いなくならないトランプ大統領の見方と付き合い方

ミズーリ州で減税について演説する(写真:ロイター/アフロ)

 

ダメって何?弾劾?レームダック?

 「もうトランプ大統領はだめでしょう。」と幾度となく聞かれる。そのたびに私は「だめの意味はなんでしょうか?」と聞き返す。

トランプ大統領はダメダメ、という会話で終始することが目的であるならば「混乱してますね」で返せばいいだろう。だが、現実的に今のアメリカとどう対峙すべきかという視点で見ると、簡単に「だめ」と言って思考を止めることは出来ないからだ。

まず、弾劾裁判であるが、共和党が上院も下院も握る議会では、トランプ大統領が弾劾裁判で可決されることは現実味が少ない。余程の違法な行為が明らかになるか、中間選挙で民主党が圧勝しない限り、現実的には弾劾は難しい。

トランプ大統領の支持率は歴史的低さを保っているが、支持率と弾劾裁判は連動するわけではない。クリントン大統領の2期目は高支持率を維持していたが、「不適切な関係」で知られるモニカ・ルインスキー事件で、弾劾裁判が行われ下院で可決され、上院で否決され弾劾を免れた。弾劾裁判が行われたのは、議会をクリントン大統領のライバルである共和党が握っていたからだ。

 では、レームダックされているかというと、トランプ大統領を批判する記事にあっても「レームダック」という言葉は見ないのが現実だ。トランプ大統領に「フェイク・ニュース」と名指しされる関係のCNNであっても、トランプ大統領が「カリスマ」を持つことは認めている。フランスのマクロン首相がトランプ大統領の隣の位置で写真を撮るために駆け寄る姿を見てアンダーセン・クーパーは、「トランプ大統領にカリスマがあることは確かだ」という表現をつかっていた。

 トランプ大統領が「大統領職から退くこと」も「レームダック」になることも、今すぐの現実ではないのが現状なのだ。

「選挙」で分析すると強いトランプ

 どこの世界でも「選挙」が大事なようにアメリカも例外ではない。トランプ大統領を「選挙」という視点で見ると、彼の「しぶとさ」が見えてくる。

 まず、共和党にとってトランプ大統領とはいえ共和党の大統領が弾劾され、ペンス副大統領が大統領になったほうが、選挙が戦いやすいかどうかを考えると、余分な混乱よりも現状を選ぶだろう。しかも、トランプ大統領にはいまだ35%を超えるコアの支持者がついている。投票率が低い中間選挙では、確実に25%の票をとれば勝利することができる。反トランプで知られるムーア監督は、最近、「今のままではトランプ大統領の再選はあり得る」とのコメントし民主党に警告している。民主党はニューヨーク、カリフォルニア、シカゴといった人口集積地では圧倒的な強さを見せるが、それ以外の地域では伸びあぐねている。

 なにはともあれ、トランプ大統領が次の選挙で有利と考えられる限りは、共和党はトランプ大統領と文句を言いながらも別れられないのだ。

 妙な言い方に聞こえるが、オバマケアを撤廃&再構築に失敗は最初から想定内だと思われる。次に、減税、デフォルト回避、インフラ投資があがってくる。これらは、次の選挙へのショーと見るとわかりやすい。今や、80%前後の人が現在の社会保障の削減に反対する状況だ。「オバマケア反対」と口では言ってはみても、実際に撤廃したら、共和党の議員たちは中間選挙では、現実的には厳しくなる。トランプ大統領は共和党のせいで失敗したと言い、共和党の議員は原則には賛成だが法案に納得できないと、執行部とトランプ大統領のせいにする。これは本当のけんかではなく犬も食わない夫婦げんかだ。次に来る、債務不履行ではもめながらも最後は妥協案で成立させ協調したところで中間選挙へとすすむのである。

ワンマン・オーナー会社の大統領との付き合い方は、交渉しない戦略  

 トランプ大統領の性格とリーダーシップは、アメリカ政治で教えられてきたものとは全く違う。Twitterの書き込みも驚く。近づいてはいけない、一緒に仕事をしてはいけない人の性格を持っている。だが、トランプ大統領はすぐにはいなくならない。

 トランプ大統領の今までの経歴と彼のメッセージを見ると、コロコロかわるところもあるが、「アメリカ・ファースト」だけは揺るがない。だからこそ、トランプ大統領と「経済」での議論は避け、遠くで見ている方が良いのではないかと思う。

 安全保障に関しては、今までの大統領とはスタンスが異なるので、トランプ大統領だからこそ、とれるところがあれば取る、という立場がいいだろう。軍人、投資家、石油会社の社長が政治の中枢を握っている。

 テレビでも講演でも、「トランプ政権とは貿易・ビジネスにおいては交渉しない。安全保障についてはやれなかったことをする」と言い続けてきた。

 すぐにいなくなるわけではないが、4年、8年で新しい大統領が誕生することは決まっている。アメリカのエリート政治家が大統領に戻ってくれば、経済、貿易にからむやり取りはそちらの方が日本にとっては優しいだろう。トランプ政権は混乱して見える割に強力なので、交渉しない戦略が必要になる。