元・大阪近鉄の佐々木恭介監督が大和高田クラブを日本一に【第43回全日本クラブ野球選手権大会レビュー】

昨年の準優勝から一年、大和高田クラブを率いる佐々木恭介監督は歓喜の胴上げ。

 優勝監督インタビューに答えながら、佐々木恭介監督の目には光るものが見られた。そして、「さぁ、日本選手権です」と問われると、「この試合にかけていましたから、そんなことは忘れていました」と結ぶ。1996年から4年間、大阪近鉄で監督を務めた佐々木でさえ、これほど胸を揺さぶられる勝負。43回を数える全日本クラブ野球選手権大会は、それだけレベルアップしてきたという何よりの証拠だろう。

 奈良県大和高田市を本拠地に活動する大和高田クラブは、1996年に創部されると、2011年までに3回の日本一をはじめ、クラブ野球史に輝く実績を残してきた。2016年から佐々木がチームを率いると、その年にベスト8入り。4回目の優勝を狙った昨年は、首尾よく決勝に進出する。

 頂上決戦で顔を合わせた和歌山箕島球友会も、和歌山県有田市をホームに1996年に創部し、優勝3回と、互いにライバルとして切磋琢磨してきた。そんな両者による決勝は極上の投手戦を繰り広げ、9回を終えてもスコアレス。大会規定により、延長10回からタイブレークとなる。

決勝は昨年と同一カードのリターンマッチ

 表の大和高田クラブはタイムリーで2点を挙げるも、その裏の和歌山箕島球友会は粘り強く攻め、3点を奪って劇的サヨナラ勝ちで優勝する。クラブ選手権の優勝回数は、古豪・全足利クラブの10回が圧倒的に最多だが、和歌山箕島球友会のV4は、それに次ぐ単独2位となる。試合後に選手を集めた佐々木監督は「この悔しさを忘れず、来年こそは優勝しよう」と力強く語りかけた。

 それから一年。5年連続17回目の出場となる大和高田クラブは、一回戦で優勝3回の強豪・茨城ゴールデンゴールズを6対3で下すと、準々決勝では富士通アイソテックベースボールクラブに7対0の7回コールド勝ち。全足利クラブとの準決勝は、1対1で迎えた9回裏一死一、二塁で、代打に起用されたルーキーの肥田直斗がセンター左へ会心のサヨナラ安打を放つ。

 そして、決勝の相手は、佐々木監督が「来るものだと思っていた」という和歌山箕島球友会。リターンマッチである。しかし、試合の表情は昨年とは違った。

 1回表に一死二、三塁のチャンスを築いた大和高田クラブは、四番・廣井亮介の左犠飛で幸先よく1点を先制する。ところが、2回裏に先発の米倉大介がつかまり、長短5安打に失策も絡んで5点を失う。

 この重苦しいムードに喝を入れたのは、主将の金井春樹だった。

「前回の優勝も、決勝は1対5からの逆転だった。諦めずにやろう」

 2011年の優勝を知るベテランの言葉に若手も奮起し、3回表の2点をはじめ小刻みに反撃すると、8回表には6対6の同点となる。そうして、2年連続の延長タイブレークにもつれ込むと、10回表には準決勝まで8打数無安打、この試合も4打席ヒットなしの竹島貫太がレフトポール際に起死回生の3ラン本塁打を叩き込む。

 その裏、和歌山箕島球友会の反撃を1点に抑えた大和高田クラブは、7年ぶり4回目の日本一を成し遂げる。

プロ経験者の“本気”の采配で頂点に

 佐々木監督の“本気”を感じたのは二回戦だ。ルーキー左腕の本野一哉を先発に立て、序盤からの猛攻で6対0に。だが、5回裏に本野が二死一、二塁のピンチを招くと、あとワンアウトで勝利投手の権利を得るルーキーに交代を命じる。アマチュア野球は個人の記録ではなく、チームの勝利を追求する。新日本製鐵広畑(現・新日鐵住金広畑)出身の佐々木監督ならではと言える非情な采配が、この大会にかけるチームの思いを表現していた。

 さて、冒頭に書いたように、この大会の優勝チームは、11月に京セラドーム大阪で開催される第44回社会人野球日本選手権大会への出場権を得る。大和高田クラブは3回目の出場になるが、前回の2009年はTDKと三菱重工神戸(現/三菱重工神戸・高砂)に競り勝ち、ベスト8に進出。準々決勝ではJR九州に9回サヨナラの3対4で敗れたが、そのJR九州が優勝している。佐々木監督が、かつての本拠地球場でどんな采配を見せてくれるのかも含め、大和高田クラブの戦いぶりに注目したい。