阪神のドラフト2位ルーキー・伊藤将司が巨人戦でプロ初勝利を引き寄せた小さな大仕事

昨年の都市対抗で好投する伊藤将司(阪神)。今季の新人白星を一番乗りで手にした。

 7回まで気持ちのこもった114球を投げ切り、巨人打線を6安打1失点に抑えた阪神の新人・伊藤将司が、記念すべきプロ初勝利を挙げた。春季キャンプでしっかりと調整し、開幕から先発ローテーション入りした伊藤将は、チーム5試合目となる3月31日の広島戦に初登板。5回までに8安打を許しながら2失点で凌ぎ、2対2の同点で二番手の加治屋 蓮にマウンドを譲る。

「甘いボールは確実にとらえられるし、ガラリとリズムを悪くしてしまうこともある。1球の重みをあらためて感じさせられましたし、今回の反省を生かしてレベルアップしていきたい」

 プロの印象とともに自身の課題も分析し、迎えた2度目の先発では、国際武道大卒業時のドラフトで指名されなかったものの、JR東日本の2年間に取り組んだスキルアップの成果が見事に表現されていた。

 強豪・横浜高で甲子園のマウンドに立ち、大学選手権でも準優勝2回の実績がありながら、伊藤将がドラフトで指名されなかったのはなぜか。当時のスカウトの評価を総合すれば、「球速を意識し過ぎて、持ち味が発揮できていない」ということ。入社したJR東日本の山本浩司ヘッドコーチも、「プロを目指して入ってくる投手には、どうしても球速や奪三振数にこだわり、力で抑え込もうとする部分はあります」と言う。社会人ルーキーだった2019年は、チームの公式戦33試合中16試合に先発。2.42という防御率が示すように、いい投手なのは間違いないが、プロ入りには決め手に欠けるという印象が強かった。

 そして、何としても目立つ実績を残したい2年目には、こう語ってシーズンに臨む。

「球速だけを追いかけるつもりはありません。でも、理に適ったフォームを固めれば、140キロ台中盤のキレのあるストレートを常に投げられるはずだし、変化球を含めたコントロールも安定する。そうして、誰が見ても評価される投手になりたい」

 だが、新型コロナウイルスの影響で大半の公式戦が中止となり、紅白戦を重ねながら自身の投球を見詰め直す日々が続く。それでも、都市対抗東京二次予選では3試合に登板。埼玉西武から2位指名された佐々木 健との先発対決となった第一代表決定戦では、NTT東日本の強力打線を9回一死までノーヒットに抑える快投で代表権獲得に貢献する。

 ストレートと変化球をほぼ同じ腕の振りで投げ込み、ボールだけでなくフォームにも緩急をつけるなど、あらゆる技を駆使して打者に的を絞らせない。178cm・85kgと体格は平均的なサウスポーは、抜群の安定感と「打てそうで打てない」投球術を磨き上げ、プロへの扉を開いたのだ。

勝利を引き寄せた4回裏の攻撃で大仕事

 そんな伊藤将が初勝利を目指して臨んだ4月7日の巨人戦は、1点をリードした4回裏にカギとなる場面を迎える。先頭の佐藤輝明の内野安打に梅野隆太郎も右前安打で続き、無死一、二塁。木浪聖也は詰まった二飛に倒れ、打席には伊藤が入る。1球目はバントの構えから一、三塁手のチャージを見て、バスターに切り替えてファウル。2球目は三塁側に絶妙のバントをするも、僅かにファウルに。だが、スリーバントのサインが出ると、変化球に上手くバットを合わせて走者を二、三塁へ進める。

 次打者は打率2割未満と本調子ではない近本光司だが、このバントを見せられると気合い十分のスイングで、二塁手のグラブを弾くタイムリー内野安打で2点目。さらに二死一、三塁から、好調の糸原健斗は二塁手の左を痛烈に抜く当たりを放ち、一塁走者の近本も還り、この回3点で試合の流れを大きく引き寄せる。伊藤将の犠打は、その起点になったと言ってもいいだろう。

 試合後、糸原とともにお立ち台に呼ばれた伊藤将は、落ち着いた口調でこう話した。

「今日は、粘り強く投げることができました。高校時代は、甲子園ではいい思い出がないので、プロの世界でいいピッチングができたのは本当に嬉しい。強打者が多い打線に対して、低目に集めて打たせることができたのがよかった。ウイニング・ボールは両親にプレゼントします」

 今季のセ・リーグ新人で白星一番乗りを果たした伊藤将は、球団史上初めて巨人戦に初登板したルーキーの初勝利という貴重な記録にも名前を刻んだ。

(写真提供=小学館グランドスラム)