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話が繋がらない「2つのパターン」を検証する

横山信弘経営コラムニスト

人と話をしているとき、何だか「話が繋がらない」と感じることはありませんか。私は現場に入ってコンサルティングをする身ですから、会話が正しく繋がらないと組織の問題が解決していきません。

この「話が繋がらない」というのは、

● 表面的に繋がらない

● 論理的に繋がらない

2つのパターンがあります。それぞれ、どのような状態なのかを例文を使って解説していきましょう。まずは「表面的に繋がらない」パターンです。先日も、ある企業の部長会議にオブザーバー参加しているときに、このようなやり取りがありました。部長が会議の冒頭、専務に向かって「経営会議で社長が仰っていたことを専務の口からみんなに伝えていただきたいのですが」と言ったのです。専務は「わかった」と二つ返事で引き受けました。

「この前の週末に読んだ本で、とても参考になることが書いてあった。AKB48とかのプロデュースをしている秋元康氏の本だ。どうやら秋元氏は計算高いように見えて、そうではなく、意外と場当たり的で無計画、その場のヒラメキや感覚を大事にしているようだ。我々、企業に勤める者はどうしても計画、計画と言ってしまい、自分の経験と勘に頼ることが最近めっきりと減ってきたようで私も……」

このあたりまで話したあと、部長が止めに入りました。

「専務、社長が経営会議で仰っていたことをみんなに伝えていただきたいのです。ほら、もっとコスト意識を持て、という話です」

このように指摘されても、専務は納得がいかないようです。(お前が話せというから話したのに、途中で私の話を遮るとは何事だ)と言わんばかりの表情をしていました。

文章だけを追っていると、こんなことがあるのだろうか、と思う方もいるでしょう。しかし、意識することなく、まるで関係のない話をし始める人はけっこういるのです。本人も知らないうちに話が「あさっての方向」――要するに、てんで見当違いな方向へずれていってしまうのです。多くの場合は、その時点で興味・関心があることを話したいがため、無意識のうちにその話をしてしまうのでしょう。問題なのは、話し手に悪気がないことです。聞き手よりも話し手のほうが地位が上だと指摘することが難しく大変です。本人はよかれと思って話していますから、この「捻じれ」現象を解決するのは困難です。

これが「表面的に繋がらない」パターンです。次に「論理的に繋がらない」パターンを解説します。表面的には繋がっているのですが、理屈が合わない、妥当性が乏しいと判断できるパターンです。雑談なら構いませんが、お互いに協力し合って何らかの問題を解決しようとするときに、とても困ります。

「社内で新しいプロジェクトを立ち上げたい。若手で誰か適任者はいないだろうか」

「最近の若い人はチャレンジ精神がないですからダメですよ。若手ではなく、ベテランから適任の人を選んだほうがいいと思います」

このやり取りは「表面的」には繋がっています。会話に違和感を覚える人は少ないことでしょう。しかり「論理的」に合っているかどうかというと別です。何らかの結論を導きだすためには、その前提となる論拠が「事実」であるかどうかが重要です。「事実」と「意見」は切り分けなければなりません。「事実」とは、調査や実験によって客観的に確認できることであり、「意見」とは個人的な見解のことで、その人の経験によって左右されることが多いと言えます。「事実」と「意見」を混同する人が多いので、注意が必要です。

先述の例でいうと、受け手の「最近の若い人はチャレンジ精神がない」は、明らかに「意見」です。この意見を導き出すにいたった事実を示さないと、この会話が「論理的に繋がっている」とは言えないのです。たとえば、

「当社の若手を30歳未満の20代とすると、対象は8人いる。過去、この8人に1人平均6ヶ月の期間、タスクフォース型のプロジェクトもしくは委員会を任せたが、全員がリスクを冒そうとせずに予定調和な運営しかされなかった。これまでに3度、チャンスを与えたが、ことごとく期待を裏切るような成果しか上がっていない。したがって、当社の若手はチャレンジ精神が欠如していると言わざるを得ず、これから立ち上げるプロジェクトチームを任せられるような適任者はいない」

……と応じられたら、「論理的に繋がっている」ように聞こえます。

事実は「数字」で表現することが重要で、しかも何らかの比較対象があると、なお「論拠」として意義深いものとなります。数字における比較がなく「高い/低い」「強い/弱い」「大きい/小さい」「多い/少ない」「高い/安い」……といった形容詞のみを使うと、多くの場合「意見」だと受け止めてよいでしょう。

「当社の商品は価格が高い」

という表現は意見です。

「当社の商品の価格は、性能が同じでも競合6社の平均価格『1万8000円』と比較して『2万1000円』と、平均『3000円』も高い」

という表現が事実です。

話が繋がらないパターンはいろいろありますが、今回は「表面的に繋がらない」パターンと「論理的に繋がらない」パターンを紹介しました。論理的かどうかを見極めるには訓練が必要です。常日ごろからロジカル思考を鍛えておきたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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