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イースタン選抜が2連覇、社会人選抜は3位に【アジア・ウインター・ベースボール2018が閉幕】

横尾弘一野球ジャーナリスト
3勝0敗で防御率0.00の山田義貴(西部ガス)は来年のドラフトが楽しみだ。

 台湾・斗六市で開催されたアジア・ウインター・ベースボールの決勝トーナメントは、12月16日に3位決定戦と決勝が行なわれ、3位決定戦では日本の社会人(JABA)選抜が8-3で韓国プロ(KBO)選抜に快勝。また、決勝では日本のイースタン選抜が台湾プロ(CPBL)選抜との投手戦を1-0で制した。

 2連覇を達成したイースタン選抜は勝負強さが光った。チーム打率.236は出場5チーム中で最下位だったものの、19試合で15本塁打と効果的な一発が飛び出し、全体2位のチーム防御率3.00をマークした投手陣が要所で踏ん張った。

JABA選抜は1点勝負の得点力と防御力が課題

 日本代表のスキルアップを目的に、昨年からエントリーしているJABA選抜は、チーム打率.277、チーム防御率2.88とも1位。29名の登録選手を前後半に分け、18~20名の選手で戦ったため、小刻みな投手交代でピンチを切り抜けることができず、終盤に逆転されて星を落としたのが目立った。それでも、リーグ戦の最後に4連勝するなど実力の高さは見せたが、1点を争う展開では、プロとの経験の差が出たという印象だ。1勝すれば決勝進出が決まるCPBL選抜との準決勝でも、5-6で第1戦を落とすと、第2戦は3-3の引き分け。どうしても1点がほしい場面でいかに攻撃を組み立てるか、また1点もやれない局面をどう乗り切るかは、来年のアジア野球選手権大会に向けたテーマとなるだろう。

 2016年に優勝したウエスタン選抜は、フォーム改造中の投手、新たなポジションに挑戦する野手など、実戦の中で成長する可能性を探りたい若手に出場機会を与えているため、どちらかと言えば勝敗を度外視した戦い。とはいえ、勝利に貢献することで身につくスキルもあると考えれば、リーグ戦で3勝10敗3引き分けの最下位となり、決勝トーナメント進出を逃したのは反省材料か。

投打各部門の数字も日本勢が上位に

 さて、この1か月にわたる武者修行を通して、来季へのきっかけをつかんだ選手を挙げておこう。首位打者は、打率.392でイースタン選抜のルーキー・塩見泰隆(東京ヤクルト)が獲得した。今季はケガで出遅れ、夏場から戦列に加わって一軍の舞台にも立っただけに、実戦経験を積むことができたのは来季につながるはず。4本塁打もトップだが、12打点は5位で、惜しくも三冠王は逃した。イースタン選抜では、安田尚憲(千葉ロッテ)が打率.305、1本塁打13打点、村上宗隆(東京ヤクルト)は打率こそ.224だったものの、4本塁打15打点で二冠王に輝いた。

 また、投手では池田隆英(東北楽天)が4試合に先発して2勝を挙げた。防御率も0.69と内容のある投球を続け、梅野雄吾(東京ヤクルト)はトップタイの5セーブをマーク。大江竜聖(巨人)も左腕の持ち味を発揮し、5ホールドポイントを挙げた。

 JABA選抜では、途中で帰国したものの下川知弥(NTT東日本)が打率3位の.356。反対に途中から参加した佐藤竜彦(Honda)は、3本塁打でパンチ力をアピールした。また、20歳の左腕・河野竜生(JFE西日本)は6試合で27回1/3を投げ、32奪三振で池田とトップに並んだ。嘉陽宗一郎(トヨタ自動車)は長身から投げ込む角度のあるボールでストッパーを務め、3セーブと結果を残した。そして、特筆すべきは12月9日に合流した山田義貴(西部ガス)が、8日間で3試合に先発。19回を投げて無失点の3勝と、ドラフト候補に名乗りを上げる成果を残した。

 ウエスタン選抜では、佐野皓大(オリックス)がトップの11盗塁をマークし、田浦文丸(福岡ソフトバンク)は7試合、16回を投げて防御率0.56の安定感。普段とは違う環境で奮闘したプロ選手は一軍定着、社会人はアジア王座やプロ入りを目指し、束の間のオフを経て2019年シーズンに臨む。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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