税金がおトクなNISA、落とし穴も3つ
人生にかかるお金は莫大ですが、会社員の収入は増えていきません。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、2012年の平均給与は409万円と15年前の1997年と比べて約60万円も減少しています。お金を育てていくためには資産運用も少しずつ考えていきたいところ。剛力彩芽さんがテレビCMをしている、「(NISA/ニーサ) 少額投資非課税制度」が2014年1月から始まるということで、資産運用をする上で税金が有利な制度について学んでいきましょう。
資産運用や税金と言われても、そもそもよく分からないという人も多いかもしれません。身近なところで考えると、銀行預金の利息にも税金はかかっているんです。金融広報中央委員会の2012年度の調査によると、平均的な貯金額(貯金ゼロを含む)は30代のひとり暮らしで499万円、30代の2人以上世帯で406万円です。たとえば、500万円を利息0.02%の普通預金に1年間預けた場合の利息は1000円程度です。さらに、利息から税金として20.315%(※1復興特別所得税も含む)が差し引かれると、手取り額はたったの797円程度になってしまうのです。
もちろん株や投資信託の売却益などにも税金はかかります。上場株式や公募株式投資信託の場合、2013年12月末までは売却益や配当益に対して10.147%(※1)課税されます。しかし、2014年からは現在の証券優遇税制が終了し、20.315%(※1)の課税になります。たとえば、アベノミクスで100万円の元本で100万円の利益が出ているAさんの場合、今年中に売却をすれば手取りは190万円程度、来年以降なら180万円程度ということになり、手取りが10万円程度変わってくるのです。しかし、2014年1月から始まるNISAを活用すれば、同じ条件なら手取りは200万円ということになるんです。
NISAをざっくりと説明すると、株式投資に対する収益(配当や売却益)が年100万円(最大で500万円)までかからないという制度です。非課税で運用できる期間は5年間で繰り越せば10年まで延長可能です。投資対象は上場株式、公募株式投信、ETF、REIT等で、外国株式や海外ETFも対象になります。NISAと似ていて非課税の優遇が多い「確定拠出年金制度」の場合、原則60歳まで途中引き出しができないのですが、NISAの場合はいつでも途中売却が可能です。ただし、途中で売却をすると、その分の非課税枠を再利用することができません。
NISAの3つの落とし穴
税金が有利なNISAですが、デメリットもあります。今回は代表的な落とし穴を3つご紹介しましょう。一番目は、売却損が出たときには制度のメリットを生かすことができないということ。NISA口座で運用している株式などを売却して損失が出た場合、損失はないものとみなされます。そのために、特定口座など他の口座の譲渡益や配当と損益通算を行ったり、損失の繰越控除(確定申告を行うことで損失を3年間繰り越せる)を行ったりすることはできないのです。
二番目は、特定口座や一般口座に振り替えた場合の取得価格について。NISA口座で株式を保有していたものの、非課税期間が終わったという場合などは特定口座や一般口座に振り替えることはできます。しかし、振替を行う場合、取得価格は振替日の時価となるので注意が必要なのです。例えば、100万円で取得した株式が90万円になって、売るに売れずに特定口座に振り替えた場合、取得価格は90万円になるのです。その後、株価が100万円まで回復した場合は税金がかかってしまいます。
三番目は、NISA口座で保有する株式は、信用取引や先物OP取引の代用有価証券として利用できない予定だということです。信用取引きなどをしていて手持ちの資金や株式が少ないという人には少し痛いかもしれません。
NISAの制度上のメリットを活かすには、割安なときにNISA口座で株式を購入して、中長期的に保有して利益が出てきたら売却をすることです。一度に購入したり、非課税枠を全部使い切る必要はないので、毎月1万円ずつ、ボーナスで5万円など無理のない金額でコツコツ積み立てをするのもよいでしょう。NISA口座は銀行や証券会社などの金融機関で開設が可能です。1人1口座という制約があり、今のところ複数の金融機関でNISA口座を開けないために、商品ラインナップ、手数料、使い勝手などから慎重に金融機関を選びましょう。