最高裁が同性婚を認めた時、NYはLGBT・パレード・デー

最高裁が同性婚を認めた時、NYはパレード・デー

世の中が変化する時は、本当に突然だ。

6月終わり、アメリカの最高裁は、アメリカ全土で同性婚は認められるべきとの判断をくだし、アメリカは同性婚を認める国となった。

同性婚を認める流れは、2012年大統領選挙期間中に始まり、じつに3年でアメリカの制度を変えてしまった。再選を狙うオバマ大統領は同 性婚を認める発言をした。その時は、まだ、かなり悩んだ上の、決断であることを語っていた。

この変化は、アメリカ国内にとどまらない。聖書で同性愛は認めていないとして大多数のキリスト教は同性愛に反対する立場をとっているが、ローマ教皇フランシスコですら、最近では同性愛者に理解を示す発言をするようになっている。同性愛についての理解が、神学論争の域にまで達しているのである。最近では、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)という言葉も一般化している。

日本にも変化は及んでいる。今年2月には東京・渋谷区が初めて同性カップルに「結婚に相当する関係」とする証明書の発行を決めた。LGBTに該当する層は国内で人口比7.6パーセント(2015年、電通ダイバーシティ・ラボ調べ)存在すると言われている。

そんな時、日本キリスト教団新宿コミュニティー教会の牧師であり、男性同性愛者であることを公表している中村吉基(よしき)さんと知り合った。前述したように、依然多くのキリスト教会において、LGBTの受容は厳しいものになっているが、中村さんは、「聖書はLGBTを否定していない」と宣教活動を続ける。中村さんの活動に助けられる人たちは、多いと思われる。

その中村さんが、6月28日に行われた世界最大とも言えるニューヨークのLGBTのパレードに参加した。

その2日前に、アメリカの最高裁は、同性婚を認める世紀の判決を出しているので、今回のパレードは否応でも盛り上がる。

そこで、今回は、中村さんの現地報告を紹介します。

NYのパレードで出会った日本人たち

“HAPPY PRIDE!”という合言葉のもと、去る6月24日から、ニューヨークではLGBT(性的マイノリティ)の人権を訴えるためのイベント「NYCプライド」(NYC Pride)が開催された。6月28日には、最高潮の中、パレードが行われ、世界中から多くのLGBTが集まり、レインボーフラッグを掲げて行進した。主催者側によれば約200万人の人出であったという。6月26日にアメリカ連邦最高裁が同性婚の権利を認める判決を出したことを受けて、祝福ムードの中、パレードが行われた。

そのスケールの大きさに圧倒され、エンターテインメントの国アメリカの趣向が至るところに表れていた。

LGBT当事者のみならず、州知事や市長、政治家、そしてたくさんの協賛企業、教会、NPOとくにサポート団体、世界各国の在住者、各地域からなど多くの参加があった。国や民族、セクシュアリティーを超えた人々が6時間にも及ぶパレードを大きく盛り上げていた。

このパレードの中に日本人たちの姿があった。ニューヨーク在住の日本人LGBTとその支援者たちだ。彼女たち彼らを率いていたのは佐伯玲奈さん(26)。大阪出身で2歳から13歳までニュージャージー州で育ったという佐伯さんは早稲田大学を卒業後、昨年秋、単身でニューヨークに来た。映像関係の仕事に従事している。レズビアンでもある彼女はニューヨークに来た際に、同性愛者の仲間たち、特にアジア系の人たちとつながることに苦心したという。そこで佐伯さんはアジア系、日本人、LGBTの在住者を一つに結ぶことを思い立った。

世界の主要な都市には在住者による「日本人会」が組織されていることが多いが、若い世代の参加は少ない。ましてそこにおいて自身のセクシュアリティーを公言できる者はさらに少ないといえよう。佐伯さんはニューヨークに在住のLGBT、特に移住し始めたばかりの人たちにも参加してもらえるような「受け皿」を生み出そうと動き出した。ニューヨークには日本人のLGBTコミュニティーがあったものの、もう何年も活動が見られない状態であったことから新たなコミュニティーの立ち上げの必要性を佐伯さんは感じた。

パレードの前日、6月27日、マンハッタン中心部において、「ニューヨーク在住の日本人LGBTQ&Allyの会(JALNY=Japan Ally & LGBTQ in New York)」(Qは“Queer”の略、欧米ではLGBTQと称されることも多い。Ally=アライは支援者)の発足を祝うパーティーが開かれ、サイトや日本人向け新聞などを見て集まってきた40名弱の人たちそこにいた。転職をしてニューヨークに来た若者や、つい3週間前にアメリカ人と同性婚をしてニューヨークにやってきた人、留学生、アーティストなどの当事者から子どもがレズビアンという母親、またLGBTを応援したいという支援者など年代も幅広い層が一堂に会した。そして佐伯さんの活動に心強い2人の協力者も現れた。

パーティーの冒頭で佐伯さんがあいさつに立った。

「短い準備期間を経て、こんなにたくさんの人が集まってくれて感無量です。ニューヨークにも日本人のコミュニティーは存在しますが、今のところLGBTQの団体はありません。アジア系の団体は活動していますがそこに日本人の参加者はいませんでした。私はレズビアンの娘を持つ女性とのつながりからさまざまな人と出会いました。ニューヨークに語学留学などで来る日本人は多いのですが、友達を作れずに帰国してしまうケースも多い………」と話し続けた。

この日のパーティーのテーマは“Being out”と銘打たれていた。白人社会の中ではアジア系はマイノリティー。アジア系の家庭では血縁が重んじられ、LGBTQというのは西洋の文化で自分たちの中にはいない、と考える人もいる。ニューヨークに生きている人たちは、一見、たくましく生きているかと思いきやとても孤独であるという。日本人の当事者同士共に集まって気軽に交流していこうとするのがBeing outの狙いだ。

劇団ワハハ本舗所属の俳優で、現地で舞台芸術評論家としても活躍されているトシ・カプチーノさん(54)は、これまで日本人のゲイの友人はほとんどおらず、またゲイが集まる場所にも集うことはなかったという。今回アメリカ全州での同性婚が認められるようになったという素晴らしいタイミングでこの日本人の集いにも出席しようと思い立ったという。

大本幸一さん(30)は1週間前にアメリカ人のパートナーと結婚した。アメリカ全州で同性婚が認められるようになったことで何かしらの変化があるだろうと語った。2013年にアメリカ連邦最高裁が結婚を男女間に限ると規定した連邦法「結婚防衛法」を違憲とする判決を下した時もインパクトが強かったという。大本さんとパートナーは4年間、日本とアメリカで遠距離恋愛をした。パートナーはネブラスカ州出身で、同州は今回の判決まで同性婚を認めていなかった。そのためパートナーはニューヨークで仕事に就き、結婚への準備を整えた。今回の判決がなければ、ニューヨークで同性カップルと認められてもネブラスカではそうは行かなかったと話す。しかし今回の判決の成果としてニューヨークなど都市部では同性カップルが普通に生活することはできても地方ではなかなか浸透するまでに時間がかかるのではないかと現実を見据えて語った。

今後はこの日得たつながりを大切にしながら、少なくとも年に一度NYCプライドの時期に集まりたいと佐伯さんは意欲をにじませた。先述のように、パレードの当日、多くのアジア系住民に混じって日本人たちも堂々と行進した。そこには映像カメラを手にしながら参加者や沿道の様子を撮影する佐伯さんの姿もあった。

また佐伯さんはニューヨーク在住のフリーアナウンサー前田真里さん(34)と協働でこのたびNYから発信するメディア「LGBTQ- Net」を立ち上げた。LGBTQとストレート、セクシュアリティーを問わず、誰もが幸せに生きるにはどうすればいいのか二人は考え、随時、関連イベントがある時は、お互いが撮影し、番組でトークして、コミュニティーの生の声を伝えようというもの。日本のLGBTQコミュニティーへの関心は以前より高まっており、佐伯さんたちもその変化の波に乗って日本国内への追い風となることがしたいとのことから今回のネットワークの立ち上げを決断した。まずは、番組のネット配信に必要な機材や会場費などに充てる費用をクラウドファンディングし、今後は、最新の海外ニュースの発信やSkype恋愛相談、各界からのゲスト出演など 内容を充実していければと話す。佐伯さんの「夢」はますます広がるばかりだ。(中村吉基