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「どういうつもり?」を言うことで、話は噛み合いやすくなる

横山信弘経営コラムニスト

話が噛み合わない人はどこにでもいます。何かの問題を解決するためのコミュニケーションのときはもちろん、雑談をしているときでも、話が噛み合わないと残念な気持ちになります。「噛み合わない」は、歯車でイメージするとわかりやすいでしょう。歯車が噛み合うためのポイントは3つあります。

● 歯車が正しく回転するか

● 歯車の回転の方向が合っているか

● 歯車の回転軸の向きが合っているか

さらに、歯車の回転スピードなども要素に加えたいですが、普通に「話が噛み合う」というレベルで考えるなら、上記のポイント3つで十分だと思います。

まず「歯車が正しく回転するか」について解説します。そもそも滑りが悪ければ、歯車は回転しません。つまり滑らかに回転するための「潤滑油」が、定期的に差されているか、ということです。お互い尊重し合える仲になっていないと、話を持ちかけられても、何も考えず(頭が回転することなく)に否定的な態度になってしまいます。要するに「聞き耳を持たない」という態度です。

「困ったときだけ話を持ちかけられても、聞く耳、持てないよ」

と言われてしまうのは、定期的に「潤滑油」を差していないからでしょう。関係がギクシャクしているのであれば、当然、歯車そのものが回りません。

次に「歯車の回転の方向が合っているか」です。これは「前提条件」の話です。「前提条件」としては、

1)スタンス

2)知識

……の2種類があります。今回は「スタンス」のみを解説していきます。これからする話は、そもそも「助言をしたい」のか、「意見を聞きたい」のか、「一緒に問題を解決したい」のか、「情報共有だけしたい」のか、「単なる雑談をしたい」のか……といった、その「スタンス」です。この「スタンス」が合っていないと、話がうまく噛み合いません。

A:「フィギュアのNHK杯で羽生結弦選手が5位になったよな。何が問題だったんだろう」

B:「そうだったね。テレビを観てたけど、悔しそうだった」

A:「怪我の影響はない、って本人は言っていたから精神的なものなんだろうか」

B:「29日のフリーで挽回できるといいな」

A:「4回転トーループは、無理して取り入れなかったほうがよかったと思うんだけど、そう思わないか?」

B:「羽生選手の人気はスゴイよな。あれだけ注目されて演技するのは大変だと思う」

A:「だからさァ、聞いてるじゃんか」

B:「……は?」

A:「羽生選手の演技で、何が問題だったんだろうって」

B:「え……そうなの?」

A:「そうだよ」

B:「だったら、はじめから、そう言えよ」

A:「はじめから、そう聞いてるって」

このAさんとBさんとの会話は、ありがちですよね。Aさんは「意見を聞きたい」というスタンスですが、Bさんは「とりとめのないお喋りをしたい」というスタンスですから、話が噛み合わないのです。次の夫と妻との会話を読んでみてください。

妻:「お隣のお婆ちゃん、またゴミを出す時間、間違えてるの。何度も言ってるんだけど、なかなかご理解してもらえないわ」

夫:「俺は無理だよ」

妻:「……は?」

夫:「最近、ホント仕事が立て込んでるんだ。毎晩ヘトヘトで帰ってきてるんだ。わかってるだろう」

妻:「な、何の話?」

夫:「何でもかんでも俺に頼るんじゃなくて、自分で考えてくれよ」

妻:「ちょっと……、さっきから何を言ってんの?」

夫:「俺に今からそのお婆さんのところへ行って、説得してくれと言ってるんだろう?」

妻:「はァ?」

夫:「違うのか」

妻:「誰もそんなこと言ってないでしょ」

夫:「……え」

妻:「お隣さんがゴミ出す時間を間違えてる、何度言っても聞いてくれない、ただ、それを言っただけよ」

夫:「なんだ……そうなのか」

いわゆる「早合点」のパターンです。妻は単なる「世間話」のつもりで話をしているのに、夫は「問題解決」を促されていると勘違いしています。妻と同じく「世間話」のスタンスで話を聞いていれば、「へえ、そうなんだ。ゴミを出す時間ぐらい覚えてくれたらいいんだけどな」と、話を合わすことができます。

営業とお客様とでもそうです。お客様が挨拶程度だと思って営業と会ってみたところ、相手から売り込みをされたら「しっくり」きません。雑談ならともかく、ビジネスで議論をしたり、交渉したりする場合は、この「スタンス」を明確にしてから話をはじめるべきでしょう。

「スタンス」は、「~のつもり」で考えればわかりやすいと言えます。「他愛もない雑談をするつもりでいる」「意見を求めるつもりでいる」「有益な情報を提供するつもりでいる」「商談を前に進めるために交渉するつもりでいる」「今日こそは意思決定してもらうつもりでいる」……という感じです。

会話の「ゆがみ度」が高い人に対しては、話しはじめる前に、どういうつもりで話をするのか軽く触れておくといいですね。

「単なる世間話なんだけどさ……」

「ちょっと意見を聞きたいんだけど、いいかな」

「ひとつ、アドバイスさせてもらってもいい?」

ちょっとした一言で、お互いの「スタンス」が合う可能性は高まります。(もちろん、それでも合わない人はたくさんいますが)ビジネスの現場であれば、話の後のステップまで事前に提示するとよいでしょう。お互いの「スタンス」をさらに明確にさせることができます。

「これから話すことは、来週の経営会議に議題として取り上げられることなので、真剣に聞いて意見を出してもらいたい。いいね」

いつも話が噛み合わない人、話がこじれる人は、ある程度、特定できるはずです。そのような人とは、「どういうつもり」で話をするのか、さりげなく触れておくことで妙なストレスを覚えなくてもいいでしょう。

3つの目の「歯車の回転軸の向きが合っているか」については、「雑談」でさえ、話が噛み合わない人の思考メカニズムを参照ください。話の「幹」「葉」「枝」をセンテンスでとらえず、ワードだけとらえてレスポンスを返してくるので、ワードを中心に話が捻じれていきます。話の「軸」が合わなくなるのです。

(※ 前提条件の「知識」に関しては深い考察が必要ですので、今後のコラムで解説していく予定です)

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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