もしアメリカが北の核保有を認めたら?日本はどうする?

(写真:ロイター/アフロ)

 9月7日の記者会見でトランプ大統領は、北朝鮮に対して軍事力行使のオプションはあるが、必須ではない、と語っている。9月9日、北朝鮮は再度、実験に踏み切るとの予測もあるなかでの発言である。北朝鮮にとって核実験はチキン・ゲームでもなく核を持つための真っ向真剣勝負である。9月3日6回目の核実験の成功は、北朝鮮が核保有国であることを、もはや無視できない状況であることを知らしめた。もはや、北に核爆弾を飛ばす能力はないと言う前提で議論するできない状態だ。今まで蓋をしてきた、北朝鮮が核を持った時、さらには、アメリカ、国際社会がその状況を認め受け入れた場合のシナリオを日本は真剣に考える時がやってきている。

北朝鮮が目指すはパキスタン

 北朝鮮にとっての国是は、金日成時代から核を持つことであることは明白だ。9月9日にミサイル発射の兆候があると言う記事が流れていることもその証左であろう。一連のミサイル実験も核実験もアメリカに対する挑発でもチキン・ゲームでもない。核保有国になるという目的達成のために一心不乱に駒を進めてきただけだ。チキン・ゲームのように止めてほしいと思っていないし、他の物を手に入れたいから挑発しているわけではない。北朝鮮にとっては真剣勝負なのである。

 チキン・ゲームや挑発であれば交渉の余地があろうが、核保有国になることが真の目的なのだから、それ以外の何を持ってしても北朝鮮にはまったく交渉する気がない。食糧が欲しいわけでも、エネルギー援助が欲しいわけでもない。

 リビヤのガタフィが、もし核保有していたら、彼は今も健在だったのではないか、イラクのフセインが核保有していたら、アメリカは湾岸戦争もイラク戦争もできなかったのではないか、と北朝鮮は考えてきたわけだ。核を持ったパキスタンはまさに目指す道ということになる。核保有することが北朝鮮にとっては最も安全なのである。

 実際、ワシントンでは、北朝鮮への軍事作戦は最初の核実験を行った1994年ならば可能であったが、今、北朝鮮には危険すぎるという意見が、最近のワシントンでは常識のように耳に入ってくる。つまり、アメリカはアメリカと同盟国の土地を北朝鮮が攻撃しない限りは、北朝鮮への軍事行動は消極的にならざるを得ない状況にまで北朝鮮の核開発は進んでいるとみられているのである。6回目の核実験を受けてマチス長官も「大規模な軍事レスポンス」を明言したが、アメリカまたは同盟国の土地を攻撃した場合と条件をつけていた。

経済制裁は有効か?

  アメリカは石油の輸出禁止、金正恩の資産凍結など最大限に厳しい経済制裁案を提示する。だが、経済制裁が戦争回避の効果を上げた例はあるだろうか?経済制裁ではないが、敢えて言えば、ソ連の崩壊であろう。極端な軍事開発と計画経済で経済が立ち行かなった。だが、北朝鮮の気質を考えると、プーチン大統領が言うように「草を食べての核開発」を続けるだろう。

 中露は、アメリカが提示する強力な経済制裁に消極的である。アメリカ案が実行されるかどうかも疑問であるが、もし、できたとしてもさらなる疑問が持ち上がる。北朝鮮はすでに小型化した核爆弾も作れていると言われている。経済制裁を強化すると、これを輸出する可能性がでてくる。北朝鮮がISISとテロ組織に小型核爆弾を輸出すると、それはアメリカにとってはより現実的な脅威が増したことになる。世界も更なる不安にさらされる。北朝鮮が核保有することはアメリカにとっては直近の危機ということになる。強力な経済制裁は効果をあげないどころか国土安全保障への脅威を増すことにもなりかねない。

軍事活動か直接対話か?

 核保有国であることを認められることが国是である北朝鮮の立場で合理的に考えれば、アメリカとその同盟国の土地をミサイルで狙うことはないと思われる。そうなると、結局は北朝鮮が核保有し、朝鮮半島の非核化を目指す国々は経済制裁を続けると言う状況が続く。

専門家ほど、北の核保有は現実で、もはや、経済制裁を行いながら核の放棄を訴え続けるしかない、つまり、北が核を持つことを無視するのではなくアセス、状況認識するしかない、と考えている。6回目の核実験以後、アメリカが経済制裁を強めることを主張するのはここに理由がある。

 トランプ以外の大統領であれば、ここにとどまるであろう。またはクリントン大統領のように早々に経済制裁を緩和し、核を輸出しないように核保有社会の仲間に入れるとも考えられる。

 トランプ大統領が伝統的なアプローチに従う場合、結果、北朝鮮が核保有国で認めるというシナリオもないわけではない。スイスが仲介を申し出ている。ロシアは直接対話しか解決できないと言っている。核保有が国是の金正恩が核保有で譲歩することはあり得ないだろう。それがわかっていて直接対話であるとしたら、核保有は認めるが核の輸出は絶対にしないと言う取り決めが現実的になる。180度の転身とも見紛う芸当も芸術的な取引を目指すトランプ大統領ならあり得るかもしれない。

 だが、アメリカの大統領はトランプである。トランプ大統領の決定は誰にも計り知れない。トランプ大統領は、自分にはほかの大統領ができないことをやってやる、という強烈な自負がある。通常の大統領は、先制攻撃を受ければ反撃するが、日本と韓国に甚大な被害がでる先制攻撃は避けるものである。だが、ISISの存在とトランプ大統領の性格を考えるとこのまま容認するわけではないという予測も可能になる。

 

どうする日本?

 さて、日本はどうしたらいいのか?

もし北朝鮮がミサイルをアメリカと同盟国の土地に落としたとしたら、日本はアメリカの決定に寄り添って腹を括ることになるのだろう。

 だが、理性的に考えれば、北は核保有を見せつけるための実験にとどまる。

 この場合、日本はどのように対処すべきであろうか?

もし、経済制裁に効果があがらず、結果としてアメリカが核保有を認めた場合、バランスを保つために日本は核保有まで含めた軍事力強化への道を歩むのか。すでに石破茂議員がこのことについては言及している。または、ミサイル防衛の強化でとどまるのか?もし、米中で話し合い、北の核保有を認め、かつ韓国と日本の核保有は認めないと早々に取り決めてしまうかもしれない。その場合はどうするのか?

 米人の安全保障の専門家は、「日本人は中国と北朝鮮に対する安全保障についてアメリカに聞きにくるが、それだけでいいのか?不安ではないのか?」と驚いていた。