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「事実」を言うときは、できるかぎり「修飾語」を使うべきではない

横山信弘経営コラムニスト

話を正しく繋げるため、何らかの結論を導きだすためには、その前提となる論拠が「事実」であるかどうかはとても重要です。「事実」と「意見」は切り分けて話さなければ、話をこじらせる可能性があるからです。ところで、「事実」と「意見」とは、どう見分けるとよいのでしょうか?

「事実」とは、調査や実験によって客観的に確認できることであり、「意見」とは個人的な見解や推論のことで、その人の経験によって左右されることが多いと言えます。しかし「事実」と「意見」とを混同する人が多く、注意が必要です。

たとえば、

「2014年12月8日現在、日本の内閣総理大臣は安倍晋三です」

というのは「事実」です。個人の見解や推論ではありません。しかしながら、

「安倍首相は歴史に名を残す日本の首相だ」

「安倍首相が推し進めたアベノミクスは成功したとは言えない」」

これらは「意見」です。「安倍首相の名が歴史に残ることは確実で、これは事実だ!」もしくは「アベノミクスが失敗したのは明らかだ。事実以外の何物でもない」と、声高に主張しても、「事実」と「意見」とに区分すると「意見」なのです。

上記2つの文章は、個人の見解であり推論です。ですから、これらを立証する「事実」でもって補足する必要があります。簡単に「事実」と「意見」とを区別するには、「修飾語」の存在を確認することです。

「AKB48の38枚目のシングル『希望的リフレイン』が113万枚を売り上げた」

という文章は「事実」です。

「音楽史上最高のアイドルグループ、AKB48の38枚目のシングル『希望的リフレイン』が113万枚を売り上げた」

という文章は「意見」です。AKB48というアイドルグループという名詞に「音楽史上最高の」という修飾語がついているからです。この「意見」を立証するためには、「デビューから8年10ヶ月でシングル3000万枚を突破したAKB48のこの記録は、B’zの14年7ヶ月を5年9ヶ月も短縮し、史上最速である」という「事実」をもって立証しなければなりません。(この事実をもってしても意見は意見のままであり、意見の正当性を主張するために補う、ということである)

また、「意見」を述べる場合は、意見だとわかる「述語」を文章の最後につけ、その「主語」も省略せずにつけると、わかりやすくなります。「私は~と思う」「私は~だと判断した」「私たちは~という見解だ」という表現を付加する、ということです。

「”SEKAI NO OWARI(セカオワ)”の曲は中高生に人気がある」

この文章を「意見」だとわかりやすくするためには、

「”SEKAI NO OWARI(セカオワ)”の曲は中高生に人気があると、私は思う」

と変えるのです。責任の所在を曖昧にしたい人は、「述語」を「れる/られる」に変化させます。

「”SEKAI NO OWARI(セカオワ)”の曲は中高生に人気がある、と思われる」

問題解決するときのコミュニケ―ションも、同様です。

「来期の目標を達成させるためには、最初に市場リサーチを行うことが手順として最良だ」

という表現も、このままだと「事実」のようなニュアンスになってしまい、補足するための論拠を示さなくなってしまいます。そこで、

「来期の目標を達成させるためには、最初に市場リサーチを行うことが手順として最良だと私は考えている」

としたほうが「意見」だと発言者自身も認識できます。こうすることで、なぜそのように「私は考える」のか、その論拠としての「事実」を伝えなければと考え、それを補うため話が繋がっていきます。

「なぜならこれまでの3年間、開発部の主観によって商品を市場に投入してきたため、3期連続で売上が5%以上落ち続けているからだ」

もしも、「れる/られる」で語尾をぼやかすと、

「来期の目標を達成させるためには、最初に市場リサーチを行うことが手順として最良だと考えられる」

このように評論家的なニュアンスとなり、言葉に説得力が宿らなくなります。「事実」と「意見」とを区別するためには、修飾語の使い方に敏感になったほうがよいと、私は思います。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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