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会話をゆがませない「メモの取り方」――「パラフレージング」

横山信弘経営コラムニスト

誰かと協力しながら、何らかの問題を解決したい、目標を達成させたい、としたとき、重要なことはお互いの話を噛み合わせることです。歯車にたとえるとわかりやすいでしょう。歯車が噛み合っていないと、動力を伝えることができません。それと同じことですね。

話が噛み合わない理由は、論点がずれることです。「ゆがみ度」の高い危険人物を特定し、そのような人と話をする場合は、事前に資料を作っておきましょう。手元に何もない状態で話すと、とても危険です。

(※相談相手にならない「危険人物」4つの特徴

部下:「社長、二次クレームの件数を減らすために、現在スタッフで毎朝ミーティングを実施し、それぞれの行動パターンをチェックしています。そこで……」

社長:「それよりも、そもそも二次クレームの件数は減ったのか?」

部下:「え?」

社長:「二次クレームを減らすことが目的だろう? 減ったのか?」

部下:「いや、ちょっと待ってください。まずは一次クレームが発生したあとの行動パターンを見直すために、現場のモニタリングをするという話になっていたはずです」

社長:「だいたいさ、この前もスタッフの接客態度を観察していて思ったんだよ。気遣いがないというか」

部下:「その話は前回も出ていましたが、まずは一次クレームが出たあとの初動スピードについて、ですね……」

社長:「どうして最近の若い子は、気配りができんのかね。親はどういう教育をしてきたんだ」

部下:「社長――」

このように、すぐに話の論点をずらす危険人物を相手にする場合は、手ぶらでコミュニケーションをとろうとしてはいけません。必ず、資料を手元に置き、そこに書かれている内容に沿って話を進めるのです。

目標を達成させるための「資料作成」の基本に書いたとおり、お互いの話を噛み合わせるために、「前提条件」や「仮説」、論拠となる「事実」を共有する必要があります。

「聞く理解」と「読む理解」は根本的に異なります。

言葉は発声と同時に消えてしまいます。相手の頭に記憶として残ったかどうか、そもそも正しく認知してもらったかどうかを、話し手はコントロールできません。しかも話している途中から、前述の「危険人物」はドンドン想像・空想を膨らませてしまう傾向があります。そのため手ぶらで話をすると、「相手がいま話したいこと」に論点がずれてしまう可能性が高まります。話が「あさっての方向」にずれたあと、元に戻すのも大変です。先ほど話をしたことが記憶に残っているかどうか疑わしいので、

「そもそも、どうしてこんな話題になったんだっけ?」

と質問され、その背景や前提まで再び話さなくてはならなくなります。「会話効率」をアップさせるためにも、正しい資料を準備して会話することです。

資料を使って会話する目的は、何らかの相談や、アドバイスをもらったうえで新たな意思決定をすることです。ここで必要になるのが「メモの取り方」です。ポイントは以下の2つ。

● 資料の上にメモをする

● メモの内容を相手に見せながら話す

相手の意見やアドバイスを、あらかじめ準備しておいた資料の上に書いていきます。そしてそのメモを相手に見せることです。会話の論点は資料にあるはずですから、相手がその場の思いつきで何かを話しはじめたら、論点がずれているわけですのでメモを書くことができなくなります。

「あなたは今、会話をゆがませていますよ」

というサインを送るためにも、相手に見せながらメモをとることが重要です。

部下:「この資料のように、スタッフの初動スピードは変わりつつあります」

社長:「なるほど……。しかし、Kさんだけは、まだ一次クレームの対応スピードが遅いな」

部下:「そうなんです。Kさんの意識改革が必要です」

社長:「わかった。じゃあKさんには、私から言っておくよ」

部下:「社長からKさんに言ってくださるんですね。それは心強いです。いつにしますか?」

社長:「うーん、そうだなァ……。じゃあ、明後日の夕方5時からでどうだろう」

部下:「かしこまりました。『明後日の、夕方の、5時から』ですね」

ここで、部下は「2月1日、17時から社長がKさんへ」と、資料の上にメモを取ります。社長は書き込んだそのメモを見ています。

部下:「ありがとうございます。それでは明後日の夕方5時ということですね。Kさんには社長から話があるとだけ伝えておきます」

社長:「う、うん。そうだな。……わかった」

このように、相談内容、改善事項を全部メモをとった後、この会話の中で決まったことをまとめて読み上げます。これを「パラフレージング」と呼びます。パラフレージングとは、適切な表現に言い換えて、相手にフィードバックすることです。

部下:「社長、それではまとめさせていただきます。決めたことは3つです。まず1つ目は、初動スピードの遅いKさんには明後日の夕方5時から社長が直接指導いただく。2つ目は二次クレーム発生後の報告先を一本化する。3つ目は――」

すべてメモに書いてあることを読みあげるので、相手は記憶をたどる必要がありません。危険人物は想像力が豊かな場合が多いですので、このような手段をとらないと、話している最中から空想をはじめ、さらに「そういえばアレってどうなったの?」と言いかねません。会話をゆがませず、話を正しく前に進めるためには、シンプルな資料の上にメモを取ったうえで、意思決定した内容をパラフレージングしてみましょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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