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防御率0.21で勝率10割!! プロ注目の河野 佳(大阪ガス)が社会人投手三冠

横尾弘一野球ジャーナリスト
河野 佳の投手三冠は、2014、2016年の佐竹功年に次ぐ2人目(3回目)だ。

 12月20日の午後、日本野球連盟から2021年の社会人ベストナインをはじめ、年間表彰される選手が以下のように発表された。

 ベストナイン二塁手の峰下智弘(大阪ガス)が6年ぶり2回目の受賞となったほかは、初の栄冠を手にした選手が並び、中でもベストナイン投手の河野 佳(大阪ガス)は最優秀防御率賞、最多勝利投手賞との投手三冠に輝いた。

 河野は広陵高2年夏、3年春と甲子園のマウンドを経験した。ただ、順調にエースへの階段を昇ったのではなく、中井哲之監督から野手転向を通告されながらも投手にこだわり、コツコツと実績を積み重ねて信頼を得た。卒業時には、河野自身が望めばドラフト指名もあったようだ。しかし、プロ志望届は提出しなかった。

 U-18ワールドカップに向けた国際大会対策研修合宿に招集され、星稜高の奥川恭伸(現・東京ヤクルト)や大船渡高の佐々木朗希(現・千葉ロッテ)らと一緒にブルペンで投げた経験が、さらなる飛躍の必要性を実感させたのだろう。社会人と大学の争奪戦の末に大阪ガスを選んだのも、「社会人トップクラスのチームでエースになれなければ、そこまでの実力」と自身に大きなプレッシャーをかけたのだ。

 入社した2020年はコロナ禍で多くの公式戦が中止されたが、それによって体力強化に時間をかけられたのも奏功し、9月の都市対抗近畿二次予選から登板機会を得ると、東京ドームのマウンドにも立つ。2年目の今季は、強いストレートを低目に集めることをテーマにスキルアップを目指し、前田孝介監督から「うちの三本柱のひとり」と言われるまでの力をつける。

 そして、日本選手権一回戦の先発を任され、日本製鉄東海REXを5安打でシャットアウト。味方打線の援護が8回まで1点という緊迫した投手戦だったが、「1点を守り切ってやろうと、力が入ったのでよかった」と、さらりと言ってのけた。

19回連続無失点で日本選手権の最高殊勲選手賞に

 西部ガスとの二回戦にも先発し、6回まで3安打で無失点。6点のリードがあったために交代し、準決勝からはリリーフにまわる。結局、4試合で19回を無失点で投げ切った河野は、2年越しとなる大会連覇の原動力となり、最高殊勲選手賞を手にする。

 この直後に招集された全日本ジュニア合宿では、「これからは、相手も僕の投球を分析してくると思うので、そうした中でも抑えられるように力をつけたい」と言っていた河野は、対戦相手の分析を上回る投球を展開。選考の対象外でも最重要な都市対抗近畿二次予選で2勝を挙げ、本大会一回戦では伏木海陸運送を4安打で完封する。チームは二回戦で惜敗してしまったが、今季の河野は選考の対象となる公式戦で7試合に登板して6勝0敗の勝率10割をマーク。43回で僅か1失点の防御率0.21は、現行の表彰制度が導入された2010年以降で最高の数字だ。

 ちなみに、投手三冠は2014、2016年の佐竹功年(トヨタ自動車)に次ぐ2人目で3回目。43回の投球数は577で、1回あたり13.4球。これは、7四死球という抜群の制球力が支えており、プロ球団のスカウトも「来年のドラフトでは、1位でなければ獲れないでしょう」と見ている。社会人野球は、12月22日に実施される年間表彰式をもってしばしのオフに入るが、2022年はドラフト指名解禁の3年目を迎える河野がトップランナーとしてスタートする。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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