時代の変わり目 『働き方改革』で雇用が柔軟になると、企業と社員はこう変わる

『働き方改革』で雇用が柔軟になると、企業と社員はこう変わる(写真:アフロ)

会社は「いつまでも働いてくれる」と思い、社員は「いつまでも雇ってくれる」と思っている。これからは、そんな時代ではありません。

2016年9月27日に『働き方改革実現会議』(議長・安倍晋三首相)の初会合が開かれ、先日10月24日には2回目が開催されました。そして、副業・兼業やテレワークなど柔軟な働き方の議論が始まりました。

前回の記事でもお伝えしたとおり、日本国内の労働力が量的に減少していくことは時代の流れです。これからは、質的に労働力を高めていく時代に入らざるを得ないということです。

定年退職した人の労働力、出産後の労働力、子育て中や子育て後の労働力、そして、非正規社員の労働力をもっと活用しようという動きは、以前からありました。ここに来て、ついに正規社員の労働力にメスが入るということです。

労働生産性を高めなければならない理由

賃金を増やし、副業やテレワークのできる環境を整えると、労働生産性は高まります。労働生産性が高まるということは、つまるところ、GDPが高まるということです。

現在は、15~64歳の生産年齢人口7634万人(総務省、2016年10月概算値)の内、6465万人(総務省、2016年8月基本集計)の就業者が、労働生産性764万円(日本生産性本部、2014年12月報告)で働いています。就業者数と労働生産性を掛け算すると、約500兆円になります。これがGDPです。

将来、GDPを600兆円(経済成長率2%を9年連続)にするためには、たとえば6000万人(2025年の就業者数予測、生産年齢は7084万人、人口問題研究所)が1000万円の労働生産性で働ける環境が必要です。

もしも、労働生産性がいまの水準のままで、ただ人口が減少していくだけなら、GDPは460兆円(6000万人、764万円)になるでしょう。GDPが8%下がるということは、付加価値が8%下がるということですから、利益や賃金が8%下がるということを意味します。

経済成長が前提の資本主義経済は、成立しなくなります。だから、『働き方改革』の議論が始まったということが読みとれます。

年功序列の終焉

日本には、終身雇用と年功序列という文化があります。企業の仕組みも、この文化を基に作られています。

入社したばかりの社員の給料は安く、年齢とともに少しずつ上がっていきます。どんなに、いい仕事をしても先輩や上司の給料を超えないような秩序がありました。

その代わり、いい仕事ができなくなったときでも、変わらず雇用を続け、給料を払ってくれる仕組みです。

そこには、社員は会社に忠誠を誓い、会社は社員の人生を預かるという、出光興産や京セラの言う「大家族主義」のような文化があったからです。

会社は「社員のため」に投資をし、社員は「会社のため」に身を削ることで、双方が幸せになる文化です。

もしかしたら、「奉公に出て、盆正月に実家に帰る」という働き方が、名残として今に受け継がれているのかもしれません。

それ自体、素晴らしいことなのですが、その制度に甘んじていると、会社も社員も痛い目にあうことになります。

会社は「いつまでも働いてくれる」と思い、社員への責任が薄れていき、社員は「いつまでも雇ってくれる」と思い、会社への忠誠が薄れていくからです。

副業や兼業が柔軟になってくると、企業と社員の繋がり方が変わってきます。そうなると、「この会社に骨を埋める」とか「一生働きあげる」といった関係ではなくなります。

自ずと、一斉採用・終身雇用・年功序列・定年退職といった古い時代のやり方は、役割の変化とともに、新しい時代に合うカタチに進化していくことになるでしょう。

企業はこう変わる

社員は、自分の労働力の提供に関して、選択権を持つようになります。

企業は、優秀な社員をつなぎとめるために、働く意義、働きがいを明確に与えることです。これまでのように賃金を与える権利を独占するような雇用契約(多重就労の禁止)で、社員をコントロールできなくなります。

せっかく教育や研修に費用をかけて育てた社員ですら、会社に魅力がなくなれば、経営に貢献する前に出ていくかもしれません。

そのために企業は、社員満足を高めていく企業に進化していかなければならないでしょう。賃金や福利厚生という処遇だけではなく、いい商品やサービスを扱い、社会に求められる企業であり、社内の人間関係も良く、経営者に人間的魅力も必要になってくるでしょう。

社員はこう変わる

企業は、自社の労働力の質に関して、明確に評価するようになります。

社員は、固定給や時間労働給に頼れなくなります。成果給のウェイトが高くなり、スキルに応じて給料が上がる人と下がる人に分かれるでしょう。

そして、副業や兼業が本人の意志によるものならば、健康管理や時間管理は、会社管理から個人管理になっていきます。

1つの会社では管理の権限が限られるため、労災に対する責任の範囲は、狭まります。自分で自分を守らなければならなくなります。

労働組合も守れる範囲が限られてきます。企業別労働組合の形態をとる日本の労働組合は、多重就労を前提としていないから成立しているところがあります。今後は、海外に多い産業別労働組合が必要になってくるでしょう。

給与体系も、年功序列という大前提が変わります。大卒何年目だとか、勤続年数だとかで給与が決められなくなるということです。その人のスキルによって評価されるようになるでしょう。

スキルへの投資

今日のポイントです。

自分のスキルは、自分で高める

もう一つ、大きく変わっていくことがあります。それは、ビジネススキルです。

これまでのように、会社は人材育成として、社員に投資をしなくなります。投資したスキルが、自社のためのみ使われることがなくなっていくからです。

基礎スキルは企業が教育するでしょうが、専門スキルに関する育成には、消極的になっていくでしょう。

これまでも機会あるごとに言っていることですが、自分のスキルは自分の費用と時間を費やして高めなければならない時代が来ます。

自分でスキルを高め、自分で会社への貢献を示し、自分で給与を高めていく交渉をしていく時代に向かうでしょう。

だから筆者は、経営コンサルタントの傍ら、個人のスキルを高めるためのアカデミー事業も行っているのです。

近い将来、海外の優秀な人材が日本国内で労働力を提供するようになります。その時、その人達と雇用を競い合うことになるでしょう。

会社への貢献度に応じて、労働分配が行われた時、自分の給与が下がらないように、いまから自分のスキルを高めておくべきだと思います。