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プロも注目する小さなエースと大型スラッガーが日本一を目指す――第89回都市対抗野球大会東京二次予選

横尾弘一野球ジャーナリスト
投打の柱になる東京ガスの2年目コンビ。笹川晃平(左)と臼井 浩(右)

 社会人野球の華・都市対抗で最多優勝を誇る神奈川(西関東)、第2位・東京の二次予選は、ともに5月19日に幕を開ける。西関東は例年通り、東芝、三菱日立パワーシステムズ、JX-ENEOSの強豪3チームが2つの代表権を争う。東京は、代表枠の見直しにより、隔年で3と4の変動制から4に固定された。しかも、昨年優勝のNTT東日本が推薦出場のため、東京ガス、JR東日本、セガサミー、鷺宮製作所、明治安田生命の5チームが4つのイスを目指す。数字の上では、代表権獲得の希望は大きいと思える。だが、「1チームしか敗退しないという重圧は想像以上。予選の厳しさに変わりはない」と監督や選手たちは口を揃える。

 そんな東京二次予選で、プロ球団のスカウトが熱い視線を送るのが東京ガスだ。1927年創部の古豪で、81年にはベスト4に進出していたが、2008年までの通算成績は11勝12敗。だが、2009年に菊池壮光監督が就任すると、榎田大樹(現・埼玉西武)、美馬 学(現・東北楽天)をはじめ投手力を中心とした堅実な試合運びでベスト8入りし、昨年まで9年間で14勝8敗と目立つ実績を残して優勝候補の一角に食い込んでいる。今春に就任した山口太輔監督もチーム力を着実に伸ばしており、悲願の日本一に突き進むチームで投打の柱になっているのが臼井 浩と笹川晃平の2年目コンビである。

日本代表でも活躍する投打の柱にプロも注目

 168cmと小柄な臼井は、「美馬さん、山岡(泰輔=現・オリックス)と小柄な投手が力をつけるチーム」という点に着目して入社を志願。昨季前半は主にリリーフ起用され、静岡大会では最高殊勲選手賞に輝く活躍を見せる。都市対抗後からは先発も任され、日本選手権一回戦ではNTT西日本を相手に1-0のシャットアウト勝利を挙げた。

 一方、182cm・86kgと恵まれた体格で、プロが求める右の長距離砲として成長している笹川は、浦和学院高3年時に大谷翔平(現・エンゼルス)らとともに18U世界選手権、東洋大2年時には21Uワールドカップと世界の舞台を経験。昨年は、ルーキーながらアジア選手権の日本代表に選出され、四番に抜擢されて優勝に貢献した。

 そうした実績が評価され、アジア・ウインター・ベースボールに揃って出場。臼井は先発2試合を含めて3試合に登板し、12イニングスで16奪三振、防御率0.75と安定した投球を見せ、笹川は9試合で打率.444、2本塁打14打点と四番の期待にしっかり応える。

 8月にインドネシア・ジャカルタで開催される第18回アジア競技大会での日本代表入りも有力視されているが、日の丸を背負うためにも都市対抗予選では冴えたパフォーマンスを見せたいところだ。

 なお、最近の東京二次予選は、神宮球場と大田スタジアムで実施されてきたが、今年は大田スタジアムが大幅な改修工事に入ったこともあり、メットライフドームと府中市民球場で行なわれる。球場が変わり、しかも府中市民球場の内野は土だから、各チームは府中市民球場でオープン戦を行なうなど準備に余念はないようだが、臼井や笹川ら豊かな将来性を備えた選手の活躍とともに、1チームしか敗退しない予選がどう展開されるのか興味深い。東京二次予選の日程は以下の通り。

【第89回都市対抗野球大会東京二次予選】

◆一回戦(以下、府中市民球場)

5月19日 10:00 鷺宮製作所×REVENGE99

5月19日 13:00 日本ウェルネススポーツ大学・東京×JR東日本

5月20日 10:00 セガサミー×明治安田生命

5月20日 13:00 THINKフィットネス GOLD’S GYMベースボールクラブ×東京ガス

5月21日 敗者復活一回戦2試合

5月22日 準決勝2試合

5月23日 敗者復活二回戦2試合

5月24日 10:00 第四代表決定トーナメント一回戦

5月24日 13:00 敗者復活三回戦

◆第一代表決定戦(以下、メットライフドーム)

5月28日 18:00

◆第二代表決定戦

5月29日 18:00

◆第三代表決定戦

5月30日 18:00

◆第四代表決定戦

5月31日 12:00

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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