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本物の強さを発揮した大阪ガスが2年連続日本一【第45回社会人野球日本選手権大会】

横尾弘一野球ジャーナリスト
昨年の都市対抗に続いて日本一となり、橋口博一監督を胴上げする大阪ガスの選手たち。

 社会人野球の日本一を決める第45回社会人野球日本選手権大会は10月25日から京セラドーム大阪で熱戦が繰り広げられ、地元の大阪ガスと日本生命が11月4日の決勝に進出した。

 昨年の都市対抗で初優勝し、全国の舞台で準優勝5回の「シルバー・コレクター」という有り難くない異名を返上した大阪ガスは、連覇を目指した今夏の都市対抗初戦(二回戦)でJFE東日本と対戦。スコアレスのままタイブレークの延長12回に突入すると、守護神の須田幸太から2点を奪うも、その裏に不運な安打もあって逆転サヨナラ負けを喫する。そして、そのJFE東日本が黒獅子旗を手にした。

 ただ、攻守のキーマンだった近本光司を阪神に送り出しても自慢の機動力は機能しており、今年のドラフトでは小深田大翔が東北楽天から1位指名。再び日本一を勝ち取ろうと今大会に臨むと、二回戦ではJFE東日本に5対4でリベンジを果たし、三菱自動車岡崎との準決勝では5点差を跳ね返してサヨナラ勝ちするなど、グングン加速しながら頂上決戦に駆け上がってきた。

 都市対抗の出場回数が60回に達するなど、社会人野球を牽引してきた名門・日本生命も、2015年に都市対抗と日本選手権の“夏秋連覇”を達成してから、安定感ある戦いを続けている。今夏の都市対抗は、準々決勝でトヨタ自動車と延長12回タイブレークの末に惜敗したものの、実力派の新人6名が入社した今季は、投打に戦力が充実。今大会も一、二回戦は2ケタ安打、準々決勝と準決勝は2試合で1失点と、力強く2年ぶりの決勝に勝ち上がってきた。

 両チームは、2015年の都市対抗決勝でも対戦。延長14回、4時間43分におよぶ熱戦を繰り広げ、日本生命が5対3で大阪ガスを振り切った。それだけではない。全国の舞台で幾度か顔を合わせているが、これまでは圧倒的に日本生命が勝利を挙げている。

さらなる躍進を予感させる2年連続日本一

 大阪ガスが今大会で3勝を挙げている阪本大樹、日本生命が成長著しい3年目・本田洋平の先発で始まった試合は、大阪ガスが先手を取る。2回表に一死一、三塁のチャンスを築き、七番の大谷幸宏は右飛に討ち取られるも、松谷竜暉が二塁手のグラブを弾いて右前に転がる二塁打で1点、続く宮崎一斗も左前安打で2点目と、下位打線で流れを呼び込み、3回表には一死一、三塁から四番・土井翔平の右犠飛でリードを広げる。

 追う立場になった日本生命も、4回裏二死三塁から、五番の皆川 仁がチーム初安打を一、二塁間に放って1点を返す。5回裏も一死二、三塁と同点のチャンスを築くが、ここは阪本が踏ん張る。すると、6回表二死二塁から大谷が中越えに三塁打を放って4対1とした大阪ガスは、阪本が終盤はギアを上げ、日本生命の打線にバッティングをさせない。果たして、2時間25分のスピーディな試合は、そのまま4対1で大阪ガスが逃げ切った。

 優勝インタビューで、大阪ガスの橋口博一監督は「ホッとしました」と笑顔を見せたが、「都市対抗の連覇を逃し、この大会は絶対に優勝したかった」と言葉に力を込めた。昨春の監督就任時に「全国で連覇できるチームを作ろう」と呼びかけ、初めは「何を言っているんだ」と思ったという選手たちも、都市対抗を制して“その気”になった。チームには以前からのカラーである明るさに加え、勝利を知ったからこその厳しさがほどよく混在している。苦手にしていた日本生命を倒しての2年連続日本一は、今後のさらなる躍進を予感させる。

 来年は東京五輪による変則スケジュールで、7月に日本選手権、11月に都市対抗が開催され、今大会の優勝チームには来年の日本選手権の出場権が与えられる。橋口監督は「今度こそ連覇をしたい」ときっぱり言った。

(写真/松橋隆樹=小学館グランドスラム)

【第45回社会人野球日本選手権大会表彰選手】

最高殊勲選手賞/阪本大樹投手(大阪ガス)

敢闘賞/廣本拓也内野手(日本生命)

首位打者賞/廣本拓也内野手(日本生命)=打率.667

打撃賞/古川昂樹外野手(大阪ガス)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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