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ジム・ロジャーズ大予測 金融危機は必ず起きる

花輪陽子シンガポール在住FP(CFPⓇ・1級FP 技能士)
カメラマン 原隆夫 シンガポールにて撮影

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。春節前と3月中旬に2度、シンガポール在住世界三大投資家のジム・ロジャーズ氏に再インタビューをし、『ジム・ロジャーズ 大予測:激変する世界の見方』を緊急出版することになりました。コロナ危機により変わり果てた世界経済を天才投資家はどのように見ているのか、そのエッセンスを紹介します。

世界が不況に突入することは避けられない

「世界が不況に突入することは、もはや避けられない。最大の理由は世界中の国が経済を停止させ、国境を閉じてしまったからだ。」

中国ではロックダウンが解除され始め、欧米でもロックダウンを緩和しようとしていますが、それでも国境を以前と同じように開くには相当な時間がかかるでしょう。

世界の株式市場は連日乱高下をくり返し、ニューヨーク株式市場では3月16日に、1日で2997ドル下落という記録的暴落に見舞われました。実体経済の落ち込みも深刻で、米セントルイス地区連銀ブラード総裁は、アメリカの4〜6月期のGDPはマイナス50%、失業率は30%に達する可能性もあると発信しています。

ロジャーズ氏はインタビューの中で、コロナ危機については、過剰に反応しすぎているとしながらも、人々は実際に「恐怖」に支配されてしまっており、世界経済はパニック的な大混乱に陥っているのは事実だと述べていました。

次の金融崩壊が私の人生で最も大きなものになる

「おそらく、株価の値下がりは今後も続く。50%、60、70%、いやそれ以上だろう。実体経済の落ち込みは、いずれ金融機関の破綻をもたらし金融システム不安を引き起こす。いつとは断言できないが、それは必ず起こる。」

アメリカの景気成長が10年以上続きましたが、これは過去でも最も長い連続記録でした。特に下落直前の2〜3ヶ月に至っては一直線に上昇していました。そのタイミングでFRBは金利を引き下げました。そこから新型肺炎からの経済急停止によって、株価は「I」の字に急落しました。これほど早く、大きく相場が下げたことは初めての経験だと言います。

ロジャーズ氏は次の金融危機が過去最悪になる理由として、世界中の国が非常に大きな債務を抱えている問題を指摘しています。リーマン・ショックの時は中国がキャッシュを抱えており、それによって危機を脱出することができました。しかし、その中国も今では大きな債務を抱えています。

アメリカの中銀のバランスシートはここ12年で500%も急拡大しています。この数字は歴史上聞いたことがない莫大なものです。日本でも日銀が無制限のお金を刷って、ETFやREITなどを買い増し、債務をさらに増加しています。

「中央銀行も無限に債務を増やし続けることはできない。いつの日か終わりが来る。ある日突然、相場参加者のモメントが変わるときが必ずやって来る。その局面では、もはや誰も世界経済を救うことはできない。次の危機はそうした最悪の危機になると見ている。」

航空会社、シェール関連企業の破綻は避けられない

ロジャーズ氏は破綻の連鎖は小さなところから起きると言います。リーマン・ショックの際にはアイスランドやアイルランドが破綻しましたが、そのことを知っている人はあまり多くありませんでした。ノーザンロックやベアー・スターンズショックが起き、リーマンが破綻した際には日本のメディアでも大注目をされました。

現在はインドの銀行などで債務不履行となっています。また、米中堅シェール企業ホワイティング・ペトロリアムが破綻しました。米デルタ航空はジャンク級に格下げされ(フィッチ)、豪ヴァージン・オーストラリア航空が政府の支援を得られず任意管理手続きになりました。航空会社や以前からクレジットリスクが指摘されていたシェール関連企業の破綻は避けられそうにありません。

こうした小さい綻びはいずれ大きな問題に繋がると言います。現在は連銀が大量のお金を刷って、問題をもみ消していますが、金融危機はもう始まりかけているのです。そして、連鎖して世界中に飛び火が来ると言います。

中央銀行の無制限の緩和政策によって、当面はラリーが続くかもしれない

「世界の中央銀行は、なりふり構わずいろいろな対策を打っている。それが次のバブルを生む可能性がゼロとは言えない。事実、リーマン・ショックの際、「100年に一度の経済危機」と言われながら、その後、わずか数年で、それを上回る規模の新たな金融バブルがつくられることになった。」

ロジャーズ氏は続けます。

「このような一連の誤った政策が功奏して、大きなラリー(再上昇相場)が起こるかもしれない。FRBだけでなく、世界各国の中央銀行が揃って金融緩和に踏み込んでいることも、それを後押しすることになる。世界の中央銀行は、足並みを揃え、これまで世界市場最も大量のお金を刷ってきたにもかかわらず、今回の騒動でさらなる量的緩和を発表してさらに大量のお金をバラまこうとしている。」

空前の危機にあって、個人投資家はどのように行動するべきでしょうか。皆が、長期投資をして、株式インデックスの積立をし続ければ放ったらかしでもお金持ちになるという時代はコロナ前の常識でした。仮にこの上昇相場が当面の間続いたとしても、実体経済の悪化から金融危機が引き起こればとんでもないクライシスに繋がる可能性もあります。十分に注意をしながら慎重に投資対象を選び、相場を注意深く監視する必要がありそうです。

シンガポール在住FP(CFPⓇ・1級FP 技能士)

外資系投資銀行を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。2015年よりシンガポール在住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』 (講談社+α新書)など著作多数。日本テレビ「有吉ゼミ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数。花輪陽子のシンガポール富裕層の教え https://www.mag2.com/m/0001687882.html 海外に住んでいる日本人のお金に関する悩みを解消するサイトを運営 https://100mylifeplan.com/

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