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4チームが勝ち残った東京勢に注目――第89回都市対抗野球大会はベスト8が決定

横尾弘一野球ジャーナリスト
都市対抗で初めてベスト8入りし、スタンドの声援に応えるセガサミーの選手たち。

 連覇を目指すNTT東日本が手堅く勝ち上がる一方、優勝候補の一角と目されたHondaが一回戦で姿を消すなど、波乱も見られた第89回都市対抗野球大会は、7月21日に二回戦を終えてベスト8が出揃った。注目すべきは東京勢の躍進だ。

 開幕戦に登場した推薦出場のNTT東日本は、いきなり越前一樹の2ラン本塁打など一発攻勢で5点を先行。東邦ガスに3点を返されるも、10年連続出場の表彰を受けた先発・大竹飛鳥から沼田優雅、末永彰吾の継投で幸先よく白星を挙げる。二回戦では三菱日立パワーシステムズと息詰まる投手戦を展開したが、7回表に長澤壮徒がソロ本塁打を放つと、以後も着々と加点してベスト8に一番乗りを果たした。

 9年ぶりの出場に東京第一代表で花を添えた鷺宮製作所は、5年ぶり出場の伯和ビクトリーズと対戦。3回表に1点を先制されるも、その裏に5安打と2四死球で4点を奪い、左腕の野口亮太が117球の熱投で一回戦を突破する。さらに、日本通運との二回戦では明治安田生命から補強した大久保 匠が6回途中まで3安打7奪三振の好投。打線の援護は2回表に先制した1点だけだったが、7回からは野口を投入して守り切った。

鷺宮製作所、セガサミー、JR東日本が4強入りを狙う

「今年は苦しいのでは」という下馬評を覆し、東京第二代表を勝ち取ったセガサミーは、大会前のオープン戦ではなかなか調子が上がらなかったというが、東京ドームに乗り込むと投打の歯車がガッチリと噛み合う。NTT西日本との一回戦は、打線が一巡目こそ抑えられたものの、二巡目に入った4回表に砂川哲平の二塁打から1点を先制。その後も7回を除いて得点を重ね、先発の森脇亮太も12奪三振でシャットアウト。8-0の完勝で滑り出し、二回戦でもHondaを倒したJR四国を7-1で退けて初の8強入りだ。

 第三代表の東京ガスは、一回戦でトヨタ自動車に1-2で惜敗したが、第四代表のJR東日本は若い投手が大舞台で輝く。一回戦の先発を任された19歳の大型右腕・太田 龍は、破壊力抜群の西濃運輸に対して真っ向勝負を挑む。3回途中から二番手に左腕の大澤信明を挟み、4回から登板したドラフト候補の板東湧悟も、回転のいいストレートを軸に緩急自在の投球を披露。結局、20歳の西田光汰が9回を3者凡退に斬って取るなど、東京ドーム初登板の5投手で完封。打線も小刻みに3点を奪って快勝する。そして、二回戦では板東が先発で躍動。新日鐵住金鹿島を7回途中まで4安打9奪三振で無失点に封じると、リリーフした西田も安定感抜群の内容で、2回表に挙げた虎の子の1点を守り、2年連続で8強に進出した。

アマチュア最高峰の熱戦を日曜日に堪能する

 このように、東京の4チームが準々決勝に駒を進める。NTT東日本は投打に勢いのある大阪ガス、JR東日本は東芝を倒して意気上がるJR西日本と“JR東西対決”。鷺宮製作所は近畿第一代表の三菱重工神戸・高砂、セガサミーはトヨタ自動車を完封したJR東海と、それぞれベスト4をかけて対戦する。

 21日の第3試合では、先陣を切ってNTT東日本が大阪ガスと激突。越前の3ラン本塁打でリードしたものの、6回裏に守備の乱れもあって3-5と逆転を許すと、8回表に1点差まで詰め寄るも届かず。連覇への道は断たれたが、22日は東京勢3チームが続けて4強入りに挑む。

 今大会から、スターティング・ラインアップの発表では選手の顔写真がオーロラビジョンに映されている。第100回の夏の甲子園が開幕する前に、日曜日に東京ドームで、アマチュア野球最高峰の熱戦を愉しむのはいかがだろうか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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