前回に引き続き、『ジム・ロジャーズ 大予測:激動する世界の見方(東洋経済新報社) 』から天才投資家の日本経済の長期的な展望をお伝えします。

危機意識が低い日本人 債務と少子化が日本を滅ぼす

「1968年に世界第2位の経済大国となった日本は、50年以上の長きにわたって繁栄してきた。先の対戦、いやその前から大変な問題を何度も乗り越えてきた。しかし、現在、直面している重大な問題に対して、目を背けすぎだ。日本の借金は日々膨れ上がっている一方で、人口は減り続けている。出生数も大きく減少していて、数年先はともかく20〜30年後には大変な状況になる。人口推計はあらゆる将来予測の中で、もっとも精度が高い予測と言える。」

政府は事業規模約117兆円の緊急経済対策を閣議決定しましたが、諸外国と比べると対応の遅さが目立ちました。日本は既に巨額な債務を抱えおり、財政的な事情も大きかったと推測されます。

新型コロナウィルスの対策を早期から大規模に行ってきている香港やシンガポールなどは平時に財政黒字なので有事にはそれまでの貯めてきた財源を速やかに使うことができました。自粛トレンドは1年2年と続く可能性もあり、債務が少なく、資産が多い方が当然有利です。国民に更なる自粛を要請するには追加の経済対策を考える必要性も出てくるでしょうが、これ以上債務を増やし続けると日本国債の格付けにも影響を与える可能性もあります。また、デフォルトを起こす企業が増えれば金融危機のリスクも上昇します。

「日本の将来を考えたとき、ものすごい勢いで子供を増やすか、移民を受け入れるか、とんでもないスピードで借金を減らすかしない限り、日本が長期停滞から脱する見通しは絶望的だ。若者が減って、高齢者が増える。社会保障のサービス水準が変わらないとすると、数少ない若者に重税を課さない限り借金は増え続ける。誰にでもできる未来予測だ。」

ロジャーズ氏は続けます。

「このままいけば、日本には恐ろしい未来が待っている。すぐに消滅することはないが、外資に買われまくるといったかたちで、実質的に国家が維持できなくなる可能性もゼロとは言えないだろう。」

冒険投資家として知られるロジャーズ氏は数多くの国を旅し、日本より素晴らしい国はないと言います。また、富士山も登ったことがあり、また日本に行くことを心待ちにしているようです。

「だが、国家の盛衰は必ず起こり、転落し始めると一気に衰退することを歴史は教えてくれる。あなたが1919年にイギリスを訪れたならば、こんな素晴らしい国は他にはないと言っていただろう。その頃のイギリスは世界ナンバーワンの国で、金融、ものづくり、文化の面でも世界をリードする国だった。

いまでもイギリスは良い国には変わりない。しかし、イギリス人の暮らしは1919年から低迷し続けていて、1976年にはIMFに助けられるところまで没落してしまった。イギリスも日本と同じように「変化」を嫌ったからだ。」

変化を恐れる日本が変われるのかが鍵

ロジャーズ氏は新型コロナウィルスによって社会革命とまでは行かなくても、変化をもたらしていると言います。

「数年、数十年かけて怒るべき変化を早く始めさせる作用はあるだろう。通常であれば、在宅勤務しない人の在宅数が急激に増えた。あるいは、ネット通販やウーバーイーツが爆発的に拡大しているなどの変化が怒っている。」

しかし、日本には紙やハンコの文化、マイナンバーの紐付けが整っていない、行政への問い合わせもメールではなく基本電話など諸外国と比べるとスピードを阻害する要素が残ります。

「百歩ゆずって、「ゆっくり」と変わり始めているとしよう。しかし、「ゆっくり」が問題なのだ。社会保障にしても、少子化対策にしても同様で、非常にゆっくり変わっている間に人口は減り、借金は増えて行く。その間に日本は沈没してしまうだろう。」

日本はコロナ危機を機に大きく変われるかが問われそうです。

海外に目を向けなければ、日本は縮小していくだけ

「経済が好調で、国が上昇基調にあるときは、外国人のことなど気にしなくてもよい。特別な関心を示さなくても、向こうから来たいと言ってくれるからだ。しかし、衰退した国に、外国人は来ようとは思わない。ましてや、日本が停滞している一方で、中国や韓国が成長し外国人にとっても魅力的な国になっている。だから、日本にとってそう多くの時間があるわけではないのだ。」

移民を受け入れて成功した例として、アメリカやシンガポールを挙げ、外国人を拒んで衰退した国としてミャンマー(旧ビルマ)を挙げることができます。「シンガポールで一生懸命働けば自国で家が建つ」という外国人労働者は非常に真面目に働いています。もちろん日本も水面下では外国人の受け入れを増やしていますが、人口に対して少な過ぎると言います。ドイツのように急激に数を増やし過ぎて問題が起きた例もあるので、今から受け入れを増やしていく必要があると言います。

裕福な国の二代目三代目は、徐々に働かなくなっていく傾向があると言います。「売り家と唐様で書く三代目」という表現に似た英語や中国語の表現もあり、どの国でも先代がとんでもないハードワーカーで資産を築いても次の代以降になくなってしまうという意味です。ハングリー精神にあふれ、勤勉でよく働く外国人を受け入れたほうがよいということです。

東京オリンピックはむしろ中止の方が良い理由

「オリンピックが経済的に国民のためになったことはない。オリンピックを誘致し開催することで、政治家は票を得ることができる。また、スポンサー企業や建築業など関連ビジネスは多くの収益をあげるかもしれない。しかし、過去にオリンピックで救われた国など、まったく存在しない。これは疑いようのない事実だ。なぜなら、オリンピックというものは、債務を増やすものであって、いずれどこかで国民がツケを払うことになるからだ。」

ロジャーズ氏は続けます。

「日本のみなさんは、オリンピックが開催されるかどうかが心配だろうが、それよりも、その後の債務のことをもっと心配すべきだと言いたい。」

ロジャーズ氏の意見は全くぶれず、少子化対策と移民政策(同時に財政の立て直し)に取り組むべきだと言い続けています。政治家は目先の選挙のことしか考えていませんが、日本を再生させるには長期的な政策が必要だと強調します。

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