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中日ファンは要注目!! 社会人の速球王・勝野昌慶(三菱重工名古屋)が3年目もロケットスタート

横尾弘一野球ジャーナリスト
150キロ右腕の勝野昌慶(三菱重工名古屋)は、東京スポニチ大会でも好投を見せた。

 今季の社会人野球では、大卒2年目でドラフト解禁になる投手が注目されているが、昨年ともに1位指名された田嶋大樹(JR東日本-オリックス)、鈴木博志(ヤマハ-中日)に続く高卒3年目のドラフト解禁組にも逸材がいる。

 そのトップランナーが、三菱重工名古屋の右腕・勝野昌慶だ。

 岐阜県の中南部・可児市出身で、土岐商高では入学直後からマウンドに登る。2年秋には岐阜県3位で東海大会へ進み、一回戦で愛工大名電高にサヨナラ勝ち。しかし、続く二回戦で堀内謙伍(現・東北楽天)がいた静岡高にコールド負けし、翌春の甲子園への切符は逃してしまう。

 この時、東海大会で準優勝し、翌春の甲子園では8強入りした県岐阜商高の高橋純平(現・福岡ソフトバンク)が大きな注目を浴びたが、当時から勝野を知るスカウトによれば、「しっかり指にかかったストレートは甲乙つけがたかった」という。春の岐阜県大会では準優勝したものの、夏の三回戦で羽島北高に敗れると、さらなる飛躍を目指した勝野は三菱重工名古屋へ入社する。

「社会人の打者はミートする技術が高く、選球眼もいい。でも、自分のピッチングをすれば何とかなるんじゃないかとは思いました」

 ベテランならば、まだ調整段階にある3月27日の東海地区春季大会準決勝で早くも先発に抜擢されると、力強いストレートを軸に好投。その後も着実に実績を重ね、都市対抗東海二次予選では、負けたら敗退となる第六代表決定トーナメントで2試合に先発するなど、一気に投手陣の柱になっていく。

 そうして、都市対抗一回戦でも先発を任され、信越硬式野球クラブを相手に6回途中まで1安打無失点。東京ドームでのデビューを白星で飾り、U-23ワールドカップの日本代表にも選出される。同世代のプロと過ごした時間は大きな刺激になり、勝野自身もオーストリア戦に先発して勝利投手に。盛りだくさんの経験は、大きな自信となった。

アジア・ウインター・ベースボールで150キロをマーク

 昨年も順調に力をつけたが、都市対抗東海二次予選の登板で右ヒジに違和感を覚えたため、大事を取って夏場は休養する。それでも、日本選手権東海最終予選では本来の投球を見せ、シーズンオフも日本代表候補としてアジア・ウインター・ベースボールに出場した。

 自チームでは先発だが、日本代表ではリリーフ、しかもストッパーとして期待されている。プロを相手に痛打を見舞われる場面もあったが、3位決定戦の1点をリードした9回表一死一塁で登板すると、強気のストレート勝負で最後の打者を三振に討ち取る。主催者の発表では、勝野のストレートは日本代表で唯一150キロをマークした。

 確かな足取りで迎えた3年目。シーズンの幕開けとなる東京スポニチ大会では、昨年の都市対抗で準優勝した日本通運に1失点完投勝利と、これ以上ないスタートを切った。それでも、勝野には気負いがまったくない。

「高卒で社会人3年目になれば、誰でもドラフト指名は解禁になる。周りは注目するかもしれませんが、そういうことに踊らされず、昨年までと同じように自分らしいピッチングでチームの勝利に貢献する。そうやって野球を楽しみたいと思っています」

 高校時代から「試合前に緊張感があったとしても、マウンドに上がれば冷静でいられる」というメンタルも、着実な進化を支えている。すでに多くのスカウトが高い評価を口にしているが、特に若い投手の成長とともに上昇気流に乗りたい中日は、今年の鈴木博志に続いて東海圏出身の逸材を徹底マークすべきだろう。ファンも要注目だ。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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