超集中状態「ゾーン」に入る方法
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。「絶対に結果を出せ!」「最後まで諦めるな!」「念ずれば叶う!」といった精神論はいっさい言いません。目標の未達成リスクを回避するための戦略・戦術を立案し、確実にPDCAサイクルを回すという、ごくシンプルなやり方をとっています。コンサルティングの特徴としては、自分で宣言した行動指標は必ず「ロック」してもらう、というもの。
「時間がなくてできませんでした」「申し訳ありません。まだやってません」といった言い訳はいっさい受け付けません。「空気」で人を動かすに書いたとおり、そのような「場の空気」を作り、決めた行動指標は絶対にやり切ってもらいます。「ブラジルワールドカップで優勝しろ」とか「今日じゅうにAKB48のメンバー全員と握手してこい」とか、めちゃくちゃな行動を宣言しているわけではありません。宣言する指標は本人であるし、しかも「確かに、目標の未達成を回避するためには、それぐらいはやらないといけない」と、組織の誰もが納得するような内容です。したがって、できない理由はありません。
ところが、これまで何をするにしても「やり切る習慣」がない人は、宣言した行動指標をやり切るための「コツ」がわからない場合が多い。ですから、行動を始める前は「やり切れる」と思っても、途中で「やり切れない」とあきらめてしまうのです。やり切るための「コツ」は、いろいろなものがありますが、多くの場合「時間配分」です。場当たり的に行動していると、時間配分を正しく調整できず、「想定外のことが起こって時間がなくなった」と言い訳をするのです。
想定外のことが起こることなど日常茶飯事です。それぐらいのことは予想できなければなりません。つまり想定外ではなく、多くの場合「想定内」のはずです。また、たとえ想定外のことがあっても、簡単に「やり切る」ことをあきらめてはいけません。
今回は「やり切る」習慣を身に着けるために、何度も味わうであろう「ゾーンに入る」方法について、解説します。極端に追い込まれたり、プレッシャーを感じるとき、人間はフロー状態になります。心理学者のチクセントミハイによって名付けられ、これを俗に「ゾーンに入る」と呼びます。日本では人気漫画「黒子のバスケ」の作中でよく描かれ、この言葉も有名となりました。
さて「ゾーンに入る」とは、どういう状態のことでしょうか?
●きわめて高い集中力を発揮している「研ぎ澄まされている感覚」を味わう
●時間が止まったかのような「時間感覚」の歪みを覚える
●陶酔状態に陥り、恍惚感、多幸感を抱く
●痛みや苦しみ、ストレスから解放され、感情のコントロールができる
●きわめて短い時間の中で適切な判断ができる
それではなぜ、このような心理現象を味わうのでしょうか?
●神経伝達物質「エンドルフィン」が分泌し、ストレスの鎮痛作用が働く
●脳の「回転数」が極限までアップすることで、「心理的時間」が異常に長くなる
自分に強烈なプレッシャーをかけることで脳のブースターが働き、極限まで集中することができるということです。(※漫画「黒子のバスケ」での「ゾーン」は、超人的な能力を爆発させている状態として描かれています)
「あと1時間で5枚の見積り資料を作成しなければならない」
「あと8分で駅に着かないと、電車に間に合わない」
「午前中に6社に電話をしなければならない」
「あと2日で24件、新規のお客様をまわらないといけない」
……など等。
スポーツの世界だけでなく、ビジネスの現場においても、追い込まれることで「ゾーンに入る」ことができます。まさに「明鏡止水」。邪念がなく、澄み渡って落ち着いた心の状態になりますから、強い幸福感さえ覚えます。これは、脳内神経伝達物質「エンドルフィン」が分泌されることによる影響です。恍惚感、多幸感を一時的に味わうのです。
理不尽なプレッシャーはいけませんが、過去にとらわれない、自分や周りが「できる」「やれる」と感じた行動を宣言して「ロック」しましょう。そして逃げることなく、やり切るのです。「ゾーン」に入ることで、脳の基礎体力が上がっていきます。ストレス耐性がアップし、心の免疫力がついていきます。状況判断能力を鍛えることができるため、意思決定力が向上するのです。
それでは最後に、どのようにすれば「ゾーンに入る」ことができるのかを簡単に書きます。
■ 短い期限を設定し、行動を「ロック」する
■「ロック」した行動を公表する。
過去にやったこともないような行動をロックし、短い時間の中で脳の基本回転数を極限まで引き上げることでゾーンに入ります。思考ノイズが入ってきたら、まだゾーンに入っていません。脳に雑音が入らず、感覚が研ぎ澄まされてきたら、ゾーンに入っていると捉えてもいいでしょう。軽い恍惚感を覚えます。やり切ったうえで得られる「達成感」が最大の報酬だ、という気持ちを持つことが重要ですね。
【参考記事】