タブーに挑戦する議論:「原子力は持続可能か?」

IEAの元事務局長だった田中伸男さんが、本格的に日本のエネルギーのために、活動を開始した。

笹川平和財団の理事長に就任し、そして、自ら、日本の持続可能なエネルギー政策に関するプロジェクトを行う。そのお披露目を兼ねた公開フォーラムが行われた。テーマは、「原子力は持続可能か?」である。田中さんは日本人で初めて、国際選挙を勝ち抜いて国際機関の長になった。まさにエネルギー政策における世界の第一人者の田中さんのフォーラムとあっては、行かねばなるまい、と参加した。

たくさんの人がそう思ったようで、会場は、溢れんばかりの人である。興味の高さがうかがえる。

田中さんは「タブーなき原子の議論」を行うと宣言し、新潟知事の泉田さんが、原発最稼働への条件に付いて基調講演を行った。続いて21世紀政策研究所研究主幹の澤さんが、政府の立場でのエネルギー政策を担当した経験からコメントし、最後に田中さんが解決案を提示した。

3人は経済産業省出身で、しかも経済産業研究所で青木門下として原子力政策についての議論を戦わせていただけあって、聞いてる方がドキドキするほど、胸襟を開いた議論を戦わせていた。田中さんが言うように、311以降、日本では、原発に関わるエネルギー政策についてはタブーであり、私もそこに染まっていることを痛感した。ほとんど聞いたことがない議論であったから、その応酬に、ドキドキしてしまったのだ。

感銘を受けたので、さっそく、ここで書いている。

持続可能なエネルギー政策は、日本では生命線に等しい。もはや、電気がない生活も産業も何もかも考えられないし、諸外国は、着々とエネルギー安全保障を強化していることを考えると、これを怠れば日本は先進国の地位から追われることになる。田中さんの問題意識は、日本では、持続可能エネルギー政策についての議論がタブーになっていることだ。

フォーラムをまとめると、日本ではエネルギー政策について議論がタブーに陥っているのは、以下の3つの理由である。

1つは、国家間の競争であるエネルギー安全保障と、個人の視点である安全安心という全く異なる視点が、同一のテーブルで議論されてしまっていることだ。そのため、ヨーロッパが構築するエネルギーの集団的安全保障にあたるパイプライン、中国が構築しようと躍起になっている中国をハブとするパイプラインに対して、日本はどうすべきかという議論ができなくなっていることだ。とりわけ、原発の再稼働、燃料ゴミの処理といった、今後の原発政策についての議論は、臭いものにふたをするようになってしまっている。澤さんは、ホルムズ海峡から石油が入ってこなくなった場合など国として議論すべき課題を提示し、エネルギー安全保障の議論の必要性を訴えていた。

2つ目は、安心安全の概念とその取り組みである。田中さんは、「安全は必要であるが、政治家が安心に拘ることで、エネルギーに関する取り組みが遅れてしまっているのではないか」と指摘し、それに対し、泉田知事は「私は安全の必要を訴えているが、安心までは主張していない」と応酬した。泉田知事は、「最悪の事態が起きた場合、誰が、またはどの組織が、誰の支持のもとで、救助活動にあたるのか」という政治システムの問題、メルトダウンを2か月隠した東電の隠ぺい体質、BBCとCNNに頼らざるを得なかった日本の報道姿勢、基準に対する政府のご都合主義を問題点として挙げた。現在、日本では、安心安全第一と声高に言われているが、それだけで、実際の改善の余地は見られない。そのため、原発の議論はここで止まってしまっている。泉田さんが言うように、世界基準の安全レベルをいかに可能にするかは、大きな課題である。必要な「安全」と感情論の「安心」を分けて、「安全」環境の構築は政府と電力会社にとっては早急の必須課題である。

3つ目は、政治家とマスコミも原発関連の役人、専門家も、安心安全についての議論は少なからず行っているが、原発に関わるエネルギー政策については、公で議論することを行うことをタブー視する。そこで、田中さんが「敢えて言うが、半減期を激減する新技術があるので、再燃料処理のプロジェクトを311で生き残った最強とも言えるフクシマ第二に作ったらどうか?」と提案し、パネリストに意見を聞いた。両者とも「原発のデブリをフクシマに持ってくることはできない」と口を揃えた。

この議論は、市長と役人出身という立場に限らず、福島に住む人の気持ちを慮ってしまい、その妥当性を考えることも、提案することも公にはタブーになっていることを明白に示している。田中さんはまさにここに挑戦しようとしていることが、よくわかった。フクシマの人も中間貯蔵施設などというあいまいな言葉で将来を濁されていることは重々承知しているはずだし、本当のところは知りたいし、胸襟を開いて話し合う準備ができている人もいるはずだ。ある意味、そこの議論を避けることの方が、国民をバカにしていると言えるのかもしれない、という思いを感じる。

田中さんは、「今後もタブーなき議論を続けていく」と締めくくってフォーラムは終了した。