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「言い訳ばかりの人」がスター社員になる根拠

横山信弘経営コラムニスト
脳のブースターが働いて「言い訳ロケット」が発射される……

「言い訳ばかりの人」は頭の回転が速い

私は営業のコンサルティングをすることが本業です。研修や講演もしますが、現場に入って組織改革を担うことがメインの仕事です。しかも「絶対達成」がスローガン。現場の営業が積極的にやりたがらないことも、率先してやってもらうよう仕向けます。

そういうとき、必ず出てくるのが「言い訳」です。大企業であろうが、中小企業だろうが、どのような業界でも、営業はやたらと言い訳を口にします。次から次へと新しい言い訳を開発し、「できない理由」「やらない理由」を我々に披露してくれます。

以前は「言い訳」ばかりされると、苛立つことも多かったのですが、最近はそれほど嫌悪しなくなってきました。なぜなら、言い訳をする人は「見込み」があると感じるにようになったからです。「まさかそう来るとは思わなかった」というような、芸術的な言い訳をする人もいて、その表現力に舌を巻くこともしばしばあります。

「2週間前の会議でやると言ったことが、どうしてまだできていないんだ?」

たとえばこのようなことを上司から指摘されたとします。すると「言い訳アーティスト」たちは無意識のうちに脳のブースターを働かせます。ものすごいスピードでこの2週間にあったことを想起し、会議では「やる」とみずから言ったものの、今もまだできていない正当な理由はないか、この期間に起こった出来事の断片を繋ぎ合わせ、何とか妥当性のある表現を創造しようと試みるのです。

「確かに、私は2週間前の会議で、やる、とお約束いたしました。あのときは私も絶対にやり切ろうという気持ちだったのです。しかしながら、中国出張から戻ってきた今週月曜日、パソコンを開けると雑務が山積みであることを思い知らされるのです。そのきっかけになったのが、課長が先日、導入を決めたグループウェアのシステムでした。あのシステムのおかげで、私の処理しなければならない作業がどれほど多いかを教えてくれました。確かに自分自身が会議の場で、やる、と宣言したことを先送りしたわけですが、いずれにしても、この打合せの後、すぐにでも着手し、終わり次第、お知らせいたしますので……」

「言い訳アーティスト」たちのスピード感

先述したとおり「言い訳アーティスト」の脳にはブースターがついています。話している途中から、次々に「自分を正当化する表現」を編み出しては披露するのです。恐ろしいほどの「すり替え」「つじつま合わせ」のスピード感は、聞いていて恍惚としてきます。

「言い訳」のほとんどは準備なしに表現する「即興芸」です。現に起きてしまった行動や状態にうまく理由をつけて説明をする。これを意味の偽造……「作話」と呼びます。上司からすると厄介な存在でも、別の角度から見ると「言い訳アーティスト」は優れたストーリーテラーとも言えるでしょう。

私は、このような「言い訳アーティスト」をコンサルティング先で見つけると、狙い撃ちして行動を変えさせるようにします。機転が働くということは、見込みのある証拠。「言い訳エネルギー」を別の方向へ向けさせることにより、スター社員に化ける可能性も秘めているのです。

見込みがない人は、言い訳さえできない。

問題なのは「言い訳ばかりする人」ではなく「言い訳さえできない人」。「謝ってばかりいる人」です。

「2週間前の会議でやると言ったことが、どうしてまだできていないんだ?」

と上司から指摘され、何も言い訳せず「ごめんなさい」「申し訳ありません」と謝ったりする人がいます。1回や2回ならともかく、いつもいつも謝られると、上司は「言い訳のひとつでもしてくれ」という気分になってきます。

「謝ってもダメだ。以前もこういうことがあっただろう? 期限内にできないのならどうして私に相談しないんだ?」

このように詰め寄られても、なぜそれをしなかったのか理由が言えません。

「本当に申し訳ありません。次回から気をつけます」

相手に「言い訳」をされると、怒っている側はいったん感情がせき止められます。相手が言っていることの整合性を吟味しようとするからです。ところが「言い訳」さえないと、感情の置き場に困ります。負の感情が増幅してしまうのは、そのせいです。

「前もそう言ったじゃないか。聞き飽きたわ! 私はどうしてできなかったのかと聞いてるんだよ。言え! どうしてだっ!」

……と、よけいにヒートアップしてしまいます。感情の舵取りがうまくいかなくなっていきます。

「謝ってばかりいる人」は、脳のブースターが働かなくなっている可能性があります。体や心のバランスを崩しているのかもしれません。そのような状態なのに、責めたり、怒鳴りつけたりしては、状態を悪化させるだけです。謝ってばかりの人、泣きだしてしまう人を見ていると、上司は感情の置き場に困るでしょうが、相手は頭がうまく回転しない状態に陥っている、と受け止めたほうがよいと思います。

「言い訳アーティスト」と話していると疲れてくるので、煙たがる人が多いでしょうが、先述したとおりスター社員に化けることもありますので、上司は「謝ってばかりいる人」より、見込みのある「言い訳ばかりする人」に立ち向かっていきましょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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