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「新しい働き方」の提唱に対する警鐘

横山信弘経営コラムニスト
カフェでパソコン開いて働ける人は一部の人だけである(写真:アフロ)

昨今、日本人は働きすぎ、日本の会社はルールでガチガチ、だから日本の職場は創造性に欠ける、だから日本の企業はiPhoneを創りだせない、だから日本からはマーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクのような偉大な起業家が現れない――といった、言いたい放題の記事が目立っています。

経済大国ドイツでは、仕事が残っていても休みをとるし、休日に仕事を入れることなど絶対にしない。勤勉と言われるドイツ人でさえこうなのだから日本人も見習おう的な記事もあります。だからもっと「新しい働き方」をしよう、「自由な働き方」をしよう、「現代の働き方」はこうでなくっちゃ、と言い出す人がいます。たとえそれが日本の社会に普及しても、オフィスで働くホワイトカラーに適用されるだけで、生産や物流、小売店舗でそのような働き方ができるかというと、できるわけがない。日中でもネットに繋げる環境で仕事をしている人だけが見る幻想です。

私は企業の現場に入り込んで目標を絶対達成させるコンサルタントです。このようなホワイトカラーエリート主義的保守勢力の考え方にはイライラします。ものづくり王国である日本を支えている人財はどのような人なのか。生産現場に従事している人たちを軽視するような「新しい働き方」の提唱には警鐘を鳴らしたい。

日本人の性格や思考パターンは、幼少のころからの学校教育の影響もあり、社会人になっていきなり拘束されない自由な大海原に投げ出されても、創造力を発揮することなどできるはずがない。まず、そういう根本的な知識があったうえで「さてどうするか」と考えないと、人を惑わすだけです。

そもそも、煙草を吸っている人がいて、煙草を吸わない人に「禁煙のコツ」を教えてもらっても、良いアイデアはもらえないことを覚えておきましょう。つまり、もともと自由で創造性の高い環境に身を置き、育ってきた外国人や成功者を見習っても、どうすればスティーブ・ジョブズのような自由奔放な発想ができるのかを知ることなどできないのです。

日本人の長時間労働は是正しなければなりません。しかしいろいろな制限、ルールを取っ払って自由にすればパフォーマンスが上がるかというと、そうではないのです。

普通、仕事のパフォーマンスを上げるためには適度な緊張感が必要です。これは「ヤーキーズ・ドットソンの法則」でも言われていること。会社のみならず、組織、チームにおいて理想的な空気は「締まった空気」であり、過小なストレスしかかからない「緩んだ空気」も、過剰なストレスが与えられる「締めつけられた空気」もよくありません。

一般的な企業は、身だしなみ(服装や髪型)や業務時間、働く場所に関する統一ルールが設定されています。そこで働く人たちのパフォーマンスが上がるように、適度な緊張感を与えるためです。働く場所を自由にしてもよい、働く時間を自由にしてもよい、という方針は、身だしなみ、時間、場所といった制限事項がなくなるため、かなり緊張感のない「職場」で働くことになります。

ましてや都合のいい言説を鵜呑みにし、「残った仕事を明日にまわしてもいい」「そのほうが創造的な仕事の仕方だ」「現代の働き方は、もっと自由でいいはずだ」などと唱えるのは稚拙としか言いようがない。

空間的にも時間的にも、あらゆる面でルールや制限がないほうがうまくいく、という人は、自分自身で「締まった空気」を作ることができる人です。自分を律することができる人、つまり適度に自己マネジメントができる人に限られます。しかしそういう人は「組織論2・6・2の法則」からすると、上位2割ぐらいしかいないのが実態です。いまだに「先送りの習慣を治す方法」「すぐやる人になるにはどうすればいいか」といった書籍がベストセラーになる時代ですから、ほとんどの日本人は「自由すぎる環境」に身を置くことは副作用を得るだけと言えるでしょう。

繰り返しますが、日本人の長時間労働は是正しなければならない。しかし適度に拘束された環境で仕事をしたほうがパフォーマンスはアップするのです。都合のいい欧米の習慣を取り入れ、成功した会社のみを見習おうとするのは危険と言えるでしょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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