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東北楽天1位指名の小深田大翔を牽引役に日本は決勝進出【第29回BFAアジア野球選手権大会レポート】

横尾弘一野球ジャーナリスト
中国戦の1回裏一死から、右中間へ鋭い当たりを放って三塁を陥れた小深田大翔。

 社会人選手で編成された日本代表が出場している第29回BFAアジア野球選手権大会は、10月18日からスーパー・ラウンドに入り、グループAで1位となった日本はグループBで1位の中国と対戦。先発の山田義貴(西部ガス)が緩急を生かした投球で5回を3安打7奪三振の1失点にまとめ、主将の佐藤 旭(東芝)が3安打3打点をマークするなど15安打。7回コールドの11対1で快勝し、本日19日に予定されている韓国との第2戦を待たずに、2大会連続の決勝進出を決めた。

 アジア最上位に2020年東京五輪の出場権が与えられるプレミア12の前哨戦として注目される大会は、波乱の幕開けとなった。14日の開幕に合わせ、日本代表は12日の午前中に台湾へ移動する予定だったものの、台風19号の影響で航空便が欠航。14日に関西国際空港から香港経由で台中入りすることになり、この日に予定されていたオープニング・ラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦は15日に延期される。

 大会休養日の17日にも試合が入った日本は、15日から6連戦となる。しかも、慌ただしく移動した翌15日が最大のライバルであるチャイニーズ・タイペイ戦。だが、厳しいスケジュールをものともせず、メジャー・リーグ経験者を含むチャイニーズ・タイペイを2対0で下すと、香港とスリランカにはいずれも5回コールドの15対0で圧勝し、無失点の3連勝でスーパー・ラウンドへ駒を進める。

小深田はショートの守備でも堅実さと軽快さが光る。
小深田はショートの守備でも堅実さと軽快さが光る。

 学生で編成した韓国が中国に敗れ、無敗は日本だけとなったスーパー・ラウンドでも、侍ジャパンのユニフォームを纏った選手たちは躍動する。パワーを秘めた中国打線を相手に、先発の山田が3者凡退で立ち上がると、その裏一死から小深田大翔(大阪ガス)が右中間を割る当たりを放ち、自慢の快足を飛ばして三塁を陥れる。続く森下翔平(日立製作所)が右前に弾き返して1点を先制し、その後も下川知弥(NTT東日本)の3ラン本塁打などで着々と加点する。

 前日のドラフト会議で東北楽天から1位指名された小深田は、第2打席も巧みなバットコントロールで左前安打を放ち、5回裏一死三塁の4打席目は左犠飛を放つ。日本人とはやや異なる間合いで140キロ超のストレートを投げ込んでくる中国の投手にも力負けせず、柔らかく左右に打ち返すバッティングで技量の高さを示した。

アグレッシブな快足でアジア王座死守に貢献してプロへ

 2時間余りの戦いを終えると、小深田は中日3位指名の岡野祐一郎(東芝)とともに現地の記者から囲み取材を受ける。「昨夜は、ドラフト1位指名のあとでパーティをしましたか」という質問に「いいえ、していません」と答えると、「えっ、していないの」と驚かれたのには失笑していたが、今季メジャー・リーグに昇格したチャイニーズ・タイペイの野手について感想を求められると「パワーが凄い」と話す。

 さらに、自身のセールスポイントを「武器は足の速さだと思っている。積極的に次の塁を狙う姿勢を持ち味にしたい」ときっぱり言った。その言葉通り、走攻守にわたってスピードを見せつけた小深田は、アジア王座を死守する戦いでも存在感を示してくれるだろう。そして、1年上の近本光司(阪神)に優るとも劣らない活躍を目指してプロの世界へ。

 ドライチが牽引役となり、社会人日本代表はアジアの頂点を目指す。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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