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プロ野球開幕!! BIGBOSSがルーキー開幕投手の次に企てるサプライズはこれだ

横尾弘一野球ジャーナリスト
球団オフィシャルサイトでも、ルーキー・北山亘基の先発をクローズアップしている。

 2022年のプロ野球ペナントレースが、いよいよ3月25日16:00開始の東北楽天VS千葉ロッテ(楽天生命パーク)を皮切りに6球場で幕を開ける。昨年の監督就任から話題の中心になっている北海道日本ハムの新庄剛志は、23日付で登録名をBIGBOSSに変更。開幕直前のサプライズで注目を浴びたが、もうひとつ、開幕投手にはドラフト8位で入団したルーキーの北山亘基を抜擢している。

新庄剛志監督は、3月23日付で登録名もBIGBOSSとした(球団オフィシャルサイトより)。
新庄剛志監督は、3月23日付で登録名もBIGBOSSとした(球団オフィシャルサイトより)。

 新人投手が開幕戦に先発するのは、2013年の則本昂大(東北楽天)以来9年ぶりで、以下の通り2リーグ分立後73年間で13人しかいない。

成田啓二(国鉄)1950年

榎原 好(毎日)1950年

杉浦竜太郎(広島)1951年

三船正俊(阪神)1952年

大田垣喜夫(広島)1952年

梶本隆夫(阪急)1954年

西村一孔(阪神)1955年

牧野 伸(東映)1956年

杉浦 忠(南海)1958年

伊藤芳明(巨人)1958年

城之内邦雄(巨人)1962年

高野 光(ヤクルト)1984年

則本昂大(東北楽天)2013年

 2リーグ分立直後の1950~51年は、各球団が社会人で活躍する投手を引き抜いた。成田は米子鉄道局から31歳、榎原は篠崎倉庫から26歳、杉浦は熊谷組から28歳での入団であり、現在のルーキーと同じようには考えられないだろう。

 そうした意味では、1952年に尾道西高から広島へ入団し、弱冠18歳で開幕投手を務めた大田垣喜夫が、ルーキー開幕投手の草分けと言ってもいいかもしれない。しかも、プロ初のマウンドを勝利で飾っているのも特筆ものだ。1957年から姓を備前に変え、11年間の現役生活で通算115勝を挙げたあと、二軍監督やスカウトとして長く球団に貢献した。

 このあと、通算254勝の梶本、開幕戦の白星から22勝を積み上げて新人王となった西村、南海のエースとして1959年の日本シリーズで巨人を相手に4戦4勝の杉浦、新人王とノーヒットノーランの城之内と、ルーキー開幕投手から大きく飛躍した顔が並ぶ。

ルーキー開幕投手は分が悪いからこそ……

 だが、1965年のドラフト導入後はどの球団もそれなりに選手層が厚くなり、新人投手を開幕戦に先発させることはなくなる。だからこそ、1984年に高野が開幕投手に抜擢された時は大きな話題となった。東海大でリーグ戦通算23勝1敗の実力で、ドラフトでは1位入札で4球団が競合。抽選で交渉権を得たヤクルトで春季キャンプ、オープン戦を順調に過ごすと、武上四郎監督は前年に2ケタ勝利を挙げた松岡弘、梶間健一、尾花髙夫がいる中でも高野に先発を任せた。高野は4回を3失点で勝敗はつかなかったものの、初勝利を完封でマークするなど10勝12敗と奮闘した。

 そして、2013年に東北楽天の星野仙一監督は、エースの田中将大がワールド・ベースボール・クラシックに出場していたこともあり、田中のコンディションなどを考慮した結果、ドラフト2位で獲得した則本に白羽の矢を立てる。福岡ソフトバンクを相手に7回途中4失点で敗戦投手となったが、2試合目の先発を務めた4月5日の千葉ロッテ戦ではパ・リーグの新人投手で一番乗りとなる白星を手にし、この年から6年連続で2ケタ勝利を挙げるなど主戦として活躍しているのは周知の通りだ。

 このように、ドラフト導入後はセ・リーグで高野、パ・リーグでは則本しかいないルーキー開幕投手に抜擢されたのが北山だ。春季キャンプはファームでスタートするも、第2クールから一軍へ合流。オープン戦では5試合にリリーフ登板して2セーブを挙げたが、先発はしていない。それでも、最速156キロのストレートを軸に、多彩な変化球も駆使する投球で活躍が期待される有望株が、開幕一軍に名を連ねるだけでなく、開幕投手の栄誉も手にしたのだ。ちなみに、13人のうち白星を手にしたのは7人だが、1958年の伊藤以降は残念ながら勝利でスタートすることはできていない。

 最後にひとつ、忘れてならないのは、BIGBOSSがまたもサプライズを企てているかもしれないということ。北山の先発起用はオープナーであり、2~3回にローテーション投手に交代したり、オールスターゲームのような小刻みな継投も考えられるだろう。ともあれ、2022年もプロ野球を存分に楽しみたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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