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侍ジャパンはいよいよ日韓戦――韓国の先発は8年前にKOしたサイドハンドだ

横尾弘一野球ジャーナリスト
韓国の先発・高永表は、2013年の東アジア競技大会でも日本戦に先発している。

 東京五輪の野球は、8月3日にノックアウトステージの敗者復活一回戦が行なわれ、ドミニカ共和国が7×6でイスラエルを下した。これでイスラエルの敗退が決まり、メダルの行方は日本、韓国、アメリカ、ドミニカ共和国の4か国に絞られた。

 いよいよ8月4日、稲葉篤紀監督が率いる野球日本代表“侍ジャパン”は韓国との準決勝に臨む。勝てば決勝進出で銀メダル以上が確定し、負ければアメリカ×ドミニカ共和国の勝者との準決勝にまわる。タイブレークの延長10回までもつれたアメリカ戦に続く大一番には、中6日で山本由伸(オリックス)が先発する。

 対する韓国は、予選リーグでアメリカを相手に先発した高永表(コ・ヨンピョ=KTウィズ)が、中3日で先発してくる。韓国の名門・東国大から、2014年に新規参入球団だったKT入り。長身の右サイドハンドからキレのあるストレートとチェンジアップのコンビネーションでリリーバーを務めると、2017年には先発に抜擢され、2019年から2年間は兵役に。復帰した今季は7勝を挙げ、チームの首位争いにも貢献している。

 そんなキャリアの高永表は、2013年に中国・天津市で開催された第6回東アジア競技大会でも、韓国代表として日本戦に先発している。この時の韓国代表は、実力派の大学生と兵役中の若手による混成チーム。尚武という軍隊のチームからは、高永表と同い年で2018年のアジア競技大会や2019年のプレミア12にも出場した、右アンダーハンドの朴鐘勲(パク・チョンフン=SSGランダーズ)らが代表入り。高永表と朴鐘勲が二枚看板だった。

 対する日本代表は、社会人を中心に大学生も加えたアマチュア編成。日本、韓国、チャイニーズ・タイペイ、中国、香港、グアム、モンゴルの7チームが総当たりの予選リーグでは、第5戦で韓国と対戦した。日本のスターティング・メンバーは以下の通りだ。

4 渡邉貴美男(JX-ENEOS)

5 多幡雄一(Honda)

7 松本 晃(JR東日本)

D 山川穂高(富士大=現・埼玉西武)

3 井上晴哉(日本生命=現・千葉ロッテ)

9 井領雅貴(JX-ENEOS=現・中日)

2 中野滋樹(JR九州)

8 大河原正人(東芝)

6 田中広輔(JR東日本=現・広島)

P 浦野博司(セガサミー=元・北海道日本ハム)

 この時は大気汚染が酷く、しかも球場周辺には朝靄が立ち込める。午前9時開始の試合は外野手が見えないほどの状態で、打者も投球が見辛かった。序盤は静かに立ち上がるも、日本は3回表に上位の連打で1点を先制。さらに、5回表には先頭が四球のあと、犠打が2本続けて内野安打となり、無死満塁のチャンスを作る。ここで、三番の松本が野選で2点目を奪うと、四番の山川は豪快にバックスクリーンへ運ぶ満塁弾。さらに、井上も中前に弾き返すと、6失点の高永表は降板した。

2013年に開催された東アジア競技大会の韓国戦で、リードを6点に広げる満塁本塁打を放ち、笑顔で生還する山川穂高。
2013年に開催された東アジア競技大会の韓国戦で、リードを6点に広げる満塁本塁打を放ち、笑顔で生還する山川穂高。

 ちなみに、韓国とは決勝でも再び対戦。この試合で先発した朴鐘勲からも2本塁打で4点を奪い、日本は優勝している。

 この時の日本は、「三振するほどのストレートはない」と変化球にもタイミングを合わせ、高永表の足元を狙うセンター返しの打撃を徹底。また、フィールディングの緩慢さにも目をつけ、バントで攻めたのも有効だった。その対戦から8年――。高永表も大きく成長しているようだが、粘り強さを発揮している侍ジャパンの打線が攻略するのは、そう難しくはないはずだ。勝敗を分けるのは、山本と韓国打線、あるいはリリーフ投手の出来になるか。注目の日韓戦は、午後7時にプレイボールされる。

(写真提供=小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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