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【第88回都市対抗野球大会第1日】トヨタ自動車が苦しみながらも連覇へ発進

横尾弘一野球ジャーナリスト
第88回都市対抗野球大会の開会式で宣誓するトヨタ自動車の佐竹功年主将。

社会人野球の日本一を決める第88回都市対抗野球大会が東京ドームで開幕。第1日は、午後4時50分から出場32チームを集めて開会式が行なわれた。

昨年初優勝したトヨタ自動車の佐竹功年主将が黒獅子旗を返還し、選手を代表して「社会人野球の文化を50年、100年後の未来につなげるためにも、最後まで全力でプレーします」と力強く宣誓した。

一回戦/豊田市・トヨタ自動車 5×1 福岡市・九州三菱自動車

そして、午後6時30分には、連覇を目指すトヨタ自動車と、九州三菱自動車による開幕戦(一回戦)がプレイボール。トヨタ自動車の桑原大輔監督は、黒獅子旗返還や選手宣誓の大役をこなす佐竹が、大黒柱とはいえ先発の調整をするのは難しいと考え、昨年の故障から見事に復活した川尻一旗を先発に立てる。対する九州三菱自動車は、予選でもフル回転した絶対的エースの谷川昌希がマウンドに登った。

トヨタ自動車は川尻が初回を無難に立ち上がると、その裏に先頭・藤岡裕大が四球で歩き、犠打野選で無死一、二塁。さらに、三番・河原右京のバントを処理した捕手が三塁へ悪送球するが、一気に本塁を狙った藤岡がタッチアウトになり、後続も連続三振に討ち取られて無得点に終わる。すると、直後の2回表二死から、ルーキーの八坂健司が都市対抗初打席でソロ本塁打を放ち、九州三菱自動車が先制する。

大会直前の九州北部豪雨で、九州三菱自動車のグラウンドがある福岡県朝倉郡は大きな被害に見舞われた。壮行試合はすべて中止になったが、「被災した方々に少しでも勇気を届けられれば」と奮起した谷川は、4回までトヨタ自動車の強力打線に安打すら許さぬ力投を見せる。

だが、嫌な雰囲気が漂い始めた5回裏、トヨタ自動車の七番・西潟栄樹が持ち前のパワーでライトスタンドに同点ソロ弾。その後も谷川から連打で得点できなかっただけに、シャットアウト負けを逃れる値千金の一打であった。

1対1のまま試合は動かず、延長10回からトヨタ自動車は佐竹を投入。テンポのいい投球で攻撃のリズムを引き出そうとしたが、打線がどうしても谷川を攻略できず、12回からタイブレークに突入する。一死満塁から攻撃するタイブレークは、両チームとも一番から攻撃を始めたが、佐竹はキレのあるストレートを軸に2者連続三振。その裏のトヨタ自動車は、藤岡がカウント3ボール1ストライクから高目に甘く入ったストレートを振り抜くと、打球はライトスタンドへ。劇的なサヨナラ満塁本塁打で、トヨタ自動車は連覇への道を走り出した。

惜しくも白星を手にすることはできなかったが、13三振を奪った谷川の156球も素晴らしかった。

本日より、都市対抗の熱戦の模様をデイリー・レポートでお届けする。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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