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レジリエンス(折れない心)とは何か? レジリエンスを鍛えるポイントとは?

横山信弘経営コラムニスト

レジリエンス(折れない心)とは何か?

昨今、「レジリエンス」という言葉が取り沙汰されています。「折れない心」「逆境を跳ね返す力」「精神的回復力」「抵抗力」「耐久力」……などという意味のようです。

「レジリエンス」とは、もともと「ストレス」と同じく物理学用語であったようで、いわゆるストレスに打ち勝つ能力のことです。それでは、この「レジリエンス」――折れない心をどのように身につけたらよいのか? この能力をどう鍛えたらよいのか? 考えてみます。

私は現場に入って企業の目標予算を絶対達成させるコンサルタントです。当たり前ですが、簡単ではありません。調査を繰り返し、仮説を立てて実行しても、その通りにならないことがたくさんあります。しかしそれでも前を向いて目標が達成するまで突き進んでいかなければなりません。私自身もそうですが、クライアント企業の従業員の方々にも、簡単には折れない心、逆境を跳ね返す力が不可欠です。

「レジリエンス」という表現を、「ストレス耐性」という言葉に置き換えてみます。そしてこのストレスに対する耐性を鍛えることで「レジリエンス」が身につくと考えてみましょう。

ストレスの定義にはいろいろな種類があり、そのレベルも要因や状況によってかなり異なります。私はストレスを「慢性ストレス」「急性ストレス」の2種類にわけ、それぞれのレベル感を「10段階」と定義すると、ストレスをコントロールしやすくなる、と考えています。つまり「レジリエンス」が鍛えられるというわけです。

産まれたときから「慢性ストレス」を抱えている、という状況は考えにくい。したがって「慢性ストレス」というのは、長期間において強いストレスにさらされ、大きくなると普段なら何でもない問題がとてつもなく大きな難題に思えている状態のことと定義します。

「急性ストレス」は、まさにその都度やってくるストレスのことを指しています。脳の神経細胞・ニューロンの活動に影響を及ぼす、すべての事柄はストレスです。たとえ「映画を観て感動する」という楽しい体験にも、「冷蔵庫からビールをとる」というなんでもない動作にも、実のところストレスはかかっているのです。その「レベル感」が違うだけ、ということを覚えておきましょう。

人間が何らかの活動を起こすにはニューロンの発火が必要で、そのたびにニューロンは傷つき、消耗していきます。この修復作業が繰り返されることにより、ストレス耐性がアップします。つまり「レジリエンス」が鍛えられるのです。感染症を予防するために弱めた病原体でワクチンを打ち、体内に抗体を作ります。それと同じこと。ストレスを受けることによって、ストレスに強くなるのです。

ストレスを10段階のレベルで表現したとします。わかりやすくするため「慢性ストレス」のレベル例を1、5、10のみ書き出してみましょう。

<慢性ストレスのレベル例>

● レベル1 ……ほぼ正常。何事も前向きに受け止められる

● レベル5 ……体が少しだるい。たまに倦怠感を覚える

● レベル10 ……寝ている状態から体を起こすことも困難

次に「急性ストレス」のレベル例を1、5、10のみ書き出してみましょう。

<急性ストレスのレベル例>

● レベル1 ……歩く。物を手でとる。紙を切る、等

● レベル5 ……過去と比較して高い目標、プレッシャーをかけられる、等

● レベル10 ……近親者の死別、天災による家屋の崩壊、等

そして実際に体が受け取るストレスレベルを、「慢性ストレス」×「急性ストレス」のかけ算で数値化できると考えてみます。

「慢性ストレス」が【7】の状態の人が、【5】レベルの「急性ストレス」を受けたときは、【35】のストレスをかけられたと体が感じるでしょう。ですから、「これ以上やってられるか! このままだと会社に殺されてしまう!」という反応を示します。

反対に、「慢性ストレス」が【1】の状態の人が、【5】レベルの「急性ストレス」を受けたときは、せいぜい【5】レベルのストレスとしか受け止めません。なので「やってやろうじゃないの! それぐらい高い目標を持たないと楽しくないですし」という反応になります。急性ストレスのレベルが同じ【5】でも、反応が異なるのは「慢性ストレス」の状況レベルが異なるからです。

「慢性ストレス」がハイレベルにある人は、なんでもない問題でさえ難題だと受け止めます。したがって、ちょっとしたストレスでも、かなり極端な反応を示します。物事を「1」か「ゼロ」か、「白」か「黒」かの、「二元論者」に近づいていってしまうのです。

ひどい場合は、1か2程度の「急性ストレス」しか受け止められなくなり、事実上、生活や仕事が困難になっていきます。家から外へ出ることも、食事をすることさえも「キツイ」「厳しい」という生理的な反応を示します。

ストレス耐性は、生まれながらにしてその度合いは異なるものです。すべての人が同じではありません。しかし、幼いころから1や2レベルの「急性ストレス」でさえ対応困難だ、という人は極めて稀です。小さなストレスをかけていくことによって、ストレスに耐え得る抗体を作っていくわけですから、ちょっとしたストレスに臆病になっていては、耐性がドンドン落ちていきます。

暑い日に、ずっとクーラーのきいた室内に閉じこもってばかりいると、体のストレス耐性はアップしていきません。15分でも30分でも外へ出て散歩したり、体を動かすことによって体は鍛えられていきます。体も脳も同じ、ストレスをかけ、意図的に修復させることで、回復能力を身に着けていくものです。高い目標を掲げ、常に挑戦していくのです。人間は本来、目の前に困難なことがあればあるほど乗り越えようと努力し、そして成長し、幸福感を覚えるのです。

ストレスを乗り越えた記憶が、人生を豊かにする「知恵」に転化していくわけですから、過大な「慢性ストレス」を背負わないよう、小さなストレスワクチンを打ち続けるようにしたいですね。人生の荒波にさらわれないようにするには、それなりの折れない心、逆境を跳ね返す力(レジリエンス)は誰にでも必要なことですから。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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