Yahoo!ニュース

2019年ドラフトの目玉を先取り【第44回社会人野球日本選手権大会展望】

横尾弘一野球ジャーナリスト
連覇を狙うトヨタ自動車の新人・嘉陽宗一郎ら、来季のドラフト候補に注目したい。

 トヨタ自動車が2度目の大会連覇を達成するか、都市対抗を制した大阪ガスが秋も頂点に立つか。社会人野球の2018年シーズンを締め括る第44回社会人野球日本選手権大会が、京セラドーム大阪で11月1日から12日間にわたって開催される。出場32チームのどこが栄えあるダイヤモンド旗を手にするかとともに、先日のドラフト会議で指名された12名の選手、また来年のドラフト候補になるであろう逸材のパフォーマンスも見どころになる。

“連覇”を狙うトヨタ自動車、大阪ガスに3名指名のHondaが軸

 2007、08年に次ぐ2度目の大会連覇を狙うトヨタ自動車は、ベテランのエース・佐竹功年を中心に、オリックス4位の左腕・富山凌雅、来年のドラフトを沸かせそうな187cmの長身右腕・嘉陽宗一郎ら投手力が充実。野手も、野球偏差値が極めて高い内野手の北村祥治を筆頭に、昨年の最高殊勲選手賞・多木裕史、パンチ力を備える水野一世ら粒揃い。都市対抗二回戦で惜敗した悔しさも原動力に、一回戦では東京ヤクルト5位の左腕・坂本光士郎を擁する新日鐵住金広畑を倒し、通算6回目の優勝にひた走りたい。

 阪神1位のヒットメーカー・近本光司を中心に、機動力を駆使した攻撃が持ち味の大阪ガスも、2年目の温水賀一とルーキー・阪本大樹の両右腕をはじめ、実績のある投手が揃う。峰下智弘ら20代後半の野手陣は都市対抗優勝で自信をつけており、投手戦でも打撃戦でも勝機を見出せる。史上4チーム目の夏秋連覇は射程圏内だが、一回戦で対戦する鷺宮製作所も都市対抗8強の実力派。目が離せない展開になりそうだ。

 150キロ超の剛腕・齋藤友貴哉が阪神4位、攻守にスピードのある遊撃手・木浪聖也が阪神3位、大型内野手の松田 進が千葉ロッテ7位と、大卒2年目の3名がプロへ巣立つHondaは、3月の東京スポニチ大会、4月の四国大会に優勝し、都市対抗では優勝候補の筆頭格に挙げられた。しかし、自慢の打線が不発で一回戦負けを喫しただけに、秋にかける思いはどのチームよりも強いはず。来年のドラフトで有力候補と目される左腕・東野龍二、日本代表の捕手・辻野雄大ら若い力で、2回目の日本一を目指す。ただ、一回戦の対戦相手・JR東海は都市対抗ベスト8の投手力を備える。難しい試合にどう臨むかにも注目したい。

2019年の指名解禁組も要チェック

 この3チームが優勝候補に挙げられるが、すべて後半ブロックに入り、勝ち上がっても準決勝までに潰し合う。そこで、前半ブロックに目を移すと、昨年の都市対抗覇者で、投打に安定した力を発揮しているNTT東日本、速球右腕の小久保 気、強打の三浦智聡らルーキーが次々と台頭している西濃運輸、ドラフト指名はなかったが、実力の高さは折り紙つきの左腕・高橋拓已、ルーキー右腕の草場亮太が成長している名門・日本生命が秋の王座を見据えている。また、来年のドラフトを展望すれば、東海理化の速球右腕・立野和明、JFE西日本のサウスポー・河野竜生、社会人野球表彰の対象となる公式戦で6本塁打を放っているパナソニックの大砲・片山勢三をはじめ、指名解禁になる選手の動きもチェックしておきたい。もちろん、今年は指名がなかった東芝の岡野祐一郎、Honda鈴鹿の平尾奎太らが来季に向けてどんなスタートを切るかも見逃せない。

 なお、公式サイトでは、大会の全31試合が無料でライブ中継される。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事