「パソコンでのメモ」を勧めない2つの理由

(写真:アフロ)

人の話を聞きながら、メモをとれるのか?

私はセミナーや講演をする際、必ず受講者の皆さんに「メモ」をとるように伝えます。しかしパソコンでメモをとることは禁じています。パソコンでのメモを勧めない理由は以下の2つです。

1.脳の思考系が鍛えられない(思考のインフラが構築されない)

2.話の論点・本質を見抜く力が養われない

セミナー中にメモをとってもらうことで、そもそも「人の話を聞きながら、メモをとれるのか?」――その習慣があるかどうかを自覚してもらうこと、そして「人の話を聞きながら、メモをとる」ためには、どのようなプロセスが不可欠なのか、を知ってもらうことができます。

まず「人の話を聞きながら、メモをとる」以前に、そもそもメモをとる習慣があるかについて考えてみましょう。

習慣とは、無意識のうちにできることを指します。意識することなくメモをとる習慣がある人が、さらに効果的なメモのとり方を知ろうとするのはいいことです。しかしメモの習慣がない人は、まずメモをとる習慣を身に着けることが第一です。

「思考のインフラ」とは?

技能を手に入れる前に、下地となるインフラが整っているかについて意識している人は少ないと思います。私は「思考のインフラ」と呼んでいます。それでは「思考のインフラ」――習慣はどのようにしてできるのでしょうか?

習慣は過去の体験の「インパクト×回数」でできていると覚えましょう。脳内には、神経細胞によってできたネットワークが張り巡らされています。無意識のうちに行動できるようになるには、そのネットワーク間をストレスなく電気信号が伝達するよう、インフラが整備されている必要があります。そして脳内ネットワーク上にインフラを構築するには、外部から大きな刺激を受けるか、同質の刺激を連続して受けるかしかありません。つまり「インパクト×回数」が必要なのです。

「メモをとる」行為に関しては、やはり「回数」。意識的にメモをとる回数を短期間のうちに増やします。そうすることで、無意識のうちにできる状態(無意識的有能状態)にすることができます。

なぜ同時に2つ以上のことを実行できないのか?

メモをとる習慣がない人は、最初から「メモのとり方」など気にしてはいけません。「質」よりも「量」。とにかく場数を増やすことが大切です。「脳の焦点化の原則」からすれば、脳は同時に2つ以上のことに焦点を合わせることができません。つまりメモる習慣がない人が、メモのとり方を意識しながらメモをとることはできない、ということです。

さらに人の話を聞きながらメモをとることは、一段と難易度が高く、習慣がない人は「メモをとっていると話に集中できなくなる」ことでしょう。前述したとおり、人の話に意識を傾けていると、メモすることに焦点を合わせることができなくなるからです。

メモの習慣がない人が陥りやすいのが、「パソコンを使ってメモをとる」行為です。メモデータを後から再利用するため、意図的にパソコンで記述する、という方もいるでしょう。しかしお勧めはしません。たとえ最終的にパソコンで記述するとしても、まずは紙とペンでメモをするプロセスを経てからにしたほうが良いと私は思います。

なぜメモの習慣がない人でも、パソコンを使うと可能なのか? それは話を聞くスピードと、キーボードで打ち込むスピードが近いからです。ブラインドタッチで打つことができる人は、それほどストレスを感じることなくパソコンでメモをとることができるでしょう。

しかし、キーボードを使ってメモをしていると文章をまとめる力がつきません。会議議事録をとる、原稿を口述筆記する、というのならともかく、耳に入ってきたものをそのままテキストデータに変換してアウトプットしていると、思考を働かせる余裕がありません。メモを残すことができてもメモの内容が頭に入ってこないのです。

「10」のインプットがあったら、「10」すべてのアウトプットをすべきではない。インプットされた「10」のデータを頭の中で整理し、「2」とか「3」に絞り込んでアウトプットすべきなのです。そうでないと、話の論点や本質を見抜く力がついていきません。

メモの習慣をつけるには「思考の多層インフラ」が必要

実のところ、紙とペンを使い、人の話を聞きながらメモをとるには、

1.話を聞く

2.話の内容を理解する

3.話の内容を理解したうえで短い文章にまとめる

という「思考のインフラ」が必要です。つまり、「話を聞いてメモをとる習慣」といっても、何層ものインフラが整備されていないとできないものなのです。

これらを同時に実行するのは簡単ではありませんが、「話を聞きながらメモをとる習慣」を若い頃から体得している人は当然、脳の「思考系」が鍛えられています。脳の基礎体力がつき、頭の回転が速くなるのです。さらに、人の話を聞きながら効果的な図柄を挿入したり、ポイントを整理して箇条書きまでできるようになれば、相当なスキルです。5~6種類の「思考のインフラ」が組み合わされないと実現できないからです。

ついついパソコンでメモをとりたくなる人は、単純にメモをとる「思考のインフラ」がないからです。面倒であっても場数を増やし、紙でメモをとるインフラを脳内に構築していきましょう。何層もの「思考のインフラ」が構築されれば、他の技能もまたそのインフラの上に乗せることができるようになります。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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