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ドラフト候補も順調なスタート――フランスへ遠征する社会人日本代表が本格的に始動する

横尾弘一野球ジャーナリスト
フランス遠征直前合宿に招集され、サインプレーを確認する社会人日本代表の選手たち。

 10月14日から台湾・台中市で開催される予定の第29回BFAアジア野球選手権大会で大会連覇に挑む社会人日本代表が、本格的に始動した。6月に30名の候補選手を招集して強化合宿を実施したあと、日本野球連盟競技力向上委員会の高見泰範委員長、石井章夫監督が中心となって第90回都市対抗野球大会を視察。選手たちのパフォーマンスをチェックした上で以下の20名を選考した。

Yoshida Challengeに出場する20名の社会人日本代表。
Yoshida Challengeに出場する20名の社会人日本代表。

 各地区で日本選手権の最終予選が行なわれる時期ゆえ、すでにJABA大会優勝で予選を免除されているチームから選出された選手が多い。昨年のアジア競技大会から引き続き招集されたのは、キャプテンの佐藤 旭(東芝)、サブキャプテンの北村祥治(トヨタ自動車)をはじめ5名。国際大会での対応力も高めるため、フランスへ遠征する選手たちは8月24日に東京都内に集合した。

 25日に東京ガス、26日には埼玉西武のファームとテストマッチを行ない、27日にパリへ向けて出発。現地では、フランス野球・ソフトボール連盟が主催する国際親善大会“Yoshida Challenge”にエントリーし、28日から9月1日に各地でフランス代表との5連戦に臨む。

 大会名は、フランス野球の発展や普及に貢献した吉田義男氏(元・阪神監督)の功績を称えたもので、吉田氏もレセプションに参加するほか、社会人日本代表は試合前に野球教室を開催するなど、フランスとの親睦も深める。

 親善大会とはいえ、世界野球・ソフトボール連盟が公認した国際試合であり、チームは“侍ジャパン”のユニフォームを着る。高見委員長からは「遠征と言っても、アジア選手権の選考だと捉えてほしい。ほぼ初めて対戦するフランスの投手、打者に対して、いかに対応できるか。見た瞬間に判断する力の有無が、大きな選考ポイントになる」と説明があった。

 石井監督は「皆さんは所属チームから預かった大事な選手だが、短期決戦で負けが許されない国際大会では、無理の効く選手が実績を残していることは頭に置いてほしい」と話し、初日の練習が始まった。

初代表の選手たちがはつらつと持ち味を発揮する

 ウォーミング・アップのあとは、北村を中心にサインプレーの確認を行ない、投内連係や牽制などのタイミングをチェック。シートノックでは金子聖史(東芝)と沓掛祥和(トヨタ自動車)がファースト、北村がセカンド、青柳 匠(大阪ガス)がサード、稲垣誠也(日本通運)と小深田大翔(大阪ガス)がショートに入り、シャープな動きを見せた。投手を含め、ドラフト候補と目される選手たちも意欲的に練習に取り組んでいる。

現地で告知されているYoshida Challengeのポスター。
現地で告知されているYoshida Challengeのポスター。

 また、フリー打撃では、初代表に意気込む外野手の皆川 仁(日本生命)、高畠裕平(日本製鉄鹿島)、神鳥猛流(王子)に加え、金子や沓掛ら自チームで主軸を担うスラッガーたちが快音を響かせ、絶好のスタートを切れたという印象だ。

 いよいよ来年に迫った東京五輪では、日本は開催国として出場できるが、韓国とチャイニーズ・タイペイは11月に開催されるプレミア12で出場権獲得を目指す。その前哨戦となるアジア選手権にも、プロ選手を含む編成でエントリーしてくる可能性が高いと見られており、社会人日本代表にとっては歯応えのある戦いになりそうだ。

 2017年のアジア選手権では、監督として初采配ながら機動力を駆使した戦術で韓国やチャイニーズ・タイペイのバッテリーに大きなプレッシャーをかけ、見事に覇権を奪還した石井監督は、今回の狙いをこう語る。

「昨年のアジア競技大会では韓国の長打力に後手に回り、足が使えないという展開も経験した。一発長打の怖さを再認識しながら、日本の戦い方にも新たなバリエーションが加えられるよう、フランスでは色々と試したい」

 選手たちが、フランスでどんなパフォーマンスを見せてくれるか期待したい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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