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韓国に完敗した以上に残念だったこと【第18回アジア競技大会野球スーパーラウンド第1戦】

横尾弘一野球ジャーナリスト
熱戦が繰り広げられているGBKスタジアム。日韓戦なのに、二塁塁審が韓国とは……。

 第18回アジア競技大会の野球は、8月30日からスーパーラウンドが始まった。A組から日本が1勝0敗、中国が0勝1敗、B組からはチャイニーズ・タイペイが1勝0敗、韓国が0勝1敗で進出。別組の2チームと対戦し、勝率上位の2チームで決勝、同じく下位のチーム同士で3位決定戦を実施する。

 金メダルを目指す日本は、第1戦で韓国に勝ち、チャイニーズ・タイペイが中国に勝てば揃って決勝に進出するところだった。しかし、先発の佐竹功年(トヨタ自動車)がオールプロの韓国にソロ3発を浴びるなど、5回途中11安打5失点でKOされ、一次ラウンドでは絶好調だった打線も、ワンランク上の投球に翻弄されて1点しか奪えず、1-5で悔しい敗戦となった。

 31日にチャイニーズ・タイペイを破れば、韓国を含めた3強が2勝1敗で並び、当該チーム間の得失点差率で順位が決まる。一次ラウンドではチャイニーズ・タイペイが韓国に2-1で競り勝っており、韓国は得点6、失点3で確定。日本はすでに5失点しているため、韓国の決勝進出はほぼ確定と言っていいだろう。

 日本が決勝に進出するためには、チャイニーズ・タイペイに3点差以上で勝つことが条件になる。簡単なことではないが、昨年のアジア野球選手権大会でもチャイニーズ・タイペイからは2勝を挙げており、決して悲観する状況ではない。決勝で韓国にリベンジするためにも、総力戦でチャイニーズ・タイペイを倒したい。

 さて、韓国に敗れたのは残念だったが、この試合ではもっと残念なことがあった。日韓戦の二塁塁審を韓国、三塁塁審を日本の審判員が務めたことだ。ストライクとボール、アウトかセーフで局面がガラリと変わってしまう野球の国際大会で、対戦している国(地域)の審判員がジャッジすれば、正しく判定を下したとしても様々な憶測を呼ぶ。

 現状、アジアでは日本、韓国、チャイニーズ・タイペイの実力が抜きん出ているため、そのレベルでジャッジできるのも日本、韓国、台湾の審判員が大半。ゆえに、日本と韓国の試合は台湾の審判員が務めることになる。

オリンピック競技時代は中南米から審判員を招いていた

 そうした状況でさえ、「韓国の審判員はチャイニーズ・タイペイ寄りのジャッジをする」と言われたりすることがあるのに……である。今大会の日本は機動力を前面に出して戦っているが、この試合では勝負どころで二盗をしても、余程ゆうゆうとしたタイミングでなければ「セーフ」と判定されることはないだろうと思っていた。過去の大会を振り返れば、他国の審判員の技量や姿勢に泣かされたことは数え切れない。日本の審判員が常に技術を磨き、公平にジャッジしているのがバカらしくなるほどだ。

 野球が世界競技を視野に、オリンピック競技への採用を目指してから45年余り。だが、野球先進国の顔ぶれはさほど変わっていない。本当の意味でアジアの野球の普及・発展を実現させようとするのなら、審判員の充実や公式記録の整備などにも注力しなければいけない。各国(地域)での審判技術向上は必須だが、国際大会には中南米やヨーロッパなどから数名の審判員を招くべきだろう。

 実際、アジア選手権がオリンピック予選を兼ねていた時は、プエルトリコやキューバから技量の高い審判員が来日した。オフタイムのお世話は大変だったと聞くが、利害関係のない審判員に任せれば、際どい判定で物議を醸すこともなくなるはずだ。日本の逆襲とともに、そんなことを願わずにはいられない。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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