前年最下位同士の対戦でも注目された今年の日本シリーズは、解説者陣が「最近では見られなかったほどの好ゲーム」と言うほどの熱戦が続き、延長12回を戦い抜いた第6戦で東京ヤクルトが20年ぶりの日本一をつかみ取った。

 惜しくも25年ぶりの頂点はならなかったが、オリックスも、前年に首位から27ゲーム、5位の北海道日本ハムからも7ゲーム離された最下位から一気にパ・リーグを制した。ファームで燻っていた杉本裕太郎を四番に抜擢したり、宗 佑磨をサードにコンバートして持ち味を発揮させたりと、中嶋 聡監督の手腕が大きくプラスに働いたことは言うまでもない。ただ、今季の開幕前に選手たちが「今年こそ勝てる」という手応えを口にしていたように、数年かけて投打に戦力が充実してきたのも事実だ。その背景には、思い切ったドラフト戦略があった。

 もう後がない第5戦からのスタメン内野手には、ファースト・T-岡田(2005年高校生ドラフト1巡)、セカンド・太田 椋(2018年1位)、サード・宗 佑磨(2014年2位)、ショート・紅林弘太郎(2019年2位)と高卒で入団した叩き上げが並んだ。投手を見ても、先発は山本由伸(2016年4位)、宮城大弥(2019年1位)、山﨑颯一郎(2016年6位)が務め、リリーフでも吉田 凌(2015年5位)がフル回転している。

 常勝チームは将来性を備えた高校生を獲って次世代の準備も万全にし、下位に低迷するチームは大学・社会人の即戦力でいち早く戦力を立て直すべき。プロ野球界では、長きにわたってチーム作りの定石と言われている方法だ。しかし、数年前に興味深い考え方を耳にした。

「うちは、なかなかBクラスから抜け出せませんが、本当にチームを強くするためには、即戦力ではなく、将来性のある高校生を獲ってコツコツと育てていくべきじゃないかと思うんです」

 当時はスカウトとしてアマチュア野球の現場を駆け回っていた、オリックスの牧田勝吾編成部副部長である。

 オリックスに入団した大学や社会人出の選手は、1年目からまずまずの数字を残していた。もちろん、選手本人に実力があるからなのだが、牧田は「絶対的なレギュラーやライバルがいないという部分もある。それに、複数の新人にそれだけの出番がある状況は、チームとして必ずしも健全ではない」と見ていた。

逆転の発想でチーム力をアップさせる

 オリックスに限らず、ポジションが空いていて出場機会を得た新人は、2~3年後には壁にぶつかり、あとから入団してきた新人に簡単に抜かれてしまうケースが珍しくない。即戦力を獲り、期待通りの働きをしたのに、チーム力アップに反映しないという状況を、牧田は何とか打破しようと試みる。

「もちろん、高校生を獲得するだけでなく、ポジションやプレースタイルを含め、うちの補強ポイントやチームカラーに合う選手に絞り込みました」

 綿密な計画を立てて戦力を整えると、2019年から二軍を指揮した中嶋監督は、高卒は2~3年後から一軍へなどと型にはめず、実戦の中で経験のある選手と競わせる。その中嶋監督が昨季途中から一軍を率いると、一気にチームは活性化する。

 そうして、25年ぶりのリーグ優勝まで登り詰めると、今年のドラフトでは高校生をひとりしか指名しなかった。

「ようやく結果を出すことができた。まだ定位置を獲り切っていない選手もいますが、レギュラークラスを安泰にせず、層を厚くするために競争に加われると見た選手を指名しました」

 1位で単独入札に成功した椋木 蓮投手(東北福祉大)はもちろん、2位の野口智哉内野手(関大)、3位の福永 奨捕手(国学院大)、4位の渡部遼人外野手(慶大)は、いずれも定位置を狙える実力と評価された。しかし、彼らに簡単にはポジションを渡さない選手がいるからこそ、競争は激しくなり、選手層を厚くしてチーム力アップにつながると、牧田は見ている。

 このように、定石とは逆転の発想で集められた選手たちは、着実に化学変化を起こしているという印象だ。今季の躍進が常勝チームへの足がかりになるか、来季のオリックスにも注目したい。