

欧米諸国からの批判もあり、日本人の働き方を見直す動きは1980年代からすでにスタートしています。その中でも「労働時間の短縮=時短」は切実な課題であり、近年、日本政府も強く介入する姿勢をとってきています。

私たち経営コンサルタントも、その風潮を強く感じ取っています。特に、ホワイトカラーの生産性向上は急務。IT技術は劇的に進化しているにもかかわらず、日本企業の「業務効率化」「仕事の合理化」は遅々として進まないが現状です。

労働時間を短縮するうえで、世の中にはいろいろなテクニックが存在します。そのほとんどが「小手先のテクニック」です。「タイムマネジメント」の技術は、どうすれば短い時間で料理を作るのか? という発想だと捉えましょう。どのようなダンドリで準備し、どのような手順で調理すると、短い時間で美味しい料理ができるのか、という発想と似ています。

「タイムマネジメント」はとても重要な仕事術。工場で働いているわけではないホワイトカラーにとっては、この自己マネジメント術を知っているかどうかで仕事の生産性は変わってくることでしょう。

ただ、毎日21時、22時まで働いている人が、18時、19時ぐらいまでに仕事を終えられるテクニックかというと、そうではありません。「タイムマネジメント」の考え方だと、1時間の仕事が45分で終えられるようになったり、30分かかる作業が15分で処理できるようになる程度の話です。これを組み合わせることによって、10時間かかることが、7時間で終わりそうな気もするかもしれませんが、それは「机上の空論」です。

私は企業の現場に入ってコンサルティングをする身です。そのような小手先のテクニックだけで、ドラスティックに労働時間短縮が見込めるわけではありません。上司から依頼された作業を、タスクに分解して処理するだけの人であれば、これらの「タイムマネジメント」で時短は可能でしょう。しかし所詮「使われる人」の時間管理術です。「使われる人」ではなく、「使う人」の労働時間を短くしない限り、ホワイトカラー全体の生産性をアップさせることなどできません。

「使う人」が意識すべきことは「タイム」ではなく「プロジェクト」です。「プロジェクトマネジメント」のスキルがないと、本当の意味での時短は実現しないのです。

たとえば、2ヶ月に1回イベントを開催している組織があったとします。しかしそのイベントの集客が悪い。これまでは、営業の電話フォロー、ダイレクトメールの発送、ホームページでの告知などで集客してきたが、最近はレスポンスが悪くなってきた。そこでフェイスブックページを立ち上げて、集客のテコ入れをしようと考えました。この「フェイスブックページで集客する」が、ひとつのプロジェクト(大プロジェクト)とします。

「フェイスブックページで集客する」というプロジェクトが立ち上がると、やることは膨大に出てきます。この大プロジェクトを以下の2つの中プロジェクトに分解してみましょう。

1)フェイスブックページの作成

2)フェイスブックページの記事作成と記事のアップ

そもそも社内で「フェイスブックページ」の作り方を知っている人がいないのであれば、作成方法を勉強しなければなりません。どうすれば多くの人に見てもらえるフェイスブックページを作成できるだろうかと考えます。したがって「フェイスブックページの作成」という中プロジェクトの下に、「フェイスブックページの作成方法の習得」という小プロジェクトが立ち上がります。この小プロジェクトに、誰を充てるのか、どれぐらいの時間やコストをかけるのかという資源配分をしなければなりません。

実際に、勉強方法がわかれば、それらが細かいタスクとなり、あとは「タスク管理」の技術で処理されていくことになります。ここでようやく「タイムマネジメント」の手法が生きてくるのです。

2つ目の「フェイスブックページの記事作成と記事のアップ」という中プロジェクトは、けっこう複雑です。記事を書くのは誰なのか、どんなネタで記事を書くと閲覧件数が増えるのか。写真を載せたほうがいいのか。どんな文章を書くと読者を惹きつけられるのか。いろいろな疑問が出現します。そのため、しかるべきメンバーが集まってディスカッションしようという話になります。これがこの中プロジェクトの下レイヤーに出てくる小プロジェクト。では、そのディスカッションメンバーは誰がいいのか。どこの会議室でその議論をしようか。いつ、誰が会議室を予約するのか、というタスクが出てきます。

大プロジェクトの下に、複数の中プロジェクトがあらわれ、その下層にはさらに複数の小プロジェクトがあらわれます。これら小プロジェクトにぶら下がるのが、細かいタスクなのです。

先述したとおり「タイムマネジメント」の技術で時間を短くできるのは、細かく分解されたタスクであって、それらをいくら短くしても、プロジェクト全体が正しくマネジメントできていないのであれば、ほとんど意味がありません。これで、職場のワークライフバランスが実現することはないのです。

もしもフェイスブックページを作って記事をアップし続けても、イベント集客にそれほどの効力を発揮できないのであれば、「フェイスブックページで集客する」という大プロジェクト自体も必要ありません。

現場に入ってコンサルティングをしていると、このように、何のためにそのプロジェクトをしているのか。何のためにそんな情報システムを導入しているのか。何のためにその議論をしているのか。よくわからないケースを多々目にします。そんな状況で「時短」を声高に叫んでいても、いっこうに労働時間は短くなりません。

仕事の「やり方」ではなく、仕事の「あり方」が問われる時代だと私は考えています。特に「使う人」であるホワイトカラーの人たちは意識すべきでしょうね。