「働き方改革」後の時代を先取りする3つの事例

(写真:アフロ)

「働き方改革実現会議」での会合が進んでいるようですが、まだ「雇い方改革」の段階。その後に待っているのは、ほんとうの意味での「働き手改革」。果たしてどうなるのか。3つの事例をあげて先取りしてみました。

働き方改革は《日本経済を成長させる》ため

日本経済は、1995年にGDP(国内総生産)が500兆円を超えてから20年間、ほぼ横ばいに推移してきました。同じ20年間に主要先進国はどうなのでしょうか。

国際通貨基金(IMF)の公表データ(2017年1月)を元に振り返って見ましょう。各国の1995年名目GDPを100%として、20年間の推移をグラフにして重ね合わせてみました。

主要国の名目GDPの推移
主要国の名目GDPの推移

アメリカ・カナダ・イギリスは220%~240%に、フランス・イタリア・ドイツは160%~180%に成長しています。

日本だけが、完全に出遅れた状態です。GDPの側面だけではありますが、日本経済が停滞し、景気が低迷してきたのことは、ほぼ国民すべてが知っています。

そういった中で、政府は「ニッポン1億総活躍プラン」(2016年6月閣議決定)で、2020年の名目GDP を600兆円とする目標を掲げました。

この目標はグラフで言えば120%であり、まだまだ水をあけられています。

働き方改革と雇い方改革

GDPを高めるためには、就業者数(2016年11月、約6450万人)の増加と、労働生産性(2015年度、784万円)の上昇が必要となります(2016年10月27日記事「時代の変わり目 『働き方改革』で雇用が柔軟になると、企業と社員はこう変わる」参照)。

政府は、「金融政策・財政政策・成長戦略」(三本の矢、2013年)で労働生産性の上昇を軸とした政策から、「強い経済・子育て支援・社会保障」(新・三本の矢、2015年)で就業者数の上昇を軸とした政策へと、展開してきました。

そして2016年9月から、『働き方改革実現会議』により、副業や兼業の推進・非正規の処遇全般の改善・同一賃金同一労働・残業時間上限などの議論を始めました。

これまでの経済改革では、その対象が企業、すなわち雇い手側になっても違和感はありませんでした。しかし、今回「働き方改革」と言うのなら、その対象は働き手側に向かって欲しいものです。

実際、まだまだ雇い手側の議論が中心であり、働き手側からすると、まだまだハードルが高いのではないでしょうか。もっと、働き手の立場からの議論にならないものでしょうか。

だから、「雇い方改革」の印象なのです。

働き手はどこに

15歳以上の人口は、1億1100万人です。その就業状態はどのようになっているでしょうか。総務省の公表データ(2017年1月)を元に内訳を作成してみました。グラフ化する時に、その内の生産年齢人口(15歳~64歳)がわかるようにしてあります。

15歳以上の就業区分
15歳以上の就業区分

その結果、就業者が約6500万人、完全失業者が約200万人、非労働者が約4400万人というのが実状です。

就業者の内、約800万人は生産年齢を超えた65歳以上です。そして、非労働者といっても、就学者や健康上の理由で就業できない人も含まれます。

企業からすれば、生産性に寄与する労働力を増やさなければなりません。すなわち、失業者と非労働者からの採用ということになります。

しかし、これだけでは、1億総活躍にはならないのです。では、どうすればよいのでしょうか。そこに、今回の「働き方改革」の狙いがあると思います。

ポイントは自由労働と成果主義

「働き方改革」に必要な要素を整理してみたいと思います。そもそも働き方を改革するためには、どの要素が影響を与えるかです

「働き方改革」要素構造図
「働き方改革」要素構造図

大きくは、就業者の量的拡大と質的増強です。量的拡大には、自然動態の改善と社会動態の改善が必要です。質的増強には、能力向上と意欲醸成が必要です。

このように整理してみおくと、いまどこに改善余地があり、何から着手すべきかの議論がしやすくなりますね。これは、問題解決のテクニックでもあります(『問題解決で面白いほど仕事がはかどる本』参照)。

この中で、『働き方改革実現会議』で議論されているのが、副業・兼業、同一労働同一賃金などです。非労働者の労働意欲を刺激し、労働参加率を高めようという議論です。

その議論の狙いは、自由労働を広めるコトと成果主義を進めるコトなると思います。もちろん方法はそれだけではありませんが、いま注目されているのはこの部分です。

自由労働により、働き手の裁量で仕事ができ、勤務時間と勤務場所を自由に決められます。副業や兼業をしてガムシャラに働いても良いし、生活を優先してスキマ時間でのんびり働いても良いのです。

成果主義により、時間と場所による労働管理や勤務状態の監視から開放され、出来高・成果に応じた労働評価や報酬が得られることになります。

フリーランスという働き方

そうなると、フリーランスに近い働き方になってきます。そして、今まで会社がやってくれていたような、次のことは自分でしなければならなくなります。

  • 企業への営業、条件交渉と契約
  • 自分自身の勤務管理、健康管理
  • 働く環境の確保と整備
  • 最新情報の入手、能力開発

これまで企業側が担当してきた、人事コスト(勤怠管理や人材育成にかけていたコスト)は縮小され、人事リスク(病気などで計画通りの労働できなくなるリスク)は軽減できるわけです。すべては、働き手側にシフトされていくことになるでしょう。

つまり、自己責任と自己管理が必要になってくるのです。

「働き方改革」で企業が対応をはじめたとしても、働き手のほうに自己責任と自己管理ができないかぎり、労働参加率は上がらないし、働き方改革は進まないと思います。

だから、雇い手だけでなく、働き手も変わっていかないといけないです。

働き方改革の3つの事例(社員のための改革)

1つ目の事例は、社員の自由労働を支援する働き方改革の事例です。

カルビー株式会社は、2017年2月3日に、自宅など社外で勤務する「テレワーク」の上限日数(それまでは週2日)を撤廃すると発表しました。

同社の働き方改革の始まりは古く、2009年6月の会長兼CEOの松本晃氏の就任からなのだそうです。

成果主義の徹底と、社員の意識改革を断行したことが会社を大きく変えたと広報課長の野原和歌氏はインタビューで答えています(リクナビ)。

まさに、自由労働と成果報酬に挑戦した事例でしょう。

働き方改革の3つの事例(非労働者のための改革)

2つ目の事例は、非労働者の労働参加を支援する働き方改革の事例です。

株式会社エデュケーションデザインラボが運営しているスマートワークビズです。代表取締役の平塚知真子氏にインタビューしてきました。

株式会社エデュケーションデザインラボ 代表取締役社長 平塚知真子氏
株式会社エデュケーションデザインラボ 代表取締役社長 平塚知真子氏

同社の取り組みはもっと古く、2007年からテレワークによる事業を展開しています。

所属する全てのワーカーがテレワークで、子育てや介護などで働きたくても働けない、退職せざるを得なかった女性たちです。

数名のワーカーでチームを作り、チーム内でワークシェアリングしながら業務を行う仕組みです。

そのための業務システムを開発し、デジタル採点、データ入力、オンライン事務代行などの業務を企業から受注しています。

このようなサービスを行う企業がないと、ほんとうの意味での「働き方改革」は実現できないでしょう。

働き方改革の3つの事例(フリーランスのための改革)

3つ目の事例は、フリーランス化を支援する働き方改革の事例です。

フリーランス協会は、2017年1月26日に設立を発表し、4月から募集が始まるようです。

社員からフリーランスへと前向きに考える人を対象に、協会に参加することで、独立障壁を下げ、フリーランスとしての働き方を後押しするサービスです。

まだ始まっていないので、今後どのような活動になるかはわかりませんが、独立することでなくなってしまう社員のメリットを肩代わりできれば、フリーランスになる人も増えていくことでしょう。

フリーランスのデメリットである、受注量の変動や労働提供の変動を組織として支援できるかどうかが課題でしょう。

新しい時代は来ている

政府は「働き方改革」により、日本の雇用慣行を変えようとしています。具体的には、終身雇用制・年功序列型賃金・企業別労働組合です。

この雇用慣行はある意味、日本の文化・良い風習として受け継がれてきたものです。しかし、再就職者や外国人にとっては、働きにくい風習でもあります。

日本の近い将来を見すえ、遺すべきところは遺し、変えるべきところは変えて行かなければなりません。

それは、企業の責任でもあり、働く私たちの努力でもあります。まずは、自らのスキルを高めていくことです。会社に残るとしても、フリーランスになるにしても、個人のスキルが鍵となります。

自らの意志と努力で、自分を高めることが、今すぐ取り掛かるべきことだと思います。