現代のオフィスでよく見る「異様な光景」
私は現場に入って、目標を絶対達成させるコンサルタントです。目標を達成させるためには、以下の2つの事柄を突き詰める必要があります。
● 目標達成に関係のある活動量を増やす
● 目標達成に関係のない活動量を減らす
仕事と生活の調和「ワークライフバランス」が求められる昨今、上記の事柄は高次元なレベルで求められます。限られた労働時間で成果を出す必要があるからです。いつも私はコラムやセミナーで「目標達成に関係のある活動」とは何なのかを発信していますので、今回は特に「目標達成に関係のない活動」とは何か、について考えたいと思います。
著書「脱会議」に書いたとおり、「無駄な会議」などは企業の「目標達成に関係のない活動」の筆頭と言えます。業績が悪い会社ほど会議が長く、資料が多い。特に人件費の高い幹部や中間管理職がダラダラと長時間、会議に明け暮れていると組織の「空気」はとても悪くなっていきます。
無駄な会議、無駄な資料作り……等はとてもわかりやすい例でしょう。それ以外で、私がここ数年、とりわけ気になっているのが、「パソコンでの作業」です。私は以前、IT企業にいたので、当時パソコンの前で仕事をすることに違和感を覚えたことがありませんでした。オフィスにいるほぼ全員が、パソコンの前に座ってせわしくキーボードを叩く姿が日常の光景でした。
しかし経営コンサルタントとなって10年。かぞえきれないほどの企業のオフィスに出入りし、現場で仕事をしていて思うのが、IT企業でもないのに、オフィスワーカーのほとんどがパソコンの前に座って仕事をしている事実です。純粋に、「パソコンの前でそんなに仕事をすることがあるのか?」と突っ込みたくなることがあります。
ある企業へ行ったとき、デスクでぼーっとしている若者を見ました。声をかけると、このような返事がありました。
「3日前に入社したものですから、まだパソコンが割り当てられていません。それを待っているんです」
私はそれを聞き、「だから?」と言いました。何時間もずーっと何もせず座っているので、放っておいてよいのか、と純粋に思いました。ところが周囲の人も「パソコンがないんじゃ、しょうがないよね」という反応です。何だかおかしな気分になりました。パソコンがないと仕事をしなくていいのか、と。
総務部であろうが、企画部であろうが、営業部であろうが、職種を問わず、どんな企業でもオフィスワーカーたちは、みんなパソコンの前に座って「何か」をしています。その「何か」とは一体なんなのかがわかりませんが、気を付けたいのは、
パソコンで「何か」をしていると、仕事をした「気分」になる。
ということです。
オフィスワーカーにパソコンが必要なのはわかりますが、そんなに1日中、パソコンの前に座って仕事をすることがあるのだろうかと思います。パソコンがないほうが、もっと労働時間が短くなるのではないか。もっと人が少なくて済むのではないか。もっと組織内コミュニケーションが活性化するのではないか、と思うのです。
ちなみに私は日中、どこかの企業でコンサルティングをするか、講演や研修をしている日がほとんどです。ホワイトボードを使って話し、全員に手書きのメモをとってもらいながら議論するというスタイルをしています。ですからパソコンは使用しません。コンサルティングセッションが終わってから、短い時間で日々送られてくるメールの処理をし、移動時間などで業務処理、コラムやメルマガの執筆をしています。
ところが、私もたまにオフィスに1日いると、ずーっとパソコンの前に座っています。そこで「何か」をしているのです。もちろん何か仕事に関わることをしているのですが、後で振り返ってみると、何をしたのか思い出せないようなことばかりだったりします。サボっているつもりはないのですが、おそらくその「何か」をしなかったとしても、困ることではないでしょう。
パソコンの前にいるから、この得体の知れない「何か」が生まれてくるのではないか。パソコンが半日故障しても大幅に作業が遅延するわけでもない人は、特にその傾向が強いと言えるでしょう。急に体調を崩して休んでも、職場にまったく迷惑がかからなかったという人はいませんか? それだとちょっと残念な気持ちになりますね。それと同じです。
「IT断食」という言葉もあります。オフィスワーカーのほとんどが、一日中パソコンの前で「何か」をしている事実に、違和感を持ち始めている経営者は増えているのです。「歩きスマホ」をする人に「歩いているときまで、スマホを見なくちゃいけない理由がわからない」と疑問を投げかける人がいるように、オフィスワーカーに向かっても、「そんなに一日中パソコンの前でやることがあるか?」と疑問を持つ人がいてもいいと私は思います。